zoku勇者 ドラクエⅨ編12 カラコタ編・2
「あん?エルナ、さっきも言ったろう?おめえが悪いんだよ!俺に
逆らうからこういう事になるんだよ!見せしめだ、……泣いて
ギャーギャーうるせーからよ、ちょいと軽くブン殴って大人しく
させてやったまでだよ!が、がはははは!!う~ん、もう死んだかもな?
かわいそうでちゅねえ、おちびちゃーん!ばかなお姉ちゃんの所為で
ねえ~!」
「あ、兄者ああ~!どうしよう、ワチの……、ワチのせいだよううーー!!
ああーーんっ!!」
「……ちく……しょううう……」
「何て事を……、まるで人間の心を持っていないのか……?」
「ジャミル……、酷すぎるわよっ!!あんな小さな子に……!
絶対許せないっ!!」
「ああ……、けど、まだ間に合うかも知れねえ、ダウドっ!!」
「了解だよっ!あの子は絶対オイラが助けるっ!!」
極悪非道以下の糞豚男にジャミル達も怒りを爆発させた。ダウドも
何とかペケを助けようと試み、回復魔法の呪文の詠唱を始めるのだった……。
……エルナはシュウに抱きついて嗚咽する。脱走したのがばれ、自分が
罰を受けるのは覚悟で承知していた。だが、まだ何の抵抗も出来ない
幼いペケの方に見せしめに本当に暴力を振るうとは、豚男の残虐性は
シュウもエルナも地獄の毎日の中で充分分かっていたがまさか此処まで
感情と心の無い人間だとは本当に思わなかったのである……。
「大丈夫よ、エルナちゃん、ダウドがいるからね……、どうか信じて……」
「あっ、お、お姉さん……!ダウドお兄さん、ワチの怪我を治して
くれたみたいに……、お、お願いします!どうかペケを助けて!!」
再びダウドが頷いた。だが、詠唱を始めようとする物の……、ダウドに
戸惑いが浮かんだ。ペケはまだ身体が未発達の幼児である。あれだけ
容赦なく痛めつけられていたら……。本人の方も既にぐったりしている。
もしかしたらもう回復魔法を掛けても、ザオラルを掛けても……、既に
手遅れに近い状態かも知れなかった。
「……どうしたんだよ、ダウドっ!早くっ!」
「おい、またMP切れとか言うなよ……?頼むよ、俺のホイミじゃ、
あの状態じゃ絶対間に合わねえんだよ!!」
「ダウド、お願い……」
アルベルトとジャミルに急かされ、アイシャもダウドを見つめる。
ダウドは何とか気力を振り絞るが、もしも今、ベホマやザオリクが
使えていたら、助かる確率が確実に上がっていたかも知れない。
そう思うとやるせなさが募ってきた……。
「で、でも……、やるだけの事はやらなくちゃ!オイラ、僧侶として!!」
「……にー、ねー……、いた、いたよう……」
その時……、豚男に捕まっているペケが小さく言葉を発した。
まだ微かに息はしているのである。それは奇跡に近い状態かも
知れなかった……。
「ペケ……?お、お前……」
「兄者!ペケの声……、い、今、微かに聞こえたよ……!ま、まだ……」
エルナとシュウの心にほんの少し再び希望の明かりが灯り掛けた。
だが……。
「あ、そうはさせねえのねえー!!」
「ねえーっ!!」
「ねえーーっ!!」
「……て、てめーらっ!!」
だが、一番厄介な相手……、基地害バカ3兄弟がいたのである。
基地害トリオは再び歌舞伎ポーズを取ると、揃って並び、ペケを
人質にしている豚男の前に立ち、庇う様に援護し立ち塞がった。
……何かあれば豚男はすぐにペケに暴力をいつでも震える状態であり、
頭を掴んだまま笑っている……。
「ど、どうしよう、あいつらが妨害して……、あれじゃ回復魔法が
届いても……」
「糞基地兄弟かっ!!……まーた出やがったのかっ!懲りずにっ!!
こっちまでっ!!」
「もうーーっ!本当に何てしつこい人達なのよっ!!」
「因縁なのねえーっ!……お前らへ復習完了するまで何処へでも
追い掛けるのねえーーっ!!」
「イヨー!ポン!なのねえーーっ!!」
「宜しくお願いしまーす!なのねえーーっ!!」
あの、……復習の字、違うだろ……、復讐だよ……、と、知能の無い
バカなカシラにアルベルトは心で呆れるのであった。
「うるせーのねっ!糞パッキンめがあーーっ!!覚悟しろーーっ!!
なのねえーーっ!!」
「へへ、この先生共はね、俺の長年のワルダチなのさ、凄い研究家
なんだぜー?……おい、シュウ、無駄な抵抗しねえ方がいいぜ?
お前らは俺にはどうやったって逆らえないのさ、早くとっとと
そのモンスター搔っ攫ってこっちによこせ……、で、ないと……、
能無しチビの頭がスイカみたいにぐしゃっと本当に潰れるぞ……、
オラ、早くしろよ……」
「……やめろおおーーっ!!」
豚男は再びペケの頭を強く掴もうとする。このままあの豚男の手に
ペケが捕まっている状態では非常に危険だった。ジャミルの脳裏に
ある考えが浮かんだ……。
「……サンディ、頼む!お前の姿は奴らには見えない筈だ!
……お前しかいないんだよ!」
ジャミルは自分の心の中に隠れているサンディに呼び掛けた。
……白羽の矢が当たってしまったらしきサンディは渋々返事を
ジャミルに返した……。
(わ、分かったわヨ、もう、……。その代わり、ジャミ公、アンタ
後で蜂蜜入りカクテルジュース50杯分おごんなさいヨッ!?)
「何でもいいっ、時間がないんだ!」
「……おんやあ~?……のねえ~?」
……バカ兄弟のカシラは独り言を言っているかの様なジャミルを見て
不審に思う。そして、サンディは発光体のまま飛び出すと、ハンマーを
片手に急いで豚男の元へと飛んだ。
(全くもー!ジャミ公ってば妖精使い荒いんだからサっ!……あんなの
相手にすんの?……マジで……?)
ジャミルは奴らには姿の見えない筈のサンディに豚男の駆除を
頼んだのである。こっそりと、サンディに豚男を殴って貰って
気絶して貰う。そう、一かバチかの作戦を試みた。
「あ、ハエが仲良くトンデレラー!なのねー!古い」
「あ、ハエが仲良くシンデレラー!なのねー!古いんだよ!」
「な、なに!?きゃーーッ!?」
「……サンディっ!!」
「……あああーーっ!!」
……だが、子分Bが見えない筈のサンディに向かって液晶パネルの様な
物を翳すと、途端にサンディの姿が一瞬現れ、誰の目にも見える様に
なってしまい、直後にサンディは機械の中に閉じ込められてしまう……。
「良くやったのね!子分B!……この機械はぼくらが共同開発した
目に見えない、変なモンをキャッチする、ボケモンGOなのね!!」
「サンディ……、そんな……嘘だろ……?」
「ちょっとおおー!ジャミ公ーーっ!アンタこの落とし前どうつけて
くれんのよーーッ!!……責任とんなさいヨネーーっ!!キーキーキー!!」
液晶画面の中のサンディが喚く。ジャミルの作戦は失敗に終わり、
サンディまでもが人質に捕らわれてしまう事態に……。やはり
こいつらは舐めたらアカンの、非常識な極度の変態集団だった……。
一方で、幼いペケの命の灯火は消えかけ、間もなく力尽きようとしていた。
「……やっぱり俺達は……所詮哀れなドブネズミなんだよ、……誰も
助けちゃくれねえ、そうさ、この世に神なんかいるもんか……もし、
いるんだったら……」
作品名:zoku勇者 ドラクエⅨ編12 カラコタ編・2 作家名:流れ者



