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zoku勇者 ドラクエⅨ編7 ……いつもあなたと・2

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クッキー出して貰ったっけと思い出していると、リビングに
ルーフィンが戻って来た。何やら皿を持っているが。

「それ……」

「ええ、エリザが残していったんです、種がまだありましたので……、
焼いてみました」

ルーフィンはテーブルの上にコトリと皿を置いた。焼きたての
クッキーが乗った皿を。

「余っても仕方が無いので……、どうぞ食べて下さい」

「いや、悪いよ……」

「いえ、元々僕は甘い物は苦手だったんですが……、エリザは僕に
どうしてもクッキーを食べて欲しかったらしくて、これでもかと
言う程毎日クッキーを焼いていた様です、……今となっては、もっと
ちゃんと食べておいてやれば良かったなと……、もうエリザはいないん
ですから……、今更遅いですよね……、あ、どうぞジャミルさんも、エリザが
喜んでくれると思います」

「……じゃあ、頂くよ……」

ルーフィンは苦笑いしながらクッキーを一枚摘む。ジャミルも一枚、
クッキーに手を出した。……直後。ジャミルの顔が硬直する……。

「う、うぇ……、しょ、しょっぺえ……、あの時出してくれたのと
大分味が……」

「ふむ、どうやらこれは失敗作の様です、全く……、エリザは生前から
おっちょこちょいで、……最後に残していったのがこんな……」

「で、でも、何とか食えねえ事もねえと思うよ、多少喉が渇くかもだけど……」

ジャミルはお茶をごくごく飲みながら笑う。それを見てルーフィンも笑みを浮かべる。

「でも、不思議です……、こうしてクッキーを食べていると、
いつも側にエリザがいてくれる様な気がします、ジャミルさん、
彼女はクッキーのレシピを残してくれていったんですよ、僕は
このレシピを宝物に、エリザの後を継いで、時々でもこれからも
クッキーを焼いてみる事にします」

「ああ……、んじゃ、俺はこれで本当に宿屋に戻るよ、またな、先生!」

「色々有り難う、ジャミルさん、お休みなさい……」

ジャミルは夫婦の住まいを後にし、仲間達の待つ宿屋へと戻る。
エリザ特製の塩クッキーをお土産に持って……。

「そうだったの……、本当にお疲れ様だったね、ジャミル……」

「……えううう~、エリザさん、行っちゃったんだあ~、でも……、ちゃんと
無事に成仏出来て良かったよおお~……」

「ちょっと帰りが遅いから心配はしてたんだけど……、そっか、
ルーフィンさんも町の皆とちゃんと仲良くなれたんだね……」

宿屋に戻ったジャミルを真っ先に迎えてくれたアイシャを始め、ダウドも
アルベルトも、ジャミルの話を聞き、エリザの心からの来世での幸せを
願うのだった。

「モォ~ン、くんくんくん……」

「ん?モンか……、このクッキー欲しいのか?エリザさんの最後の……、あ!」

ジャミルが言い終わる前に、モン、凄い勢いで袋ごとクッキーに
バリバリ食いつく。……見ていたアイシャ達は苦笑。

「ぎびゃあああーー!しょっぱいんだモンーーっ!!」

「だから人の話は最後まで聞けよ……、エリザさんが最後に作っていった
これは失敗作なんだよ、でも、妻の事を皆さんもどうか忘れないでいて
欲しいって先生がさ……」

「でも、何か味……、相当凄いみたいだねえ~……」

アイシャが急いでバケツを借り、モンに大量の水を飲ませている
様子を見て、またもダウドが苦笑……。塩クッキーを一気に全部
口に入れたのだから……、それは凄い事態。

「お口……、ひりひりなんだモン~……」

「けどさあ~、今回のジャミルの役どころってホントに凄いねえ~、幽霊が
見えちゃうなんてさあ、……こ、怖くないの……?」

「別に怖くねえよ、……あ、いるぞ、お前の後ろに……大口開けた……」

「……シャアアーーーっ!!」

「ぎゃあーーーっ!?」

ダウドの背後から……、大口を開けたモンがぬっと現れるのだった……。

「……もうーっ!ジャミルっ!構うのやめなさいよっ!モンちゃんもよっ!!」

「へえ~い……」

「もぎゃ~モン……」

「も、漏らした……、少し……」

……また騒がしくなって来た宿屋のルームに、アルベルトはやれやれと
言った表情で眉間にしわ寄せ、読み掛けの本をパタッと閉じた……。
そして、翌日。

「そうですか……、皆様は今日、この町を出られるのですね……、本当に
お世話になりました……、この町を救う為、お力を貸して下さったご行為、
町長として、心から感謝致しております……」

色々あったが、この町も無事救う事が出来、4人は次の場所へと又
旅立たなければならない。出発の前に、まずは町長の家に挨拶に
寄ったのである。

「私も……、泣いてばかりいましたが、漸くあの子のいない現実を
少しずつですが……、受け入れる事が出来ましたわ……、大切な娘の
思い出と共に私たち夫婦も強く生きて行きます、……実は、今朝早く……、
先生がいらっしゃいまして、主人にこの家の考古学の本を貸して
欲しいと……、尋ねて来たんです」

「ルーフィン先生が?」

「ええ、主人たら、最初は戸惑っていましたが、段々と先生とも
お話が乗ってきていたみたいで、見ているとまるで本当の息子と
実の父の様でしたわ、ふふ」

「こ、こら……、あまり余計な事はべらべら喋る物ではないぞ、
ジャミルさん達、私は仕事がありますので、こ、これにて……、
またこの町にいらっしゃった時はいつでも遊びに来て下さい!
歓迎いたしますよ!」

町長は顔を赤くし慌てて自室に引っ込んでいった。しかし、その顔には
微かに笑みが。ジャミル達はルーフィンと町長夫婦のこれからの良い
関係を願いながら家を後にした。……そして、次はルーフィンの研究室へ。

「やあ、ジャミルさん達……、今日出発なさるんでしたね、色々
ありましたが、本当にお世話になりました、ジャミルさん、僕は
あなたに改めてお礼を言いたかったんです、今まで自分の私欲の
為にしか行わなかった学問を、今度はこの町の人と世の中の為に
役立てたい、……心からそう思える様になったんです、今、こんな
気持ちになれたのも、閉じ籠もっていた僕をあの時外に連れ出して
くれたあなたのお陰です、何の役に立てるか今は分りませんが、
焦らずにその方法をじっくり探していこうと思います」

ルーフィンは笑顔でそう言葉を述べる。彼の仕事机の上には
クッキーが置いてあった。4人はそれぞれルーフィンと握手を
交わすと、研究室を後にした。

「ルーフィンさん、本当に凄く人柄が変わったね……」

「ち、違う人なんじゃないの……?180度違いスギ……」

「ダウドったら、失礼でしょ!でも、最初の頃とは全然違うわ、
凄く顔が活き活きしてたわね、エリザさんがもういないのは
悲しいでしょうけど、これからも頑張って欲しいなあ、私も
応援するわ!ね、モンちゃん!」

「モォ~ン!ツンツンおじさんが優しいおじさんに変身したんだモン!」

「だな……」

仲間達もそれぞれそう言ってくれ、ジャミルも安心する。そして、
エリザが旅立って行った空を改めて見上げる。……この町を
包んでいた暗い雲と空気はもう完全に消滅し、今日の空も
すっかり快晴であった。

「あはははっ!ついについについにやってくれちゃったネっ!