zoku勇者 ドラクエⅨ編6 ……いつもあなたと・1
「そうでしたか、今この町で起きている事について知りたいと……、
良いでしょう……」
4人は町長の話に耳を傾ける。原因不明の突然の謎の流行病が
この町で流行りだし、これまで幾人もの町の人間が亡くなって
いるという事を改めて聞く。この流行病は、実は100年ほど
前にも同じ様に町で流行していたらしい。町長は何とかして
治療法を探そうと、屋敷に現存する古い資料を探しあさって
いたのだが、古文書の解読が出来ず困り果てていたらしい。
……だが、この町に住む、唯一の学者のルーフィンと言う
変わり者の男なら、それが可能という事。現在はその学者に
解読を任せているらしいのだが。町長は自分でも何とかもう
一度解読をしてみようと思ったらしいが、無理だったらしい。
「学者……」
学者なら、当然本に囲まれて暮らしている筈である。今度はジャミルが
嫌な顔をした。
「しかし、奴め……、そろそろ何か分かってもよさそうな物だが……、
此方から出向くのも尺だ……」
「あの、町長さん……?」
「お、おおお!そうだ、君たち、一つ頼めるかな?」
「はあ……」
町長は目を輝かせ、アルベルトの肩を掴んだ。何かお使い事が
始まりそうである。
「君たちも様子が気になっておりませんか?どうですか?
儂の代わりに、ルーフィンの家までひとっ走り赴いて
調査状況の様子を見ては来てくれませんか?奴の家は
儂の家から西の方角にある一軒家です、汚い家ですから
すぐに分かると思います」
「はあ、それは構いませんが……」
「そうかそうか、頼まれてくれますか!では、儂は引き続き
自分でも解読をしてみるつもりですので、では!」
「……」
町長は4人に学者の調査状況を頼むと自分は又さっさと自部屋に
引き籠もってしまった。
「まだちゃんと返事してねえぞ、俺ら……」
「仕方ないよ、結局は動かなくちゃならないんだから……」
「それにしても、町長さん、何だかその、ルーフィンさん?
……て言う、学者さんに会うのを拒んでいる様な気がするんだけど……」
「ええ、ルーフィンは嫁いだ娘の旦那です……」
アイシャの声を聞き、話を聞いていた初老の女性が奥の
部屋から姿を見せた。どうやら町長の奥さんらしい。
「あ、ああ……、初めまして、お邪魔させて頂いております……」
「ええ、お話はずっと先ほどから……」
再び挨拶を始めたアルベルトに奥さんが返事を返した。
「……ルーフィン先生に古文書の解読を勧めたのは私なんです、
主人と先生は仲がとても悪くて……、町は大変な状況ですが、
これを切欠に仲違いが収まってくれればと思ったのですが……、
このまま父親と旦那の仲が悪いままでは、余りにもエリザが
可哀想ですもの……」
「……」
4人は町長の家を後にする。このままでは仕方ないし、自分達も
ルーフィンの調査状況が気になる為、今度はルーフィンの家へと
足を向け歩き出す。
「ぶーがぶーが!モモンモン!」
モンはダウドに負ぶさったまま居眠り。今は一応は大人しく……
してくれているみたいだった。
「……ぜんっぜん大人しくないよお!」
「おい、静かにしろよ、座布団が起きちまうだろうが!」
「そうよ、モンちゃんが寝てくれてる間に早く学者さんの
お家にいかなくちゃ!」
「一通り、今日の事が終わればまた店で買い物をしよう、
モンにも何か食べさせてあげられるからさ……、ダウド、
悪いけどもう少しだけ頼むよ……」
「……ううう~、ま、また爆発しませんように……」
……時折背中に当たっては割れるモンの鼻提灯を背に
受けながらダウドも皆の後をびくびくモンで歩いて
行くのだった……。
「こ、こんちはー!」
「はあーい!」
……4人は今度は変わり者らしい学者の家へと。ドアが開き、
出迎えてくれたのは、緑髪の前髪ぱっつんおかっぱヘアに
大きなカチューシャリボンを着けた可愛らしい女性。
「ごめんなさい、ちょっとうたたねしちゃってて……」
「いや、急に来た俺らも悪いんだけど……」
「あっ、もしかして、ルーくんにご用ですか?」
「ルーくん……?」
「えと、ルーくんていうのは、ウチの主人のルーフィンのこと……、
きゃ、やだ!私ったら!主人だなんて!きゃー!てれるぅ!」
女性は顔を赤くして興奮し始めた。どうやらまだ相当の若奥様らしい。
町長の奥さんが言っていた、彼女が嫁に行った娘のエリザと言うのは
間違いないだろう。
「あの、こんな処で立ち話もなんですから、どうぞ中へ、まだお掃除前で
お家、散らかっちゃってますけど……、あ、私はルーくんの妻のエリザです……」
「どうするか……」
「うん、色々と説明もさせて貰わなくちゃいけないし、お邪魔
させてもら……」
「くんくん、何だか美味しそうな匂いがするモン……」
「……うわああーーっ!?」
アルベルトがそう言った途端、座布団復活。目を覚ましたモンは
ダウドの背中の上で大口を開けた……。
「ダウドったらっ!大きな声出さないのっ!モンちゃんも駄目でしょっ!!」
「だってええ~……」
「モン~……、もうお腹ペコペコモン……」
「あらあら、随分と変わったお友達ですね、お腹がすいているのかな?
そうだわ、丁度クッキーを焼いていた処です、良かったらその子に……」
「モンーーっ!!」
クッキーと聞いて途端にモンが興奮し始めた。直後、モンは漸く
ダウドの背中から離れ、ダウドも取り付き爆弾魔から解放された。
「ホ、助かったああ~……」
「モンちゃんたら……、ますます誰かさんに似てきたじゃないの……」
「んだよ!俺の方見んなよ!」
「プ……」
アイシャは横目でジャミルの方を見、アルベルトは吹いた。若奥様が
中に入る様に折角勧めてくれているので、4人は家の中へ……。
エリザに自分達の簡単な自己紹介も済ませた。
「どうぞ、少し焦げちゃったかなあ~、う~ん……」
リビングで寛がせて貰う4人……、と、+α。エリザは先ほど
言っていた焼きたてのクッキーをお茶菓子に出してくれる。
紅茶も淹れ立てで良い香りがした。
「モン!頂きますモン!……バリバリ!ムシャムシャ!!」
「!!モンっ!こ、こらーーっ!!」
「あ、あらら~?すご~い……」
モンは遠慮せず、皿の上のクッキーの山をペロリと平らげる。
……食い意地の張ったジャミルもこれには困り果て、モンを
捕まえてデコピンしようとするのだが……。
「凄い食欲ね、良かったらもっと食べる?まだ焼けばあるから……」
「モォ~ン!」
モンがエリザに甘え始めた。調子に乗るモンをジャミルは慌てて
成敗しようとするが、エリザはいいんですよと手を振った。
「けど……」
「実は、お仕事を頑張るルーくんの為に、………ほら……」
「……うわ!」
エリザは顔を赤くし、大量生産で作ってある予備軍のクッキーの
種の山を見せた。つい興奮して張り切り過ぎて、作り過ぎてしまった
為、どうしようか処理に困っていた処らしかった。
「あはは、私ってドジだから……、また君は……、こんなに
クッキーばっかり食べられないよ!……、ってルーくんに
怒られちゃう処でしたよ、ふふ……」
作品名:zoku勇者 ドラクエⅨ編6 ……いつもあなたと・1 作家名:流れ者



