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高山 南寿
高山 南寿
novelistID. 71100
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もうひとつの、ぼくは明日……

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「私が高寿と付き合ってたのも知ってたし、別れてひどい状態になったのを見てて、なのに別れた理由は知らないから、高寿のことめちゃめちゃ怒ってるの」
「一旦帰る振りしないと、おさまらないと思った。それで図書館を出て、公園があったから、そこのベンチに座ったんだ」
「あそこ、高寿といっしょに座ったベンチやったから、高寿が帰って来たんやと思った」
「そうなんだ」
南山は何度か、うなづいた。
「私、高寿が同い年やったら、グーでパンチしたろかと思ってたのに、抱き着いてキスしちゃった。ごめんなさい」
愛美は軽く頭を下げた。
「いや、僕も止めるのができなくて」
「でも抱く手に力が入ってなかった?」
愛美は南山を覗き込んだ。
「いやそこは勘弁して、ごめんね」
南山は手のひらを顔の前に掲げて謝るポーズをしている。
「グーでパンチせんで良かった」
愛美は少し楽しくなっていることに気づいた。同じような過去を持って、誰にも秘密にしてきたことを話している。こんなことは初めてだ。そして相手は高寿そのもの。あかんあかん、この人は初対面の人と、自分に言い聞かせようとした。
「じゃ、僕の恋愛のこと話すね。僕は五歳のとき、宝ヶ池で溺れて、むこうの世界の愛美に助けられたんだ」
「えっ、五歳の時に宝ヶ池で溺れた? そんで女の人に助けられたん?」
私が靴紐を結んでもらった時のあの溺れた子が南山さん? 助かってたんや、私の横を駆け抜けて、池に飛び込んだのがむこうの世界の福寿愛美さん?
「そうなんだ。その後、十歳のときにも逢って、鍵のかかった箱を預けられた。そして二十歳のとき、むこうの世界の愛美さんに、通学電車で一目ぼれしましたって告白した」
「電車の中で?」
愛美はちょっと引いてる。
「いや、宝ヶ池駅のホームで告白して、また明日ねってなったんだ。でも僕にとっては最初の日、彼女にとっては最後の日だったんだ」
南山は少し言葉につまった。
「知らなかったけど、わかるわけないけど、なんの言葉もかけられなかった」
南山は少し涙声になっていた。愛美も神妙に聞いていた。
「三十日後に別れるとき、僕は話を聞いていたから、ちゃんと別れることができた。でも愛美は『また明日ね』って電車に乗っていったんだ」
愛美は思った。そうだあの日、高寿は振り返って大きく手を振った、大きく手を振ったんだ。愛美の瞳から涙が零れ落ちた。
「ごめん、これじゃ話できないね。気持ち抑えないと」
「私は二十九日間だった。高寿と会って二十九日で別れた。彼も三十日間しか会えないと言っていたけど、私と出会うのは二十九日目やったみたい。三十日目はどうしたのかわからない」
「そうか、一日すくなかったんだね。むこうの世界の高寿は寂しかったろうね。もう一日会いたかっただろうね」
「今となってはわからへん。聞くこともできひん。過去に手紙を遅れたらええのに」
「そんなことできるならお別れの手紙書くよ」
「そうやね、私も書きたい」
それから南山は毎日のようにデートしたこと、別の世界から来たと告白されたこと、十五年後に爆発事故から五歳の愛美を守る約束をしてることを話した。
愛美も五歳の時に、宝ヶ池の桟橋の前で出会ったこと、脱輪したのを助けてもらったこと、私たちも毎日のようにデートして、別の世界から来たと告白されたこと、十五年後にお祭りで、五歳の高寿を爆発から救うことを話した。
すっかり日も落ちて、どこかでご飯を食べようってなった。同じビルのカフェレストランに行った。少しビールを飲んだ。
「鍵のかかった箱はどうなったん?」
愛美が聞いた。
「あっ、それ言ってなかったね。別の世界から来たって言われた日、愛美が鍵をもってて開けたら、撮った覚えがない僕と愛美と両親の写真が入ってたんだ。しばらくして両親と会って写真を撮ったんだけど、それが十歳の僕が受け取ったものに入ってた」
「それって……それって、時間を超えてるってことやないの!?」
愛美は思わず声を上げた。南山もハッとしたように顔を上げる。
「時間を超える」二人とも声を揃えて同じことを言う。
「確かに……そうだね。あの写真は、間違いなく時間を超えて僕の元に届いた」
南山は人差し指をあごに当てている。
「だったら、手紙、送れるんちゃう!」
愛美はちょっと興奮していたが、ハタと気が付いた。
「で、どうやって」
愛美が聞く
「十五歳の高寿と愛美にそれぞれ鍵のついた箱に手紙をいれて渡す」
高寿が答える
「鍵はどう渡すん」
「えーと、だめか。鍵は二人に別のカギを渡して交換する」
「二人って出会うん?」
「えーっだめじゃん」
高寿が頭を抱える。
「だめやん」
愛美が思いついた。
「最後の日に愛美が乗る電車がわかっているから、そこに、向こうの高寿にいってもらって鍵交換。これええね」
愛美が南山を覗き込む。
「鍵交換とかおかしくない?」
南山が笑顔で言う。
愛美がなにか考え、続けた。
「手紙を渡しに行くミッションにしよ。封筒に二人への手紙をいれて、高寿に電車に乗ってもらって、手紙を渡して手紙を分ける。完璧やん」
「完璧だね」
南山も納得したようだ。
「あ」
愛美が驚いたように声を出す。
「え、どうかした?」
「今思い出したんやけど、高寿の持っていたルーズリーフ最後の日、手紙を渡しに行くこと書いてあった! きっとこれから私たちが書くことになるんや!」
愛美は不思議に思った。
「もう手紙は書いたことになってるんだ」
南山もそう思ったようだ。
「なんか不思議やね」
「二人が出会うのはサプライズが過ぎるかも知れないけど、思いを伝えたい」
「私も」
二人はLINE交換して後日会うことにした。

数日後、南山くんと会った。手紙を言付かった。
「読んでもいい?」
愛美はふざけて手紙を振ってる。
「まさか勘弁してよ。絶対読んじゃだめ。じゃ、君のを読んでもいい?」
高寿は不機嫌そうだ。
「いやや、絶対あかん」
愛美は首を横に振ってる。
「だろー、僕のも絶対読んじゃだめだから」
「うん、わかったー」
「ちょっと僕のこと軽く見てない?」
「見てない! 見てない!」
愛美は笑顔で応えた。
愛美は心の中で舌をペロッと出した。
「ひどいな、でも大切な役目おねがいするね。僕から愛美へ、君から高寿へ時間を超えて気持ちを伝える最後のチャンスなんだ」