zoku勇者 ドラクエⅨ編10 祈りの少女と主神様
「……こんな暮らし……、何だか間違ってると思うんです、……だから……」
「バカな事を言うな!そんな話、今更村の者が納得する訳がないであろう!
お前はこれまで散々お前を可愛がってくれた村の者を裏切る気か?これからも
お前はこの村の為に働かなくてはならないのだぞ!!……それにお前は
どうするつもりだ!他にこの村の為にお前は何が出来る!?」
「それは……」
オリガは言葉を止める。あくまでも村の為、村民の為と言い張り、
しつこくオリガを私欲に利用しようとする村長にジャミルは怒り心頭、
他の3人も呆れて顔面蒼白に。
「まあ良い、今日はもうこれで帰りなさい……」
「はい、失礼します……、お休みなさい……」
オリガは村長から解放され、家を出て行く……。オリガがある程度、
村長の家から離れた距離まで歩いて行った処で、窓の下で隠れていた
4人も慌ててオリガの後を追い掛けた。
「おーい、オリガーーっ!」
「あ、旅人さん達……、来て下さったんですか……?」
「うん、実は……」
オリガはジャミル達の側に駆け寄ってくる。……ジャミルはさっき、
オリガと村長の会話を外で聞いてしまった事を彼女に全部話した。
「そうだったんですか……、心配して下さって本当に有り難うございます、
嬉しいです!」
オリガはジャミル達に笑顔を向けるが、彼女の心は迷いと不安で満ち溢れて
いるのが手に取る様に感じられた……。
「海の神様に頼り切ってしまうなんて本当にいけない事だと思っています、
なのに……、誰も耳を貸してくれない……、村長様だって……、でも、
村の事に関係ないあなた達なら、きっとお話を聞いてくれると思ったんです、
……ねえ、あたし達のこんな暮らし……、絶対に何処か間違っていますよね……?」
「オリガ……」
オリガはジャミルの方を向いて目を潤ませ、返答を求めるのだった……。
「ああ、間違ってるさ、絶対……、お前を利用しようとするこんな汚ねえ
やり方はな!」
「ジャミル……、うん、僕らもそう思うよ、オリガ……」
「そうよ!これ以上あなたに酷い事しようとするならっ、私達も黙って
ないんだから!皆でオリガを意地悪村長から守ってあげる!!」
「そうだよっ、オ、オイラ達もついてるよっ!!」
「モォーーン!!」
「皆さん……、そ、そうですよね!有り難うございます!あなた方なら
きっとそう言ってくれるんじゃないかと思ってました!あたし、何だか
勇気が出ました!……明日もう一度、村長様とお話をしてみます!!」
「ああ、一緒に俺らもついて行くよ、心配すんな!!」
「はいっ!!」
(うわ、これだから偽善者集団て困るのよネ、なーんも考えてないし、
……ヘタレまであんな張り切っちゃってサ……)
しかし、サンディだけは……、オリガを守ろうとするジャミル達を見て、
何か思う処があり、顔を曇らせた……。そして、今夜はそのままオリガの
家に招待され、其処で一夜を明かす事になった。
「ねえ、ジャミ公、起きてんの……?」
「ああ……?ガングロか、起きてるよ、何だよ……」
アルベルト達は既に寝ていたが、ジャミルだけは何か考えており、
眠れないらしかった。
「アンタ、随分ムセキニンな事言ってくれちゃってるけど、これでもし、
あのオリガってコが村中からハブンチョにされたらどーすんの?
……確かにあのヌシってヤツ、良くないかもしんないよ?でも、本当に
どうすんの……?ヨソモンのアンタが……、このままこの村の事に関わる気……?」
「……」
サンディの言葉にジャミルはベッドで仰向けになったまま……、
そのまま返事を返せず、結局寝てしまう……。疲れもあったのだろうが。
そして、翌日の朝を迎えた……。
「ジャミル、ジャミルったら!ねえ、起きなさいヨっ!アンタ一番
遅いじゃん!」
「起きるモンーっ!……プ」
「……何だ、ガングロと……、ってモンっ!くせーケツ向けんなっ!」
「モンモンーっ!」
ジャミルは朝からサンディの罵声とモンのモーニングおなら付きの
お尻で起こされた。だが、他の仲間達は既に起きており、心配そうに
ジャミルの方を見ている。
「お前らも早いなあ~、もっと休ませて貰えば……、ふぁ~!」
「もうっ!そんな場合じゃないったら!」
「ジャミル、昨日の事……、もう忘れたわけじゃないよね……?」
アルベルトが深刻そうな顔でジャミルを見ている。しかし、眉間には
皺が寄っている。
「分かってるって、オリガは俺らで守ってやるって事だろ?忘れてねえよ!」
「消えちゃったんだよお、オリガが……」
「……何ですと……?」
仲間達に話を聞いてみると、ジャミル以外のメンバーが目を覚ました
時には既にオリガは家にいなかったと言う。早朝、幾ら突いても起きない
ジャミ公を除き仲間達はオリガを探し村中を走り回ったのだが……。
「困ったなあ、一体何処に行ってしまったんだろう……」
「もしかして……あのでっかいお魚さんがつれてっちゃったモン!?」
「ひえええーーっ!?」
「もうっ!モンちゃんもダウドまでっ!そんな筈ないわよっ!!オリガは
大丈夫、無事よ……、ね、ジャミル……」
アイシャはそう言ってジャミルの方を見ているが。ジャミルはさっきから
珍しく静かに黙ったままずっと俯いており……。
「ぐう……」
……パンッ!!
「寝るんじゃないっ!……何やってんの君はわっ!!」
「わー!アル、落ち着いてーー!!」
「考え事してたらうっかりしちまったんだよ!俺だって何も考えてねえ
訳じゃねえぞ!たくっ!おいお前ら、あの糞村長のとこ、……行くぞ!」
「……」
「まさかジャミル……、わ、私もあまり考えたくないけど……」
アイシャの言葉の後、仲間達は無言になり、外に飛び出した。と、
外に出ると、オリガを尋ねて来たのか、村のおっさんが家の外で
待っていた。
「おい、お前ら、オリガはもう帰って来たのけ?お祈りの時間なのに、
幾ら呼んでも出て来ねえからよ……」
「いえ、僕らが目を覚ました時には既にオリガはもういなくなっていて……」
「あんだと?もう家にはいねえってか?んなバカな……、んじゃ、どこ
行っちまったんだろうなあ……」
おっさんはのそのそ引き上げて行く。ジャミルの胸に益々嫌な予感が
込み上げて来た。
「ちょっとジャミ公!アンタあの子を守ってやるって約束したんでしょっ!
男なら責任取りなさいヨねっ!!」
「分かってる!とにかく村長の家だ、行ってみよう!」
仲間達は頷き、サンディは発光体に戻る。あの村長が何かしでかす前に……。
絶対に阻止しなければならない。だが……。
「おーい、おーい!お兄ちゃん達―!」
此方に向かって息を切らして走って来るおかっぱヘアの少年。村長の息子の
トトだった。
「大変なんだよーっ!ハア、ハア、ハア……」
「大丈夫か?……落ち着いて話してみ?」
「うん、あのね、オリガが今朝早く家に来て、もうぬし様を呼びたくないって
言ったら、パパが凄い顔をしてオリガを怒鳴ったの、そしたらパパ、嫌がる
オリガを無理矢理引っ張って連れて行っちゃったんだよ!僕の家の裏の門から
作品名:zoku勇者 ドラクエⅨ編10 祈りの少女と主神様 作家名:流れ者



