zoku勇者 ドラクエⅨ編6 ……いつもあなたと・1
男性陣3人は新しい防具に顔を見合わせる。身体用の新防具は
鉄の胸当てを装備したが、どっからどう見ても、某サイヤ人の
お方が普段身に着けている軽防具にしか見えなかった。ちなみに、
アイシャは白いTシャツに赤スカートと、非常にシンプル。
「なあ、親父さん、この町って……」
ジャミルが何となく武器屋のおじさんに訪ねてみると、最初、おじさんは
困ったような顔をしていたが、少しだけ、ぼそっとこの町の事を教えてくれた。
「君達は他所からのお客さんだね、悪い事は言わないから早く此処から
去った方がいい、原因不明の謎の流行病だよ、急に高い熱や酷い咳が
出たりして、もう何人もやられている……、医者でも治す事が出来ないんだ、
……現に患者を手当てした医者自体が亡くなってしまったそうだよ……」
「……ひええええっ!?」
真っ先にダウドが奇声を上げた。しかし、自分達は困っている人々を
ほおっておいて逃げる訳にはいかない。その為に此処を訪れたのだから。
買い物が済んだら次にやる事。この町のもっと詳しい情勢を知る為の
情報収集である……。
「そう、話が聞きたいのなら取りあえず、北にある町長さんの家に
行ってごらん、けど、坊や達、いつまでもここにいるのはよくないよ……」
ジャミルは偶々井戸に水をくみに外に出てきたおばさんを捕まえて
話を少しだけ聞く事が出来たが。このおばさんも一刻も早く4人に
此処から出る様にと勧めた。
「……折角そう言ってくれてるんだからさあ~……」
「……ダウドっ!そんな訳にいかないんだったらっ!!」
「冗談だってばあ~!アイシャっ、鞭握りしめてこっちに来るの
やめてっ!何か怖いんだよおお~!!」
「……何よっ!失礼ねえ!!」
まるでSM女王はバトルリボンを握ったまま呆れて膨れる。その姿に、
ジャミルも段々冷や汗が出てきた……。これでバタフライマスクでも
着けられたらもう完全にお仕置きを食らうのは目に見えていた。
「と、恐ろしい想像は此処までで……、どうする?今からこの町の
町長さんとやらの家に行ってみるか?」
ジャミルはそう言ってみるが、今日はもう遅いから明日にしようとの
アルベルトの言葉に、漸く休めるとダウドはほっとする……。4人は
宿屋へ向かうが、内部は全然ほっと出来る様な状態ではなかった……。
「……苦しい……、私は一体どうなってしまうんでしょうか……」
「うう、ダーリンしっかりしてよ……、折角のハネムーンがどうして
こんな事になっちゃったのよう~……」
中にはこの町に訪れた旅人カップルの旦那の方が病気に感染したらしく、
宿屋のベッドに突っ伏したまま、もう数日動けない状態に……。重い
病原菌の感染者を移動させる訳にもいかず、店主も頭を抱えていた。
「いつになるか分かりませんが、このままだと私もいずれは病気に
感染するのでしょうね……、ああ、こんな状態で宜しければお好きな
お部屋をお使い下さい……」
店主はカウンターに頭を突っ伏したまま、泊まりに来たジャミル達の
方を見ずに答えた。
「こりゃ事を急いだ方が良さそうだなあ~、マジで……」
「そうだね、僕らで何か出来る事があるのならば……」
こんな非常事態の中で、食事も当然出して貰える様な状況ではなく、
4人は予め持参しておいた予備用のパンを口に入れるが……。
どうにもモンには足りないようである……。モン処ではなく、
ジャミルも当然腹は満たせなかったが、我慢するしかなかった。
……窓の外から見える月明かりを眺めながら、只管味の薄い
パンを囓っていた。ああ、リッカの作ってくれる飯が恋しいなあ~
……、と、思いながら。
「……モシャああーーーっ!!」
「ちょ、モンーーっ!オイラの頭囓るのやめてえーーっ!
あだだだだだっ!!」
「モンちゃん、やめなさいっ!……明日キャンディー買って
あげるからっ!!」
やはりモンスターの症が出るのか腹が満たせなくて我慢の
出来ないモンがダウドに噛み付きそうになり暫く大騒ぎと化す。
どうにか宥めるが、ダウドのオールバックヘアは、モンの所為で
ぐちゃぐちゃになり、凄まじい無残な事態に。
「ああ、騒がしいなあ~、こんな時に……、こっちゃ疲れてるんだ、
いい加減にしてくれよ……、冗談じゃないよ、私らは一体いつ死ぬか
分からないんだよ……」
2階の部屋から聞こえてくるドタバタの騒音と騒がしい声に、
カウンターにいる店主は相も変わらず、落ち込んだままの状態で
ぶつぶつ呻いていた……。
翌日。4人は昨日のおばさんに教わった通り、町の中央に有る大きな
高台の屋敷へ。……モンは今日もダウドに負ぶさっていたが、空を
飛ばないのはお腹が空いて徹底して機嫌が悪いのである。何せ宿屋も
あの状態の為、当然朝食も無しなのだから。
「勘弁してよお~……」
「モン~……、でっかいキャンディはまだモン……」
背中に爆弾を括り付けたまま歩くダウドに他の3人は苦笑。
またいつ爆発してダウドに噛み付くか分からない勢いの
モンである。
(はあ~、何もしなくていいってサ、本当に楽チンね、マジで!
るんるん!)
「……オメーもいい加減にしとけ、この傲慢ガングロ……」
「見えて来たよ、あそこじゃないかな?」
「おおー!だなあ!」
アルベルトの言葉にジャミルはひょいっと背伸びして見えて来た
屋敷を見上げた。だが、屋敷は高台にあるので、もう一踏ん張り
彼所まで上らねば。……爆弾を背負っているダウドはウンザリ。
此処で待っていたいと駄々をこね始めた物の、1人だけズルを
させる訳にいかないので無理矢理に引っ張って連れて行く。
ダウドは、じゃあモンのお守り交代してよおと言い出す。
……じゃあ、私が交代で抱くわと、アイシャがモンをダウドから
引きずり下ろそうとするが、モンの方もどうしてもダウドの背中が
いいらしく降りようとしない。
「いやモンブー!」
「……背中ジャックらしいぞ、ま、気に入られちまったんだから、
この際もう暫く我慢してくれよ……」
「うわあああーー!!」
後ろの方で絶叫するダウドを尻目に、ジャミル達は只管、目的の町長の
屋敷を目指す。
「こんちは……」
「はい……?」
屋敷の玄関の呼び鈴を鳴らすとメイドさんらしき女性がそっと
顔を出す。メイドさんは訪れたジャミル達に最初は首を傾げて
いたが、話を聞くと自部屋で仕事をしているらしき町長を
呼びに行ってくれた。
「……ふう、さっぱり読めん、……やはり古文書の解読は
あいつに頼むしかないのか、ブツブツ……、とにかくこれ以上
被害が広まる前に何とかせねば……」
「……」
居間で暫く待っていると、やがて禿頭の小太りの老人が現れた。
「おや、あなた方がお客人でしたか、これはどうも……、
私はこの町の町長を務めている者です……」
「初めまして、こんにちは、お忙しいところお仕事のお邪魔を
してしまいまして大変申し訳ありません、僕達は……」
……こういう時はアルベルトに任せるのがベスト。アルベルトは
丁寧に自分達が此処に訪れた目的を丁寧に話して説明すると町長は
納得。
作品名:zoku勇者 ドラクエⅨ編6 ……いつもあなたと・1 作家名:流れ者



