zoku勇者 ドラクエⅨ編7 ……いつもあなたと・2
ジャミルとルーフィンは、まずは丘の上の教会横の墓地へ。ルーフィンは
まだ建てられたばかりの真新しい墓に愛おしそうにそっと触れた。
「エリザ、遅くなってごめんよ、……君の願い通り、かつて流行病に
かかっていた人達を尋ねて回っている処だよ、また、報告に来るからね……」
「ルーくん……、私はここだよ……、側にいるのにお話出来ないって
やっぱりとっても寂しいな……」
「エリザさん……、何か伝える事があれば、少しぐらいなら、俺が先生に
言葉、伝えるけど……」
「ううん、いいんです……、大丈夫ですよ、ジャミルさん……、さ、
皆さんの所へルーくんをお願いします!」
エリザはジャミルの顔を見て首を振る。自分はもうすぐルーフィンの側を
本当に離れなければならない。その時が訪れるのを覚悟はしている様だった。
「お待たせしてすみません、ジャミルさん、さあ行きましょう……」
「あ、じゃあ……、最初に宿屋に行ってみるか、彼所には確か
病魔で足止め食らって動けなくなった新婚旅行の夫婦がいた筈さ」
「分かりました……」
「いきましょー!」
エリザは明るく振る舞い再び笑顔を見せた。2人ともう1人……、は、
宿屋へ向かう。
「お、おおおっ!先生!ルーフィン先生っ!!」
以前に宿屋のカウンターでどんよりして動かなかった店主も、すっかり
元気になっており、喜んでルーフィンを出迎えた。
「先生!……先生のおかげでお客さんもまた此処に訪れてくれる様に
なりまして、……本当に有り難うございました!!」
「いえ、僕一人の力だけでは……、とても病魔を封印する事など、
到底できやしませんでしたよ……、ジャミルさん達の素晴らしい
護衛のおかげです……」
「へ、へっ!?」
「ほおー!こんな小さな子が先生のガードマンを!大したもんですな!」
ルーフィンは静かに笑顔を浮かべるとジャミルの方を見た。
……遺跡の時はあれだけ4人に暴言を吐いていたルーフィンだが、
自分を守ってくれた事に今は心からジャミル達に感謝が出来る様に
なっていた。
「え、えと、アル達は部屋か、疲れてまだ寝てんだなあ……」
「ジャミルさんたら、てれなくてもいいんですよう、くすくす……」
エリザに笑われ、赤面したジャミルは相当困っているらしく、いつもより
倍の強さで、高速で頭をぼりぼり掻いた……。
「あ、もしかしてあなたが流行病を治してくれたってゆー、ルーフィン
せんせーですか?」
此方に来るバニーガールの女性。此処で足止めを食らって
動けなくなっていた新婚旅行カップルの若い奥さんの方だった。
「ええ、あなたも……病気に?」
「いいえ、病気になっちゃったのはダーリンの方、今はすっかり
容体が落ち着いて、ベッドの上で鼾かいてねてますう、ほんっと、
もうダーリンとお別れになるかと思っちゃった、せんせー、ありがとう!」
「いいえ、私はそんな……」
「よくみると、せんせーって可愛い、大したお礼も出来ないけど、
ぱふぱふぐらいならダーリンも許してくれるはず!」
バニーガールの女性はルーフィンに向けて、思い切り巨乳をさらけ出す……。
「……わわわっ!や、やめて下さいっ!!」
「ん~、せんせーってウブ?命の恩人だし、ダーリンがいなかったら私、
せんせーを完全にとりこにしちゃうかも!遠慮しないでっ!!それそれー!」
……バニーガールは困っているルーフィンに向けて更にデカ胸を
突き出すのだった……。
「な、なによっ!嫌らしいわね、この女っ!ルーくんは純情
なんだからね!こらあーーっ!ルーくんからはなれろおーーっ!!
このおっぱいおんなーーっ!きいーーー!!」
エリザは怒って後ろからバニーガールの女をぽかぽか殴る。
……当然バニーガールは痛くもかゆくもないのだが……。
「純情……、の割には鼻血が出てるし……、あっちの方も……、
やっぱおっさんも男だったんだなあ~……、プッ」
「ジャミルさんっ!!……うるさいですっ!!」
「は、はい……」
「きいーーー!ルーくんのアホーーっ!!」
「……」
……取りあえず此処での聞き込みは漸く終わる。2人は宿屋を
後にするが……。
「はあはあ、つ、次の場所へ……、いってみませう……」
「先生、鼻血の方は大丈夫かよ……」
「な、何を言ってるんですか……、僕は鼻血など出していませんっ!!」
「……そうかね……」
「そうですっ!!」
ジャミルはちらっと空中を見上げた。……上には腕組みをして
激怒しているエリザの姿。
「おい、先生……、ちゃんと責任とれよ、どうすんだいあれ……」
「だから何なんですかっ!……あ、ああ、また……、ですがこれは
決して血ではありません!も、持っていた血のりが零れたんです!」
「……駄目だこりゃ……、滅茶苦茶な言い訳だし……、無理あんぞ、
先生……」
「ぷんぷんのぷんぷん!!」
困った状態のまま、2人は次の場所へと足を進める。気がつくと、
いつの間にか町長の屋敷周辺へと来ていた。
「どうする?寄って行くかい?」
「いえ、此処はやめておきましょう、僕はまだお義父さんに
会わせる顔がない、でも、いつか気持ちが落ち着いたらその時は……、
お酒でも飲みながら、エリザの思い出話など語り合いたい物です、
お義父さんと一緒に……」
「先生、アンタマジで変わったなあ……」
「そうでしょうか……?」
「変わったよ……」
「そうですね、だとしたら……、きっと……」
ルーフィンは切なそうに空を見上げた。……本当はすぐ側に、
……近くにいるのに、今はどうあっても手が届かない、愛しい妻が
いる方向へと目を向けた。
「ルーくん……、ぐす……、お父さん、お母さん、お嫁に
行っちゃってからあまりお家に戻らなくてごめんなさい……、
いつも心配してくれてありがとう、……もう一度、お話……、
したいよ、お父さん、お母さん……、ずっとだいすき……」
「エリザさん……」
明るく振る舞ってはいるが、やはりエリザは本心は辛いのである。
親しい人達ともう永遠に触れられない事が、どれだけ辛くて悲しいか
エリザの気持ちがジャミルに伝わってくる。……エリザはかつて
幼少期に自分が暮らしていた思い出溢れる大切な我が家をいつまでも
ずっと見つめていた。
「う~、わんっ!わんっ!」
ルーフィンの処に一匹の犬が近づいて来た。吠えてはいるが、
尻尾をパタパタ振っている。
「わわわ!犬っ!?ち、近づかないで下さいよう~、僕、犬って
苦手なんですから!」
「けど、まだ子犬じゃねえかよ、先生、そんなんじゃウチのヘタレと
同じになっちまうよ」
「それでも苦手な物は苦手でして、……困ったなあ~……」
「あ、先生!お元気ですか?ウチの子がどうもすみません、
今、お散歩の途中でリードが離れてしまいまして、良かった、
見つかって!さ、帰りましょうね!先生、さようなら!」
「わんわん!はっ、はっ、はっ!」
「はは、どうも……、助かった……」
ルーフィンは大きな安堵して大きく息を吐いた。子犬は飼い主の
主婦と共に散歩へと戻って行った。
作品名:zoku勇者 ドラクエⅨ編7 ……いつもあなたと・2 作家名:流れ者