zoku勇者 ドラクエⅨ編9 新たな旅立ち
意識を失い動けない状態の筈のジャミルの頭に声が響いてくる……。
男性ともう1人……、どうやら女性の声の様だったが……。
……人間達は……この世界に相応しくない……
己の事しか考えず、嘘をつき……、平気で他者を陥れる、そんな人間の
なんと多いことか……
「……誰……だよ……、誰が……」
……私は人間達を滅ぼす事にした……
……お待ち下さい!!
何故……止めるのだ……
私は人間を信じます、どうか人間を滅ぼすのはおやめ下さい……!
ええい黙れ!……これはもう決めた事だ!……人間は……
滅ぼさねばならぬ……
……そして、暗黒の雲の切れ間から人間界へ向け放たれる、
生々しい光のビジョンが映し出される……。それは滅びの
光なのか……。
……私は人間達を信じます、……この身に変えても人間達と人間界を
守ります……
「う、う……、だから……、誰が……、く、くせえ……、臭い……?
これは……」
そこで声は聞こえなくなり……、途端にジャミルの頭痛も治まる。
そして意識も戻り……、気がつくとモンが側で自分の方にケツを
向けていた……。
ぷう。
「う……、こ、こらああーっっ!!モンっ!オメーは何してんだああっ!!」
「ジャミル、良かったモンーっ!……ジャミル、急に倒れちゃったんだ
モンーっ!でも、起きてくれて本当に良かったモンーーっ!!」
モンはピーピー泣きながらジャミルに飛びついた。どうやらモンは
倒れたジャミルをずっと心配して側でオロオロしていたらしい。
あまりにも目を覚まさないので困っておならを発射しようとお尻を
向けていた処。しかし、ずっと心配してくれていたモンに対して
これでは怒る事が出来ず、今回は仕方なしに諦め礼を言う。
「はあ、俺、どうにか平気だよ、世界樹に祈った途端、何か急に
眠くなっちまってさ、でも今はなんともねえからよ、……ありがとな……」
「モンーっ!」
ジャミルはモンに礼を言いながら、改めて自分の状態を確認。
世界樹には祈ったが、やはり、頭の光輪も、翼も……、何も
戻ってはいなかった。
「たくもう……、どうせ無理なんだから……」
ジャミルはそう呟きながら再び世界樹を見上げる。……すると……、
何処からか静かな声が響いてきた……。
……守護天使ジャミルよ……、よくぞ戻って来てくれました……
「な……、今度は何だ……?」
翼と光輪を失ってもなお……、あなたが此処に戻ってこられるという事は……
それもまた……運命なのかも知れません……
「……」
守護天使ジャミルよ、あなたに新たな道を開きましょう……、私の力を宿せし
青い木が……、あなたを新たな旅へと誘うでしょう……
「……青い木……?新たな旅……?」
……そしてもう一つ……、これまであなたが旅してきた場所へと移動する力、
ルーラの魔法を授けます……
「……わっ!?」
「モンっ!?」
ジャミルの身体が淡く輝く。一度訪れた場所に瞬時に移動で出来る魔法、
どうやらルーラの魔法を習得した様であった。
さあ、守護天使ジャミルよ……、すぐに地上へ戻りなさい、天の箱船で
人間界へ行き、散らばった女神の果実を集めるのです……、それがあなたに
託された……、新たな使命……、そして運命の扉……
「俺の……新しい使命……?」
「頼みましたよ……、どうか人間達と……、……を、救って下さい……
最後の部分はよく聞き取れなかったが、其処で声は途絶えた……。
「ジャミル、……大丈夫かの?して、翼と光輪は元に戻ったのか?」
「長老……」
オムイがヒーコラ言いながら、再びやって来る。ジャミルは先程の夢の話、
祈ったが結局は翼も光輪も戻らなかった事、……全てオムイに伝えた。
「……なんとも……、それは不思議な夢じゃ……、地上を滅ぼさんと
する者、それを止めようとする者……、儂らの知らぬ所で既にとんでもない
戦いが始まっておるのやも知れぬのう……」
「……」
「ばあー!ぴーかぴか!ぺちぺちモンっ!!」
真面目な話の最中、時折オムイの禿頭の後ろからモンがチョロチョロと
顔を出し頭を叩いて遊んでいた。注意しようかと思ったが、何となく吹く
ジャミルであった。禿頭を叩かれているにも関わらずオムイは全く気づいて
いない。
「……お主が翼と光輪を失い、箱船に乗れるのにもきっと何らかの
意味があるのじゃろう、お主の見た夢はきっと神のお告げ、聖なる声が
お前に語りかけたというならば、儂はそれを信じようぞ、女神の果実には
世界樹の聖なる力が宿っておる、女神の果実を全て集めれば、天使界も
人間界も救われるやも知れん、……守護天使ジャミルよ、ならば導きの
聖なる声の通り、すぐに地上へ再び向かいなさい、そして散らばった
女神の果実を集めるのじゃ、果実は確か7つの筈……、頼んだぞ……」
「ああ、俺で出来るなら……、引き続き頑張ってみるよ……」
「頼んだぞ、ジャミルよ……、地上に落ちた女神の果実を全て集め、
無事天使界に持ち帰るのじゃ!!……お主には危険な使命やも知れん、
申し訳なく思っておるよ、だが、どうか……」
オムイはジャミルの肩を掴んで声を詰まらせた。ジャミルもそれに
応えるかの様に頷く。
「……ああ、いっちょ行ってくるぜ!」
不思議な声に導かれ、そして新たな使命を託されたジャミル。
地上へと再び向かう為、天使界から離れ、また冒険へと旅立つ
事となった……。まずは箱船へと戻る。そう言えばアルベルト達も
待たせているのをすっかり忘れていた。
「奴ら、どうしてんだろ……、ん?」
「困ったなあ~、なんであのオヤジいないかなあ~!!……ここまで来たら
フツー顔ぐらいみせるっしょ!……も、もしかして、箱船が墜落したとき
人間界に一緒に落ちちゃってたりする!?……探すのチョーダルイん
ですけど……、でもテンチョーがいないとバイト代も貰えないしィ~で!」
箱船近辺をウロウロ、行ったり来たりしている謎のガングロ生物……、
サンディである。
「何だよ、お前まだいたんか?用事があったんじゃねえの?」
「またクサブーがいるモン!」
「誰がクサブーっ!……って、ジャミルじゃん!あんたこそ何してんの?
此処での用事はもう済んだワケ?」
「ああ、実はさ、今度は地上に散らばった7つの女神の果実を探すんだ、
で、また地上に戻らなきゃなんねんだけど……」
「それなら好都合っ!実はさ、アタシも人を探してて、地上に戻らなきゃ
なんないんだよねえ~、んじゃ丁度良かった!一緒にいこ!協力するする!」
「ああ、頼む……」
こうしてサンディが再び仲間に加わ……。
「ジャミルの話声が近くでするのにーっ!あ~ん、どうして姿が
見えないのようーっ!」
「もーいい加減に地上に戻りたいよおーー!」
「いつになったら迎えに来てくれるのやら、ふう……」
そして再び、仲間の姿が見えないまま、待たせていた事を思い出すのだった。
「お前ら、其処にいるんだろ?俺だよ、ジャミルだ、用事は終わったよ、
さあ、地上へ戻ろうや……」
「ジャミルっ!やっぱり側にいるのねっ!でも……」
作品名:zoku勇者 ドラクエⅨ編9 新たな旅立ち 作家名:流れ者



