クロノトリガーのリアリティを改めて問うてみるエッセイ
背後から監視して、修道院に忍び込み壁を登り、天井から観察していたら、魔族(ミアンヌ)と交戦しはじめた。仲間内の揉めのごとかと思い静観していたが、どうやら違う様子。もしかしたらこの不審な赤髪男は魔族に囚われたリーネを追いかけてたった今ここにたどり着いただけなのかもしれない。その仲間(ルッカ)が背後から襲われそうになっている。もし二人が誘拐犯であって他の場所でリーネ様を既に引渡したのだとしても、どのみちに死なれれば不味いから助けよう。という流れでクロノ達と合流する。当初、カエルがノリのいいキャラを演じて魅せるのはクロノ達を油断させる演技で、共に戦う中で信頼を深めていったのかもしれない。
ここまでの筋書きでそれなりにリアリティがあることが明白ではある。本文冒頭のくだり、マールのオーラにリーネ誘拐事件の真相ミステリーが隠されているかのような書き出したけれど、そっちのは政治色が濃すぎる反面、内容がとても複雑になって書くのも読むのも手間がかかると思うが、気になる人は耐えるしかない。
まず解決されてない誘拐の矛盾の一つが、鉄球で人質を拘束していないこと鉄球を用意したのだから、使いどころはあったはず。リーネと大臣以外に鉄球を使ったとすれば誰に使ったか?
例えば修道院を占拠して修道者らに成り済ます為に利用した。成り済ます為の情報を聞き出す為の監禁尋問の際に鉄球を足枷にした。
一通り情報を聞き出して修道者を殺したとして、彼らの遺体がないのは食べられたか、埋められたかもしれない。いずれにせ殺すのであれば、鉄球を外してから殺すより、鉄球を着けたまま殺す方が確実であり、鉄球をリーネや大臣に装着するのが正解だろう。それでも尚、自由に歩ける状況にしているとはどういう状況だろう?
まさかトイレに行かせる為ではないだろう。そうであれば我々の世界観と似ているということ。
中世ヨーロッパなトイレ事情では、監禁した相手をトイレさせるには、トイレに監禁させるか携帯トイレ(おまる)しかない。清潔な魔族である場合、トイレに監禁して尋問したくないし、おまるにトイレさせて部屋が匂うのも我慢ならないので、トイレの自由は認められていたのかもしれない。
※単純に考えるのなら誘拐したリーネは王家と何らかの交渉をする人質として足枷の跡すら着けないように魔族は配慮していた。
人質を無事に扱う必要がある為に鉄球等の重りは使わず自由を認めていた。でもその場合、リーネ王妃として外交上重要な存在であるというのを十分魔族側は認識している訳であり、リーネを殺す動機が更に低くなるだけだろう。ならば魔族はトイレ事情に気を使った。それが最も確度の高いリアリティになるだろう。エンタメとしてはボツであり、万が一でもトイレシナリオでクロノの実写映画は作れないだろう。
そこで無理やり別のリアリティ案を持ってくるが、それがマールのオーラな世界観についてになる。
オーラという特殊能力があるマールに他者のオーラを感じとる力がもしもあるのだとするならば、人と魔族をオーラの違いで識別できる能力もあるのかもしれない。 マールの祖先であるリーネにも似た力があるとする
魔族がガルディア人に成り済まして王家に潜入してもオーラの違いで擬態していた事がばれてしまう。 その問題を排除して潜入するにはリーネを王家から遠ざけるのが選択肢になり、誘拐の第一動機となる
リーネを誘拐してその姿を観察。更には脅してリーネしか知らないだろう家族等の情報を得て成り済まして王家に入る。殺せばリーネから二度と情報を聞き出せないので殺せない。
しかし、作中、大臣に擬態した魔族(ヤクラ)はリーネに対して『この世に別れる告げる準備は整ったか?』なセリフを言いいながらリーネを殺すような印象をプレイヤーに与えた
ここが重要なポイントになる。大臣に成り済まして王家に入るのが目的であるなら、リーネに成り済ます為の情報も必要であり、殺してしまえば後々情報が得られなくて成り済ましが難しい。
魔族が人に擬態できるという情報を既にガルディア側が得ているのであればリーネに成り済まして王家に入ったらリーネとしての合い言葉を問われるかもしれない。その合い言葉を引き出す為にも生かしておくとして、 仮に大臣のみに成り済ますことを完ぺきにやりとげても、大臣と王宮の人しか知らない情報を大臣自身が忘れてた場合、リーネを殺していたら、その情報が得られないので、騎士団に疑われてしまうかもしれない。
それらの理由でリーネを殺すメリットがない。リーネを殺すにしても鉄球を着けた状態が監禁する側にとって楽なはず。殺すにしても床が汚れないように絞殺すればいいだけだから、尚、鉄球を装着するのが潜入計画においては重要になる。(トイレの例外はあるだろう。しかしトイレの為に鉄球を外してやったとしても、やはり殺すのであるならトイレに行かす必要がなく、鉄球を外す必要もない訳で…)
リーネに足枷跡すら残るのが外交上のリスクと判断して、鉄球を着けないのなら、尚更、殺す動機がない。。
潜入計画が失敗しそうで犯罪の証拠を消すために殺すのだとしても、『この世に別れる告げる準備は整ったか?』なセリフをヤクラな大臣が言っているときは、まだヤクラはクロノやカエルが部屋に侵入している事に気付いてすらいない。大臣として政治をやる分には計画は順調であるかもしれないのに。じゃあ、殺す理由ない。
それそこが答えだろう。
『この世に別れる告げる準備は整ったか?』なセリフを「人間界に別れを告げる準備は整ったか?」の意味合いで解釈する
リーネを どこかに連れていく予定があるのだとすれば鉄球で拘束をしていない事にも辻褄が合う。
問題(リーネはどこに連れて行かれようとしていたか?)
まず考えられるのは魔界だろう。魔族の王の正体が人間であるので、人間界から嫁候補を連れてこようとしていた等の理由。実際、魔界の王の正体は人間であるが魔族の多くが人間界に敵意を持つ構造があるのなら、その可能性は低い。
とはいえ、オーラな特殊能力があるリーネの正体についてが、魔族が擬態した人間であるのだと魔族側に疑惑されていた場合には状況は変わる。回復魔法のようなものが扱えるリーネならば魔族側としてはリーネの正体が魔族である可能性に着目する。
リーネの正体が魔族であった場合、 その魔族の目的が何なのかは気になるところ。もしヤクラの知る魔界とは別の勢力があるなら、敵対するかもしれない魔族組織がガルディア人に擬態して既にガルディア王家に潜入しているかもしれない。その内の潜入魔族がリーネであるかもしれない。
もしもヤクラが属する魔界に関する情報が敵対する勢力を通じてガルディア側に伝わっているなら、どの程度伝わっているかも確認しなければならない。何人の魔族が擬態して潜入しているか等もリーネを捕まえて聞き出さなければならない。
リーネが魔族ではないことが尋問等で明らかになるとして、尚更鉄球等で自由を奪いつつ監禁しなければならないだろうが、それでも尚、自由に歩ける状況にしているとはどういう状況だろう?
A.トイレの処理に困ったから。
作品名:クロノトリガーのリアリティを改めて問うてみるエッセイ 作家名:西中



