zoku勇者 ドラクエⅨ編6 ……いつもあなたと・1
「私の事よりも、どうかルーくんの事、お願いします、ルーくん、
我儘で、意地っ張りでどうしようもないけど……、でも、私にとって
大切な、大好きなたった一人の、……世界で一番の旦那様なんです……」
「エリザさん、アンタ其処まで……」
エリザはジャミルの顔を真剣に見つめる。直後……。
「きゃあーっ!なーんか言ってて照れちゃいましたー!はずかしー!」
「……」
先ほどまで苦しんでいたエリザはあっさりと元気になり、
暴走し始める。まあ、大丈夫かと、ジャミル達は苦笑。
エリザは笑いながらジャミル達に手を振り、自宅へと戻って
いった。何度も何度もルーフィンの事を4人にお願いしながら。
「さて、俺らも行きますかね、傲慢考古学者さんの護衛にさ……」
ジャミル達も今夜は徹夜作業覚悟で遺跡へと動き出した。
……エリザの元気な姿を見れたのはこれが最後であった。
4人も。そして。ルーフィンも。
「随分と遅かったじゃないですか、早くほこらの鍵を渡して下さい!
それがないと中に入れませんからね!あなた達は僕をちゃんと護衛するのが
仕事なんですから!しっかりやって下さいね!頼みますよ!」
先に遺跡に到着していたルーフィン。後から漸く遺跡に着いた4人に
愚痴を連発。幸い、遺跡までそれ程時間は掛からず、思っていたよりも
早く着いたのだが。それでも短気なルーフィンには不満だった様である。
「うわ、何か嫌な態度だなあ……」
「ダウド、黙ってろよ、病魔を封印出来るのはアレしか
出来ねえんだから、下手に怒らせて機嫌損ねて、町へ
帰っちまったら困るんだよ、……むかつくけどよ」
ジャミルも何となく愚痴ってみるが、糞威張りするルーフィンの
態度は最悪。……ジャミル達だって動きっぱなしで疲れているんである。
「……このおじさんのおけつにカンチョーするモン!」
「だからモンちゃんやめなさいっ!どうして碌でもない事覚えるのっ!?」
「俺の方見るなっつてんだよっ!ジャジャ馬っ!」
確かに最近のモンは悪戯が相当酷くなって来た様である。
ルーフィンはモンの暴言に気づかず、先頭を切ってずんずんと
遺跡の中へと入っていった。
「ふむ、見て下さいこれを……、やはりあの地震でほこらの壁が崩れて
入り口がむき出しになっています、やはりこうなると、この奥にある
病魔の封印もどうなっているか、たまったモンじゃないですね、
さあ、早くこの先へ進みましょう」
「たまったモン、モン……、モンがたまってるモン?」
「オメーはいいっての、ほら、早く奥に行こうぜ!」
「そうだね、早く終わらせてしまいたいよ……」
「何だか眠くなってきちゃったわ……、でも頑張らないと……」
「ねえ、ジャミル、……オイラちょっとジャミルに言いたい事が
あるんだけど!」
「な、何だよ……」
異様にダウドが真剣な目でジャミルの方を見ている。何か言いたい
事がある様だが……。
「オイラはトラマナ覚えないよ!もっと経験値稼げやって言ってたけどさ!
……書いてる人が間違えたんだよ!だからオイラ僧侶のままじゃ永遠に
トラマナは習得しないからね!良く覚えておいてよ!分かった!?」
「分かったけど……、糞威張りして言う事じゃねーっての!大体そりゃ
自分で言ったんだろうがよ!」→※悪いけど、オイラまだ、トラマナ覚える
LVじゃないですから!
「あいたっ!!」
是が非でもどうしてもダウドはジャミルに殴られるのである……。
「トラマナ覚えるのは私の方よ、もう習得出来てるけど……」
「あなた達!何してるんですか!早く来て下さいよ!!僕は忙しいんです!!」
4人に文句を飛ばす陰険糞眼鏡、ルーフィンの罵声。
「それにしても、今何時なんだよお、完全に深夜だよねえ~……」
「寝不足はお肌に悪いんだから……、ふぁ……」
「はあ、腰が痛くなってきた……、こんな事ジャミルに聞こえたら
又爺さんとか、からかわれてしまうよ……」
「モーンモンモン!ぽんチンも~ン!」
「おい……、モンっ!今度は俺の頭を叩こうとするのやめんかいっ!」
4人はそれぞれブツブツ言いながら、パシリ覚悟でルーフィンの
後へと続く。が、中に入った途端、既にルーフィンの姿は見えず……。
4人が愚痴っている間に高速で移動し、遺跡の何処かへ行って
しまったらしい。
「あんにゃろう……、ゴキブリかよ!」
と、もう少し中に暫く進んで見ると、正面に石碑があるのを見つける。
何やら文字が刻んであるが。
「……?」
「ジャミルどいて、僕が見る……、ふんふん……、二人の賢者の
目覚めし時、赤き光と青き光が蘇る……、導きの光照らし出す時、
閉ざされし扉はひらかれん、……らしいよ」
「俺、頭悪いからさっぱりわかんねえなあ~……」
「あら、この奥に扉が立ち塞がってるわね……」
「とにかく、このフロアに何か仕掛けがあるんだろう、それを解いたら
この扉が開いて先に進めるって事かな……」
「お約束だよお、3の時のピラミッドの石の扉と同じだねえ」
「……ダウド、今は世界が違うんだから、あまり前の話の事は
ほじくり返さないんだよ……」
「ふぁ~い、オイラも泉の件、ほじくり返されたしね……」
遠い目でダウドはジャミルの方を見るのであった……。
「やれやれ、しかし、あの傲慢考古学者は何処に行ったんだかよ……、
まああれじゃモンスターも逃げ出すか、殺しても大丈夫っぽいしな」
……それはアンタだろうとアルベルトは思った。
「でも、無茶してないといいけど……、心配ね……」
4人は再びフロア内を疲れた足で歩き出す。流石に今回は
モンは普通にふよふよと宙を飛んで移動していたが。
「ルーフィンさんも……、エリザさんに……もう少し気配りが
あればいいと思うのだけど……、自分の事ばかり考えて、あまり
奥さんの方を見ていない気がするの……、でも、エリザさんは
本当に心からルーフィンさんの事が大好きなのね……」
「……」
このアイシャの呟きは、後に夫婦に起きる悲劇を予感させていた……。
「モンっ!?」
「モン、どうし……、おおおっ!?」
銀色に輝くトンガリ物体。……餌。3でも騒動の種になった
メタルスライムさん登場。
「ジャミルっ!今回はあまり暴走してる暇はないんだよっ!またあの人に
どやされてしまうよ!」
「わ、分かってるよ、けど、出ちまったんだから一応よ……」
「しょうがないなあ……、行こう!」
「やっぱりどうしても3時代を思い出すよお~……」
アルベルトが剣を構え、アイシャとダウドも戦闘態勢に……、
入る前に逃走される。
「……きいーっ!どうせ逃走すんならわざわざ出てくんじゃねーっ!
バカタレっ!!」
「代わりに違うのが来たモン、こんにちはモン」
「……じゃねえーっつーのっ!」
逃走したメタルスライムの代わりに別のモンスターが何か来た。
……はにわナイトとミイラ男である。仕方なしに4人は相手をする。
休む暇無しのお疲れ様の4人組。……バトりながら只管欠伸を
連発していたのであった……。早く仕事を終わらせて一刻も早く暖かい
ベッドに入りたかった。……今はただそれだけであった。
作品名:zoku勇者 ドラクエⅨ編6 ……いつもあなたと・1 作家名:流れ者



