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高山 南寿
高山 南寿
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もうひとつの、ぼくは明日……

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遡及



その五年後 二〇四〇年三月 愛美四十歳

「今日は寒いやんな? 高ちゃん」
南山愛美が洗面所で洗濯をしていると南山高寿が顔を洗いにきた。今は高ちゃんと呼ばれてる。
「そうだね、お祭りの日なのに」
高ちゃんは洗面所で顔を洗った。手に貯めた水に息を吹き掛けてショワショワショワと音を立てて顔を洗った。
「なにしてんの、吹いてる?」
愛美は聞き耳を立てた。
「冷たいときは口泡洗顔、こうすると少し冷たくない気がする」
高ちゃんは微笑んだ。
「え、なんか聞いたことある。誰からやろ?」
愛美はなんかモヤモヤした。なんでかわからんけど、忘れてることがある気がした。
でも思い出せなかった。
「高ちゃん、今日のお祭り、用事あるから先に出るで。参道前の広場で待ち合わせしょ」
愛美は洗濯物をカゴに移しながら言った。

愛美は待ち合わせの時間より早く参道前の広場に着いた。もうそこそこ人出が多くなってきている。
愛美は待ちながら考えていた。ここに来る途中、脱輪した軽自動車を見た。昔、脱輪して誰かに助けてもらったことがある? はっきりしないがそんな記憶がある。誰だろう。どんな風に助けてもらったんやろ。思い出せない。でも、とっても大事なことのような気がする。
考えながら広場で立ってると、そこに友紀が来た。でも年上の従姉の友紀じゃなく、写真で見たことがあるだけの十歳くらいの友紀だった。
えっ、若い友紀ちゃん? 似ている子かな? 若い友紀ちゃん? 見たことある。いつ? 記憶が瞬間にフラッシュバックした。もうひとつの記憶が蘇った。
目の前にいるのは五年前に会った、向こうの世界の友紀ちゃん。そう、向こうの世界!
「あなた、友紀ちゃんやね?」
愛美は声をかけた。十歳の友紀は驚き、立ち去ろうとする。
「待って、あなた向こうの世界の人よね。大事な話があるん、待って」
若い友紀はとまどっているようだった。
「私、こっちの世界の友紀ちゃんの従姉なんやで」
スマホで友紀とツーショットの写真を出してみせる。
「写真のあなたはちょっと大人になってるけど」
若い友紀は驚いている。
「あなたを見て思い出したん。あなたは五年後にまた、こちらの世界に遊びに来て私に会う。そのとき、たこ焼き屋で爆発事故が起こりそうになるの。たこ焼きの屋台のプロパンガスが漏れていて危ないことを私に教えてほしい。あなたからしたら五年後、私からしたら五年前。私とあなたの二人で爆発事故を防いだの。五年後にここで、そのことを私に教えて」
若い友紀は話を理解してくれた。愛美は、財布に入れたままになっていた五年くらい前の証明写真を友紀に渡して、これで顔わかると思う、お願いと言って手を固く握って別れた。
友紀と別れた後、愛美は涙をながしていた。高ちゃんが来て、歩いていく友紀を見つける。
「あの子は友紀さんだよな。そうかそうだよな」
「え、私は幼なじみだからわかるんやけど。あの子は向こうの世界の友紀さんよ。あっ、向こうの世界って言ってもわからへんか」
「いや、わかるよ。愛美は思い出したんだね。もう一つの記憶を」
「えっ、わかるの?」
「僕も少し前に思い出したんだよ。ちょっと待って」
高ちゃんはスマホをだして写真を見せる。
そこには枚方パークで愛美と高ちゃんと一緒に笑う林の写真。
「こんな写真撮ったっけ」
「覚えてないかな」
「この人に声かけられて一緒に逃げたような気がすんねけど」
「それは前の記憶だと思う。向こうの世界の高寿と枚方パーク行ったんじゃない?」
「えっ、そうか。ごめん。記憶が混乱してた。そういえば確かに林くんと一緒に撮ったわ」
愛美は記憶の中の前のことと、今の時間の流れのことの区別がつきだした。
「この写真の後ろのほうに」
高寿は写真をピンチアウトした。
写真の奥にカップルが写っている。それは向こうの世界の高寿と愛美だった。
「これどういうこと?」
愛美が尋ねた。
「これは向こうの世界の高寿と愛美だと思う。二人でこっちの世界に遊びに来てたんだね」
「あのときひらかたパークに一緒に居合わせたんや」
「僕はこの写真を見てもうひとつの記憶が蘇った。言ってなくてごめん。知らないほうがいいかと思って。君は向こうの世界の友紀ちゃんを見て思い出したんだね」
「うん、そしてわかったん」
「なにがわかった?」
「五年前、お祭りで爆発事故が起こるところだったん。たこ焼き屋のプロパンガスが漏れて。そのことを、あの若い友紀ちゃんが教えてくれた。それは、私が友紀ちゃんに、今さっき頼んだことやった。実際は友紀ちゃんの伝言で爆発をとめられたんやなくて、伝言しようとした友紀ちゃんが立ちくらみで倒れて、私たちが手間取った。呼び止められなかった五歳の高寿が、たこ焼き屋の前でこけてガス漏れに気づいた。それで爆発を防げたと思う。幼い高寿を呼び止めてたら爆発事故が起こったと思う」
愛美が考えを口にした。
「愛美が幼い高寿を呼び止めたら、ガス漏れに誰も気づかず、事故が防げなかった。その結果、向こうの世界とこっちの世界のカップルが二組できた?」
高ちゃんも推論した。
「そうかもしれへん。私が今日、歴史を変えることをしてしもうた」
「そういうことか」
「これでよかったん?」
愛美は高ちゃんの腕を掴んだ。
「これでよかったんだよ。もう起こったことだし。ただ、記憶が戻ったから、これからはちょっとつらいと思う」
「私、向こうの世界の高寿と付き合ってたんや」
「つらい話だね。僕も同じだよ。でも大丈夫、僕たちには長い歴史がある。固い絆がある。愛しているよ。君とずっと一緒にいたい」
愛美はうなずいて、南山の肩にもたれた。そして、思った。
高寿、ごめん。私、やっぱりそばにいてくれる人を選んだんや。爆発を止めて皆を救いたかった。でもそれ以上にそばにいてくれる高ちゃんを選んだんや。


高寿と福寿 二十年遡った二〇二〇年三月 福寿愛美二十歳

福寿愛美は、向こうの世界から来た福寿愛美は宝ヶ池の駅で、同じく向こうの世界から来た南山高寿と知り合って、幾度か行動を共にした。今日は、京都を散策して、食事をしてから京都府立植物園まで来た。
夜の植物園、眩く輝く電球が連なってその樹形を夜空に描いている。何組ものカップルが電飾に見とれている。まだ少し距離感ある福寿愛美と南山高寿はまわりを気にして立っている。
「こっちの世界に遊びに来て、同じ世界の人に出会うとは思わなかった。好きになるとは思わなかった。愛美さん、大好きです。僕と付き合ってください」
南山高寿は、福寿愛美に告白した。
「五歳のとき、こっちで出会った女の子を好きになったって、言ってたけど。その子が現れたらどうするの?」
福寿愛美がいたずらっぽく聞いた。
「五歳のとき出会った子は好きだったけど、今は君が好きなんだ」
南山高寿は真剣な顔で返事した。
「そう、だったらいいか。その子に乗り換える必要はないし」
福寿愛美は意味深なことを言いながらも笑顔を見せてる。
「えっ、よくわからない」
南山高寿は困惑しているようだった。
「私も、五歳のとき、こっちの世界に遊びに来たことがあるの。そのとき、たこ焼きの屋台の前で、こけた子と遊んだの」
福寿愛美が昔のことを話し出す。