zoku勇者 ドラクエⅨ編5 姫君と黒騎士・2
ジャミルは戻って来た仲間達を見ると、安心した様に
耳の穴をほじりながらニヤニヤ笑いイシュダルの方を見た。
「……お前達、……油断するな、気を付けろ……」
「分ってるって!あいつは俺達が絶対倒すから!もう少し
辛抱しててくれよ、レオコーン……」
「すまない……」
「……こうなったらお前ら纏めてズタズタに切り刻んで全員地獄に
送ってやるわ!覚悟おしっ!」
イシュダルが怒りの形相で4人を睨んだ。しかし、ジャミル達は怯む事無く
もう一度戦闘態勢を整え、イシュダルへと立ち向かっていく。
「絶対許さないわよっ!……おばさんっ!!」
「……アンタが一番邪魔だね、どっか行ってなっ!!……フンっ!!」
「……あ、ああああーーーっ!?」
イシュダルは波動でアイシャを弾き飛ばす。ジャミルは慌てて
アイシャを助けに行こうとするのだが、其処にイシュダルが
立ち塞がった。
「ボウヤ達の相手はこっちでしょ、ほ~ら、おいでおいで……」
「な、何……、……う、ううっ!?」
「なんか……、誘われるよお~……」
「誘惑に乗っちゃ駄目だっ!……う……」
イシュダルは邪魔なアイシャを弾き飛ばしたのち、男3人に
フェロモンをばら撒く。そして自分の巨乳へと引き寄せるのだった……。
「ほ~ら、ぱふぱふ、ぱふぱふ……」
「!!ぐえっ!……む、むぶぶぶぶっ!!」
……悲しい男のサガ。イシュダルの胸へと引き寄せられた
野郎達は、3人一辺に巨乳へと挟まれてしまい、むぎゅむぎゅ
窒息状態で大変な事態になっていた……。
「……バ、バカああーーっ!も、もう絶対に許さないわよーーっ!!」
どうにか戻って来て体制を整えたアイシャ。凄まじい現場を見、
激怒。そして怒りMAX必殺ゲージ技、ミラクルゾーン(SP版)を
発動させた……。
「ふふふ、嫉妬しているのね、この私の美貌と巨乳に、
可愛らしいお嬢ちゃん……、あらああーーっ!?」
アイシャのヒャド連打攻撃、イシュダルの頭に巨大な
氷の塊が追突。……イシュダルは慌てて巨乳の拘束から
男共を漸く解放した。
「た、助かったー……、でもこんなに立っちまった……、って、
……うわあーーっ!?」
「……アイシャ、落ち着いてーーっ!これは事故……」
「てへへ、おっぱい、美味しかったよお~……、アルも何か
鼻血出てるねえ~……」
「……ダウドっ!!」
「あ、あっ!」
アルベルトがダウドを注意するが既に遅し。スケベな野郎共の実態に
ブチ切れのアイシャ。もう敵味方関係なく我を忘れ、5ターンの間
魔法がMP消費無しで使える必殺技を良いことに怒りのヒャドを
放出しまくる。……止めはイオでイシュダルもジャミル達野郎共も
全員大爆発へと巻き込まれるのであった。
「お、おのれ……、小娘が……、ふざけおってからに……、全然
可愛くないとんでもないクソガキのまな板だわ……」
「……アイシャーーっ!オメー俺達まで殺す気かあーーっ!!」
「ふんだっ!ジャミルが一番反省しなさいよっ!!べえーっだ!!」
アイシャはジャミルに向かって舌を出す。……やはりと言うか、
一番被害が大きかったのはジャミルであった。
「ううう、な、何かが……、恐ろしい事が起きているのか……、
……ああああーーっ!!」
「……レオコーンさん!苦しいの!?大丈夫よ、もう少しだからね!」
……何かの悪寒を感じて再び苦しみだしたレオコーンをアイシャが
必死で励ますが、多分アンタの所為である。
「ハアハア、畜生、……糞ガキ共、もう遊びは終わりだよっ!!」
イシュダルも本気状態になったらしく4人の方を見る。此処で
何としてもこの戦いに蹴りを付けなければならない。レオコーンを
救う為。ジャミル達ももう一度真剣モードになる。
「……取りあえず、お恥ずかしいですが、オイラも必殺ゲージが
溜まりましたのでゴスペルソング使っておきまーす!」
ダウドもゲージ技、ゴスペルソングを発動させる。これにより
4人のHPは半分近く回復、活力を取戻し、イシュダルへと最後の
反撃の時を迎えた。
「小娘!さっきはよくもやってくれたね!倍返しのヒャドを食らいな!」
「お断わりですっ!メラーーっ!!」
……激しくぶつかり合う炎と氷。アイシャのメラはヒャドを押し、
あっという間に氷を溶かす。
「くっ、この私がっ!さっきからこんな糞小娘に押されっぱなし
じゃないの!……冗談じゃないわよっ!!」
「僕も頑張らないと!……また姉さんにどやされてしまうっ!
……やあああーーっ!!」
「!!ば、馬鹿な!……ああああーーっ!!」
そして、アルベルトも初のゲージ技を発動。アイシャに向け、
タナトスハントを喰らわせようとしていたイシュダルに
会心必殺を発動。……イシュダルに止めの大ダメージを与えた。
古代の悪魔魔女、長き間レオコーンを呪いで苦しめていたイシュダル、
戦士達により、遂に此処に倒れたのであった……。
「く、くちおしや……、この私が……、こんな屈辱を……、惨めな……」
「あははっ!アル、すごーいっ!」
「え、えへへ……、僕なんかまだまだ大した事ないよ……」
……機嫌が悪かったアイシャ。アルベルトの快進撃を見て
もうすっかりご機嫌が元に戻っていた。
「俺のゲージ技って、はっきり言ってあんまり使い処ねえよな、
……回避率が上がるだけだからな……、ダウドより使えねえぞ……、
今回は転職出来るなら早く転職した方がいいのかな、ぶつぶつ……」
と、アイシャに絶賛されているアルベルトの方を見て複雑な
気分になったジャミルがブツブツ呟いていた……。
「……イシュダル……」
「レオコーンっ!あんたもう大丈夫なのか!?」
「ああ、ジャミル、皆も……、そなた達のお陰だ、……誠に感謝する……」
レオコーンはジャミル達がイシュダルを成敗した事で呪いから
解放され、立ち上がれる様になっていた。そして複雑な面持ちで
倒れているイシュダルを見つめる。自らのこの手で討つ事が
出来なかった宿敵を……。
「……悔しいわ、再びあなたと私だけの世界が蘇る筈だった……、
でもね、過ぎ去った数100年の時はもう戻って来ないのよ……、
アンタの愛するメリアはもう何処にもいない、……くくく、
絶望に塗れ、もうお前など誰も知る者などいないこの時代を
永遠にさ迷い歩くがよいわ……」
「……メリア……姫……」
イシュダルは息絶え、姿が消える。……遂に因縁の宿敵は消えたが、
愛した人はもうこの世におらず、……長き時の中に、たった一人
取り残された孤独な騎士……。ジャミル達はレオコーンに
どう言葉を掛けてやったら良いか分からず、悲しい現実に
4人ともその場に立ち尽くしていた……。
「……レオコーン、俺ら偉そうな事言えねえけど……、今は元気
出してくれよ……、な?」
「済まぬジャミル……、そなたの手まで借りて漸くルディアノへ
辿り着いたと言うのに……、時の流れと共に王国は滅び、……愛した
姫君はもういない……」
「レオコーン……」
作品名:zoku勇者 ドラクエⅨ編5 姫君と黒騎士・2 作家名:流れ者