zoku勇者 ドラクエⅨ編11 カラコタ編・1
「止めろ、こいつの所為じゃない……、俺が……食った……」
「……なん……だと……?」
「あ、あにじゃーーっ!!」
荒くれデブ男の一升瓶を持つ手が怒りで震え始めた。少女から的を変え、
今度は今にも少年の方に殴り掛かる寸前だった。
「今日も余り稼ぎが良くなかったんだよ、苛々してた、だから食ってやった、
……どうもこの……カラコタって場所はよ……」
荒くれデブ男、少年の襟首を掴むと顔をボコボコに殴り飛ばした。
……何回も何回も……。しかし、少年は抵抗する事無く、荒くれ
デブ男に口から出血しながらも只管殴られ続けていた。
「……ペッ、……気がすんだかよ……」
「何だっ!その目はっ!テメエ、今日の稼ぎも碌に出来やしねえ癖に何だ
その態度はっ!!しかも俺の大事な夕飯をよくも食いやがったなあーーっ!!」
「やめてーっ!兄者が悪いんじゃないんだよーっ!ワチが、ワチが……」
「るせー!……糞め!黙ってろっ!!……こんなモン、いつもの事じゃねえか……」
「ああーーんっ!!」
少年は少女を庇い、尚も暴力に耐え、荒くれデブ男に殴られ続けた。
側では男児がわんわん泣いている。……その様子を隠れて見ていたモンは
恐怖に怯え、その場から逃げ出してしまうのだった……。
「……怖い、怖いモン……、どうしよう……、モンの、モンのせいモン……」
これまでずっとジャミル達と一緒に行動していたモンは、今回初めて
人間達の世界を一匹で行動し、……醜い人間の醜態を目の辺りにする
事になった……。今までも、ツォの浜辺の村長など糞人間と遭遇する
事はあったが……。モンは生まれてからこれまで、これ程の恐ろしい
人間と遭遇した事が無かった。しかも自分の犯した失態の所為で
あの子達が……。モンはどうしていいか分からず、ジャミル達と
離れた事を後悔していた。
そして、モンを探すジャミル側……。
「ねえ、2人とも、いつまでそうしてるのさ……」
「いい加減にしたらどう……?」
ジャミルとアルベルトはあのまま黙ったまま口を聞かず。薄汚い集落を
モンを探し、只管歩き回っていた。後ろから後を歩いているダウドと
アイシャは呆れている……。しかし、先に沈黙を破ったのはジャミルの
方だった。
「分かってる、分かってんだよ……」
「……何が……」
「……オメエは元々お堅いショバ出身だからよ、こんな所歩きたくねえのは
分かってんだよ、糞真面目だもんな……」
「……別に……、そんな……、ただ、僕は……、正直言うと……、
何故ダーマに神に仕える職業に盗賊があるのか納得出来ないとは思う……」
「……」
時折アルベルトは真面目な顔をしてボケを噛ます時がある……。
「だから本音は又君が賊業に着くのは感心出来ない、この旅を有利に
熟す為だとは思うけど……、だけど他にももっと有利な職業は幾らでも
あった筈じゃないか!!」
「……だから俺に賊止めろってのかよっ!ええっ!?」
再び衝突しそうになる2人。ダウドは困りっぱなしだったが、アイシャは
もう何も言わず、黙って見ているしか出来なかった……。
「悪いけど、僕は一人でモンを探すよ、集合場所を此処の建物にしよう、
モンを見つけたらこの場所で又……」
「勝手にしろよ、行くぞ、ダウド、アイシャ……」
「あの、アル……、機嫌直して……、ね?」
「アイシャ、僕は別に機嫌が悪い訳じゃないよ、ただ、僕も独りに
なりたい時があるから、ごめんね、心配しないで……」
「アル……、気をつけて……」
「……」
心配するアイシャの言葉にそれ以上返事を返さず、アルベルトは
ジャミル達に背中を向けると薄暗い路地に向かって独り
歩いて行った。
「……やっぱり……ちゃんとごめんなさいしないと駄目モン……、
悪い事したら……、ジャミル達に嫌われちゃうの嫌モン……」
モンは急いで引き返すとさっきの小屋の方へと再び飛んで行く。
だがすぐその後ろから探しに来てくれたアルベルトが追いつく
寸前だった。もう少しで再会出来たのにモンは知らずにそれを
振り切ってしまった。
「ハア、モン……、一体何処へ行ってしまったんだよ、僕らこんなに
心配してるのに……」
「おい、兄ちゃんや、兄ちゃん、へへ、ちょっと美味い話があるんだけど、
どう?ちょっと遊んでいかない?」
家の中から小汚い初老の老人が顔を出し、アルベルトに手招きした。
だが、アルベルトは速攻でそれを断る。
「悪いですけど……、僕はそう言った事には一切関わりませんので、
失礼します……」
アルベルトはますます足を速める。もうさっさとこんな集落、直ぐに
さよならしたかった。だが、その為にはモンを探さないといけない。
気分はどんどん悪くなってきて最悪だった。……終いには目眩と
吐き気がして来た……。
「……ふう、……あ、ああっ!?」
「へへっ!ごめんよーっ!」
油断していてトロいアルベルトはぶつかって来た子供に財布を
スられる。一応用心はしていたが、考え事もし捲りだった為、
やはりお約束の結果に……。
「……お、追い掛けなくちゃ!冗談じゃないよっ!!」
我に返ったアルベルトは再び気力を取り戻し、財布をスッた子供を
追い掛け、どんどん集落の方へと自ら踏み込んで行く事になる……。
走りながら必死で子供を追い掛けるアルベルトは、ふと、ある
出来事を思い出していた。
(……そう言えば、元の世界でのジャミルとの出会いもこんな感じで……、
最初は最悪だったっけ……、姉さんから預かった大切な指輪をあいつに
スラれたんだ……、でも……)
そして、ジャミル達も又、モンを探して集落を歩き回っていた。そろそろ
日も暮れ掛け、辺りの風景はどんどん薄暗くなる。
「やっぱり……、アルと一緒に行った方が良かったんじゃないかなあ……」
「私もそう思うんだけど……、でも……」
「あいつが独りにさせろって言ってんだから仕方ねえっつんだよっ!
もうほっとけよ!」
心配するダウドとアイシャを余所に、ジャミルの方もまだ機嫌が
治まらなかった。
「ったくっ!腹黒めっ!人をこんなに心配させやがって!モンもモンだっ!
見つけたら今回はデコピン連打大量の刑だっ!!」
「……おんやあああ~?」
「な、何だよ……」
ついうっかり呟いたジャミルの言葉にダウドがニヤニヤしている。
……アイシャも何となく笑っている……。
「や~っぱりジャミルって変なツンデレだよねええ~、本当はアルが
心配な癖にさあ~、でも、隠せないんだから無駄だよお~、ンモ~、
素直になりなおよお~……、プッ……」
「……なっ!?」
「もう、本当よねえ~……」
「んだよ、アイシャまでっ!別に俺は心配なんかしてねーぞっ、
してねーったらしてねーっ!……ア、アルはトロイからだっ!!」
「……何、思いっきり心配してんじゃん……、アンタってマジでバカ……?」
「あはっ、サンディっ!出て来てくれたのね!有難う!」
「別にィ……、ただウダウダしてるから何か見ててムシャクシャすんのヨ!
バカっ!!」
「……バ、バカだとう!?このガングロっ!!」
「べーだっ!」
作品名:zoku勇者 ドラクエⅨ編11 カラコタ編・1 作家名:流れ者



