早乙女さん家のラスボス系お姉ちゃんVS主将!!地院家若美2
「そうか……まぁ…気持ちは解るぞ…私だって…総帥や天院家の先達ばかりを見て…世の中の連中を見下していた時期があるからな…」
カーリヤ先生は当時の事を思い出しながら“自分が強くなった訳じゃないのにな”と苦笑している。シャンプーは少し眼前の女性格闘家に親しみを感じると態勢を整えて構えた。
「でも、もう油断はしないネ!」
「そうか!なら……私も本気で行くぞ?」
「っ!!」
カーリヤ先生から放たれる殺気がシャンプーを威圧し、彼女の本能は“勝てない”と悟った。だが……彼女はその本能に逆らう様に構えると全身に気を巡らせる。そして、それを体の中で練り上げると一気に放出した!それはまるで闘気の様であった。それを見たカーリヤ先生は……
「……(これは!?)」
「行くアル!!女傑族の名において!!」
「来い!!娘!!」
両者は互いに気を練り上げて高めた状態で激突する。そして、ぶつかり合う度に道場内には衝撃音が鳴り響いたのであった……。
「はぁ……はぁ……」
「……(まさか……此処までとはな……)」
カーリヤ先生とシャンプーは互いに肩で息をしている。だが、その状態も長く続かなかった。何故なら……天院家の総帥が試合を止める為に声を上げたからだ。それは同時に二人の試合が引き分けに終わった事を意味する!そして、二人は握手をして互いの健闘を讃え合ったのであった。
「ふぅ……天院家の戦士相手に引き分けに持ち込めたのは…上出来ですじゃ」
「そうですね……相手は経験を積んだベテランらしいですから」
「まだまだ…鍛えれば…強くなれますじゃろ?シャンプーも相手の天院家戦士も」
「すいません…老骸様」
「小娘相手にと…言いたい処だが…今回は上出来という処だな」
「はい…」
「お前も私に比べれば、まだまだ若いんだ。経験を活かす方法だけでなく……技量自体を向上させる事にも力を入れろ」
「はい!私にも年長者としての意地がありますので」
天地合から解放されたからだろうか…老骸も以前よりは丸くなっているみたいである。総帥の言葉にカーリヤ先生も少しホッとした感じで肯いている。
「いい試合でしたよ」
「そうだぜ!シャンプー!」
「えぇ、そうね」
「まどか様!乱馬~!それから、あかねもありがとう!」
「良くやった…これからも精進するのじゃ」
「はいネ!」
シャンプーは大好きな早乙女姉弟はもちろん、真剣に闘った為か恋敵のあかねの言葉にも素直に喜んでいる。
「では…次は私の番ですね」
「姉ちゃん、頑張れよ!」
「まどか様!勝って来てネ!」
「まどかさん、頑張って!」
「ファイトですじゃ!」
対する若美も黒い胴衣姿で立ち上がった。全身に“闘気”が迸っており、早く戦いたくてウズウズしているみたいである。
「若美、頑張れよ」
「地院家先輩!勝って下さい!!」
「主将!頑張って!!」
「分かってるわ」
若美は道場の中央でまどかと向かい合うと自分よりも20cm以上は低い背丈の美少女を見ながら口を開いた。
「今回は前みたいに往かないわ」
「楽しみにしています」
二人が構えていると天院家の当主の合図が道場内に木霊する。
「では……始め!」
開始早々、若美が動いた!一瞬で間合いを詰めると掌底を繰り出す!
「!?きっ、消えた!?」
傍目から試合を見ていた雨宮の目からまどかが消えた……と思ったら若美の顔面に衝撃が襲った!
「がっ!」
咄嗟に頭を反対方向に逸らして攻撃を回避するも頬が晴れている。どうやら、飛び回し蹴りを喰らったらしく…空中にまどかがいるのが見えた。
「少しは上達しましたね?」
「えぇ…あの時は問答無用でぶっ飛ばされたからね」
そんな会話をしつつもまどかは着地すると同時にこの場にいる者では目で追うのがやっとなレベルの素早い動きで若美へと迫る。
「くっ…(スピード勝負じゃ分が悪いわね…!)」
若美もまどかのスピードに反応し、構える。
「はぁああっ!」
「はぁあああっ!」
二人の拳がぶつかり合い……道場内に衝撃音が響き渡る。そして、互いに距離を取った。
「(この娘……本当に強いわね!)」
「今度はこちらから行きますよ?」
「っ!?」
次の瞬間にはまどかの姿が消え、
『!?』
天院家の総帥とあかね、乱馬以外の全員が驚愕する!何故なら、今の今まで目の前にいたはずのまどかの姿が消えたからだ。そして、若美は自分の懐に誰かの気配を感じると咄嗟に“闘気”を用いて腹筋を鋼鉄の様に硬化させる。
「ぐっ…!」
彼の腹に衝撃が走ったのであった。若美が下を向くと拳を突き立てるまどかのが姿があった。
「はぁ!」
若美は咄嗟にカウンターの肘打ちを繰り出すもラスボス系美少女は頭を逸らすだけで避けてしまう。
「何て…動きだ!俺でも反応出来ないだろう…」
「あぁ…若美は反応自体は出来てるみたいだがな」
「うぅ…うぅ…!」
まどかの動きに老醜は驚愕しており、三平は冷汗を流している。そして、美柑は武者震いをしていた…嫉妬と闘いへの渇望で
若美は地院家流の“地”の力=重力を取り入れた身体操作技術を活かした組技でまどかの素早さに対抗する為、彼女の胴衣を摑む事とする。
「はぁあああ!」
『!』
彼女は自分に向かって来たまどかの腕を摑むとそのまま一本背負いを喰らわせた。しかし、それでも彼女の動きを封じる事は出来ずにすぐさま技を解かれてしまう。だが……若美は予想より速く対応出来た為か少し余裕が出たみたいだ。
「……やるわね?」
「当然です」
そんなやり取りをしながら再び構える二人。
「今度はこちらから行きますよ?」
「えぇ、来なさい……!」
次の瞬間にはまたもや両者の姿が消えた。そして、先程の様に拳の打ち合いを始める。
「ぐっ!……はっ!」
今度はまどかが若美に蹴りを食らわせていた。蹴りは彼のボディに入った為か動きが一時的に鈍くなるとそこへ拳打の嵐を浴びせる。それをまともに喰らい、体勢を崩すも即座に身体を引いて反撃に出た。
「はぁああああ!」
『っ!』
まどかが咄嗟に打撃を捌くと若美はそれを狙っていた様であり、彼女の胴衣の襟を摑む事に成功した。
「よし!」
若美がそう叫んだ瞬間、彼の視界は反転した。
「っ!?な……に!?」
まどかの投げによって宙を舞っている事に気付いた時は既に遅く、彼はそのまま床に叩きつけられた。
「くっ……」
だが、それでも彼は即座に立ち上がると構える。その目は未だに闘志を失っていない様であった。しかし、そんな状態であっても天院家の総帥とコロンには二人の動きを追う事が精一杯で他の者達には何が起こっているのかすら解らない状況だった。そして、試合再開から数分後…数度の打ち合いの末に若美は地院家流の奥義『螺旋爆心掌』をまどかへと繰り出すと同時に彼女も女傑族の奥義『火中天津甘栗拳』を若美へと繰り出したのであった。そして、双方の拳はぶつかり合い……次の瞬間には地力の差でまどかの拳が若美の顎を捉えたのであった。
「勝者!早乙女まどか!」
天院家の当主がそう宣言すると、道場内は歓声に包まれた。
「ふぅ…今回は負けね」
「ですが…楽しかったですね」