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「う、羽李…」

「だぁー!うるせぇ!いいから俺に任せとけ!」


言葉の真意を問い質そうとしたが、鳥飼は声を荒げると問答無用に下着の中に手を突っ込んできた。
当然、その中にある逸物に直接手が触れられる。

あまりにも衝撃的な光景に一瞬呼吸すら忘れていた等々力だったが、外へと引き出されて扱かれる逸物の救出を必死に試みた。


「は、離せ羽李っ…なんでお前が…!」

「俺のせいで勃ったんだから、俺が責任とるのが筋だろ」

「しなくていい…!自分でっ…」

「じっとしてろって」


鳥飼の手のひらに握り込まれたそれは、与えられる刺激に着実に成長を遂げていて。薄い皮が優しく上下に擦られると、もどかしい快感が腹の中で燻っていた熱と相乗して、下腹部を切なく締め上げてきた。

己の逸物を、射精させるという明確な目的を持って鳥飼が触れている。
目を背けたくなるくらい恥ずかしいのに、逸らすことができなかった。


「くっ…ぅ、」

「…良かった。俺が触って萎えたりしなくて」


耳のすぐ横で安堵の吐息と共に微笑が落とされ、びくりと肩を竦める。
萎えるどころか硬度は増し、目で見てもそれとわかるほど張り詰めてきている。
唇が自然と薄く開き、行き場のない劣情を逃すように濡れた呼気が溢れてしまう。

そんなこちらに対し、鳥飼は竿を扱きつつ、更に反対の手でやわやわと双球を揉み込んできた。堪らず腰がびくびくと震える。


「んん!…待っ、」

「気持ち良いか?」

「い、良い!良いからもう、離してくれっ」

「遠慮するなよ」


断じて遠慮などではない。
この調子でいくと本当にいずれ達してしまう。苦楽を共にしてきた同志であり、かけがえのない親友である男にそんなはしたないことをさせるわけにはいかない。

だというのに、こちらの気も知らずに鳥飼は竿を扱く手の動きを徐々に大きくし、先端まで巻き込むようにしてくる。
鈴口からはじわりと透明な液が染み出し、上下に抜き上げてくる手のひらにより塗り広げられていた。


「ぁ……っん、…本当に、離せっ…」


ぴくぴくと内腿がひくつく。
下腹部はきゅう、と甘く収縮し、限界が近いことを自覚する。

しかし、鳥飼は先端を手のひらで包み込むようにしてくるくるとまわし、容赦なく強い刺激を与えてきた。
虐めるような行為とは裏腹に、彼の口から紡がれる声はどこか切実な色が滲んでいて。


「…そう言うなって。俺の手で…イってくれよ」


不意に相手の顔が見たくなって、等々力が顔を横に向けようとしたとき。
まるでそれを拒むかのようにかり首から先端を間断なく強く抜き上げられ、強制的に臨界点に追い上げられていく。
腰が跳ね、呼吸が上擦る。


「…う、ぁ、もうっ…」

「…可愛い、颯」

「ひ、やっ……んん!」


どくりと逸物が脈打ち、鳥飼の手に白濁が吐き出された。

…イってしまった。
羽李の手で。
…というか可愛いってなんだ。聞き間違いか。

信じがたい事実に、呆然としながら息を整える。
が、すぐにはっとしてベッドから跳ね起き、ティッシュを引っ掴むと鳥飼の手を全力で拭き上げた。


「ちょ、おい!もったいない!」

「正気か!洗え!今すぐ!」


まさかの抗議の声を正論でばっさり切り落とし、自身の下着やスラックスをいそいそとなおす。
そこで等々力の目に飛び込んできたのは、再びギンギンに臨戦態勢をとっている鳥飼の息子だった。

つい凝視していると、照れたように鳥飼がはにかんだ。


「すまん、お前見てたら…」

「……、」

これには何も言えなかった。
自分も鳥飼の自慰を見て反応してしまったのだから。
等々力は、恐る恐る相手を見遣った。

「…これは……俺が、した方が…いいのか…?」

「えっ。」

先程の鳥飼の言葉を借りるなら、俺のせいで勃ったのだから、俺が責任をとるのが筋なわけだが…

やらせてしまった手前、やはりここはやるしかないのかと半ば決意を固めかけていると、鳥飼はもの凄い勢いで首を横に振った。

「いやいやいやいや!何言ってんだよ。お前にそんなことさせられねえよ」

「……」


…なんだろう。
普通に考えたらそうなのだろうが、つい先程そう固辞した己を無理矢理丸め込んで、その手でイかせた男の台詞とは思えない。

納得できない。いや、決して鳥飼をイかせたいとかそういうわけではなく、単純にフェアではないことに納得できない。

自分の言動を完全に棚に上げて、挙げ句の果てには「ちょっとトイレ行ってくる」などと言いベッドから降りる鳥飼の背に、等々力は鼻から深く酸素を取り込んで声を張った。


「何故だ!」


唐突な大声に驚いた相手の肩が、大きく揺れて振り返った。


作品名:スタートライン 作家名:緋鴉