zoku勇者 ドラクエⅨ編10 祈りの少女と主神様
「折角来て頂いたのに……、ご免なさい……、でも、あたしは本当に
大丈夫ですから……、あっ!?」
「もたもたするな!早く来いっ!!村長も暇ではないのだぞ!!」
「……この野郎!乱暴は止めろっ!!」
男は更にオリガの手首を強く引っ張った。ジャミルは男に思わず男に
飛び掛かりそうになるが、オリガに何かあったら大変だよ!……と、
アルベルトに制される……。
「あたし行ってきます、……皆さん、本当に有り難うございます……」
「オリガ……」
オリガはそのまま男に連れて行かれてしまう。だが、このまま大人しく
黙っている4人組ではない。ジャミル達は頷き合い、男とオリガの姿が
見えなくなった頃を見計らい、一行も村長の家へと走った……。
「……旅人よ……」
「……っとお!?」
「わあっ!?」
ジャミルがいきなり足を止め、アルベルト達はジャミルにぶつかる……。
ジャミルの前に……ジャミルしか姿の見えない老婆が出現した。
……幽霊である……。
「……婆さん何だよっ!危ねえなあ!!」
「な、何っ!?ジャミル誰と話してんのさあ!!誰もいないじゃん!!」
「……ジャミルは今、幽霊のお婆さんとお話してるんだモン~……」
「……ぎゃああーーっ!!」
焦り始めるダウド。モンにも幽霊の姿が見える為……、モンは三角の
額あてを着け、ダウドを脅して遊ぶ……。後、見えるのはサンディだけで
あるが、既に彼女は発光体に戻り寝ている。
「モン、君も悪戯の度が過ぎると……、そろそろスリッパの刑
デビューだよ……、うふふ……」
「……モギャーモンっ!!」
モンは慌ててアイシャに飛びつく。……アイシャは苦笑。腹黒の怖さは
幽霊より上である……。……ダウドは少し漏らした様子。
「お兄さんや、驚かして済まぬのう……、そなたは死んだわしの姿が
見えるのだね、じゃが、これはとても大事な事じゃ……」
「……婆さん、話を聞かせてくれよ、どういう事だい……?」
「……」
お婆さんの姿が見えない他のメンバーは、ジャミルの言葉をただ黙って
その場で聞いているしか出来なかった。
「見たろう、この病んだ浜と欲に取り付かれた民の姿を……、あの主様と
呼ばれておる者は断じて海の守り神などではない……!かわいそうにのう、
オリガと言う少女は得体の知れぬあの生き物に取り付かれておるのじゃ……、
旅人よ、頼む、どうか……、オリガを守ってやっておくれ……、このままでは
今に良くない事が起きるぞ……」
「……婆さん……」
ジャミルは黙って唇を噛む。老婆はジャミルにそれだけ伝えると姿を消す。
「ねえ、ジャミル……、幽霊さんは何て……」
アイシャが心配してジャミルに聞く。老婆から話を聞いたジャミルの
表情は硬かった……。
「俺にも何が起きてるか分からねえ、ただ、どうもあの主神は
良くねえらしい……、このままオリガに主神を呼ばせ続けたら、
オリガが危ねえ!……早くあの糞村長をシメねえと!オリガを
私欲で利用しようとするのを止めさせるんだ!!」
「分かった……、急ごう!」
「……あわわわー!!」
「モンーーっ!!」
ジャミル達は村長の家へ向かう足を更に強める。……もしもあの糞村長が
拒否しようとするならば、村長をブン殴ってでも止める覚悟でいた。
「だ、だけど……、村長の家……、何処だかジャミルは知ってるのさあ!?」
「う……、そ、それはっ!?」
ダウドに突っ込まれ、ジャミルは焦り出し……、足を止めた……。
「お、丁度あそこに家があらあ!其処で聞いてみっか!すんませーん!!」
……側にあった民家の住人に、どうにか村長の家の場所を尋ね、
止めていた足を再びダッシュフル稼働させる4人であった。
「あった!あの家だな、オリガもいるのも間違いねえな!よしっ!!」
……村の隅に佇む一軒家。だが、その家はこの村の村民の家と比べ、
明らかに造りは良く、外観も大きかった。あの村長の家に間違いは無い。
「待って!どうしてそう君は落ち着きがないの!少し様子を見なくちゃ!」
ストレートに村長の家に突撃しようとするジャミルをアルベルトが
抑える。仕方が無いので、言う通り暫く外で張り込んで様子を覗う事に。
……窓からちらっと中を見ると、確かにオリガはいた。村長と話を
している様子。
「……気になるなあ、何話してんだよ……」
「でも、此処からでも少し声が聞こえるわ……」
アイシャが言った通り、外にいても静かにしていれば多少の声が
此処からでも聞こえる。……4人は窓枠に張り付き、会話を必死に
盗聴する……。
「オリガ……、あの嵐の日、お前の父親が行方不明になった日から
随分立つ……、厳しい事を言う様だが、死んだ者は何時までも
待っていてもこの浜には戻って来ない、……だからな、どうだ?
……私の家の子にならないか?」
「……村長……」
「あいつっ!……オリガを養子にして何時までもテメエの手元に置いて……、
利用してこき使う気かっ!!」
「ジャミル!……抑えて!此処は我慢してもう少し大人しくしていよう……」
外にいるジャミル達は村長の目論見に、いても立ってもいられない様子だった。
「パパ……、そ、そうだよ、オリガ!家においでよ!一人ぼっちなんて
さみしいよ!」
家の中にいるおかっぱ頭の少年。村長の息子らしい。此方は純情その物の
様であるが、事の次第を分かっておらず、ただオリガと一緒に暮らせるのを
望み、喜んでいる。
「お前は息子のトトと仲がいい、お前がこの家に来てさえくれれば
トトも喜ぶ、なあ、……考えてみてくれないか……?儂はお前の事を
本当の娘の様に思っている、お前はもう充分頑張った……」
「!!本当の……、む、娘……、んな事ハナっから思ってもねえ癖に、
爺マジで何考えてっ!!」
「……だからっ!駄目だったらっ!!バカジャミルっ!!」
暴れそうになったジャミルの口を必死で塞ぐアルベルト。静かに待つのも
本当に大変である。
「嫌に外が騒がしい様だが……、誰かいるのか……?」
「わ、……わんっ!わんっ!」
「モン、モンっ!!」
「……野良犬とフクロウか、まあ良い……、オリガ、話の続きだが……」
……単純である。必死で誤魔化す役目をしたダウドは冷や汗
ダラダラだった。
「モン、フクロウじゃないモン……、モーモンだモン……」
むくれるモンにアイシャはモンを宥める。でも、モンモンて鳴く
フクロウさんがいるのかしらと少し困ってみた。
「有り難うございます、でも、もう少し時間を下さい、それにあたしも
村長にお話があります……、ずっと考えていた事なんです……」
「ほう?何だね?言ってごらん……」
「……あたし、もうこれ以上主様をお呼びしたくないんです……」
「!!」
「オリガ……」
「よ、良く言ったぞっ!!」
「偉いわ、ちゃんとオリガはもう自分の筋を通そうとしていたのね……」
「しっかりしてるよ、本当に……」
「うん、健気だねえ~……」
外で様子を覗っていたジャミル達も感心する。だが、これぐらいで
あの傲慢村長が簡単にオリガから手を引くとは思っていなかった。
……案の定……。
作品名:zoku勇者 ドラクエⅨ編10 祈りの少女と主神様 作家名:流れ者



