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zoku勇者 ドラクエⅨ編7 ……いつもあなたと・2

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幽霊だった……。

「のう、あんた、わしらが見えるんじゃろ?お仲間が増えて
喜んでいいのか分からんが……、エリザちゃんの話をきいて
やってくれんかの?」

「はあ?エリザ……、エリ……、い、いいいいっ!?」

「やっほー、ジャミルさーん!こんにちわー!アハハ、私、死んじゃい
ましたあー!でも、ジャミルさんて本当に私の事が見えるんだあー!
もしかして、ジャミルさんってれーのーりょくしゃ!?」

頭上を見上げると……、宙に浮かぶエリザの姿……。彼女は既に死んでいる。
と、言う事はもう彼女も幽霊である。しかし、自分に向かって手を振る
彼女の姿は悲しみを感じさせない程、異様に明るかった……。

「え~っと、それじゃあ……、コホン、ジャミルさん、私の姿が
見えちゃう不思議なあなたに!……お願いがあるんです!」

「お、俺に……?」

ジャミルは先程まで荒んでいた気分が、異様に明るい幽霊さんの
姿を見て何だか気が抜けてしまった。そして、一体何が起きて
いるのかよく理解出来ず。むしろエリザは死んだ後、病魔から
解放され余計に元気になっている様にも見えた。……決してそんな
事はないが。

「どうかルーくんを立ち直らせるお手伝いをお願いします!
ルーくん、自分の所為で私が死んじゃったと思ってずっと
自分を責めて塞ぎ込んじゃってます、……このままじゃ
ルーくん駄目になっちゃう!……私も心配で旅立てません……」

今度はエリザは落ち込みだした。しかし、自分に一体何が
出来るのか……、困ってジャミルは頭をぽりぽり掻いた。

「ふふ、その仕草!ルーくんも照れて困ると頭をかいて
誤魔化すんですよ!もー、本当にルーくんてばかわいいん
ですよう!キャ!」

しょげたと思ったらころっと変わって今度ははしゃぎ出す。既に
死んでいるにも関わらずエリザは生前と変わらず、お茶目な幽霊と
化していた。しかし、このままでは彼女は未練が残って成仏出来ず
彷徨う浮遊霊になってしまう恐れもある。ジャミルは一呼吸置くと
エリザと向き合うのだった。

「……エリザちゃんをわしらと同じにしてはいかんよ、どうか
エリザちゃんの願いをかなえてやっておくれ、お兄さん……」

「分かってるよ、爺さん……、んで、俺に出来る事って何かな?
出来るだけやってみるけど……」

「わ!さっすが、ジャミルさん!それじゃあ、えーとですね!まずは
ルーくんの研究室に行ってみましょう!肝心のルーくんが
出てこないんじゃどうにもならないですから!大丈夫!
私に任せて下さい!」

「はあ……」

「さ、行きましょう、こっちですよー!」

エリザは宙に浮かんだままふよふよと移動する。……ジャミルは
その後をついて行った。

「あー、お空が飛べるって素敵ですねー!ルーくんにも教えて
あげたかったなあー!一緒にお空のデートがしたかったですー!
残念!」

いや、現世人にそれは無理だろとジャミルは思う。しかし、
ジャミルは段々と天然ボケしてきたエリザに頭痛がしてきた。
やがて2人はルーフィンが引き籠もっている研究室の前まで
やって来た。

「えーと、ルーくん……、いますね……」

「けど、駄目だよ、やっぱり鍵が掛かってる……」

「ルーくんに出て来て貰うには……、ノックがコツですよ、
えーと、あっ!」

「……ノック?」

ジャミルはエリザの説明を最後まで聞かず、試しにドアを
乱暴に叩いた。……当然ルーフィンは出て来ない。

「駄目ですっ!こうですよ、……こう!リズミカルに可愛く!
とんとんとんと!」

「こう……?と、とんとんとんとん……」

「笑顔でにっこりノックしましょう!」

ジャミルは暫くエリザからノックの特訓を受ける羽目に……。
俺は一体んなとこで何をやってんだと情けなくなった直後。
ノックが上手くいったのか、何と、中からルーフィンの声が
したのである。

「そのノックの音……、エリザ……、エリザなのかいっ!?」

ガチャリとドアが開く。漸く天の岩戸からルーフィンが
出て来たが、ルーフィンはドアの前に立っていたジャミルの
姿を見、……顔を曇らせた……。

「あなた……、ジャミルさんじゃないですか……」

「や、やあ……」

「今のノックはジャミルさん、あなたがやったんですか?
エリザのノックの真似をするなんて!僕をからかうにも
程がある!ふざけないで下さい!二度とこんなタチの悪い
悪戯は金輪際止めて頂きたい!!」

「いや、あんたと話があって……、って、俺は何話しゃ
いいんだい……」

「ルーくん……」

傷ついているルーフィンはジャミルにからわかれたと勘違いし、
相当激怒している様子。ジャミルはエリザの方を向いて助け船を
求めた。愛する妻はすぐ側にいるのにルーフィンはもうエリザの
姿を見る事は叶わず、2人はもう直接会話をする事が出来ないので
ある……。

「あ、先生ーっ!」

「……?」

其処へ救世主現れる。町の代表者として、1人の男性が
ルーフィンへお礼を言いに来たらしい。男性は町の皆が
ルーフィンが流行病を止めてくれた事にどれだけ感謝を
しているか、ルーフィンへと必死に言葉を伝えている。

「いや、僕は、別に何も……」

「みんな先生の事を心配しているんだよ、俺たちで出来る事があれば
何でもしようって、……先生には早く元気になって欲しいのさ、みんなを
助けてくれた先生に今度は俺たちが恩返しさせて貰う番だよ!」

「僕へ……」

エリザは男性とルーフィンが話をしているその間に、ジャミルへと
再び話し掛けた。

「ジャミルさん、お願いです、私の最後の言葉として、ルーくんに
伝えて下さい、ルーくんが病魔を封印してくれたことで、元気になった
人たちに会って欲しいって私が言っていたって……」

「分かった……」

やがて男性も帰って行く。ジャミルは急いで先程のエリザの言葉を
ルーフィンへと伝えると彼は狐につままれた様な表情をしていたが……。

「そうですか……、エリザが息を引き取る直前に……、そんな事を……」

漸くルーフィンも落ち着いてジャミルと話をする様になってくれたが。
それでもまだ何処か迷いは消えない様だった。しかし、表情が先程よりも
穏やかで優しい感じに見受けられた。

「しかし……、僕は誰が病気になっていたのかも分からないし……、あの時は
お義父さんを見返す事ばかりに気を取られていた……、ジャミルさん、僕を
今から、病気に苦しんでいた人達の処へ案内して貰えませんか?今更ですが、
どんな人達が流行病でどんな思いを抱えていたのか、そうすれば
病気になったエリザがどんな気持ちでいたのか……分かると思うから……」

「おっさ……、先生……」

「ジャミルさん、私からもお願いします……、それが今のルーくんに
とって……、大切な……必要な事だと思うんです……」

「ああ、一緒に行こう……、先生……」

「ジャミルさん……、宜しくお願いします……」

ジャミルが差し出した手をルーフィンが笑顔で握り返す。それは初めて
見せた笑顔。独りよがりで傲慢だった彼は大切な宝物を失った。しかし、
もう一度……、新たな道へと一歩ずつ進み出そうと歩き始めていた。