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高山 南寿
高山 南寿
novelistID. 71100
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もうひとつの、ぼくは明日……

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「え、たこ焼きの屋台の前って……」
南山高寿の目が見開いている。
「そう、高寿くん。お祭りで一緒に遊んだのは私なの。あなたが、五歳のとき出会って好きになった子は、私だから。私も、あのときからずっとあなたのことが好き」
福寿愛美は笑顔で言った。
「えっ、君だったのか」
「そう、私だよ。私」
福寿愛美は目を細めた。
「嬉しいよ」
南山高寿は福寿愛美の手を握った。
福寿愛美は南山高寿と腕を組んで笑顔を向けた。
高寿も微笑んだ。
「こっちの世界はいいことばかりだ。また、一緒に遊びに来たいね」
高寿は愛美を見つめながら言った。
「うん」
愛美は笑顔で答えた。
電飾を見るカップルに距離があるカップルはいなくなった。


出会い 二〇〇五年三月 愛美五歳

三月の初旬の洛北はまだ寒い。
晴れわたった空は明るいが、日差しに、まだ力がない。
ただ宝ヶ池を輝かせるには十分だった。
五歳の愛美は両親と遊びに来ていた。
両親が目を離した隙に一人で宝ヶ池に吸い寄せられ、桟橋のほうに歩いている。
その桟橋では水面に何かを見つけたのか、同い年くらいの男の子が中腰で池をのぞき込んでいる。
その男の子は五歳の南山だった。
愛美の片方の靴の紐は、ほどけて歩くたびにピュンと跳ねている。
カップルが桟橋の前のベンチで話し込んでいる。
愛美には気付いていない。
愛美はその前を通り過ぎて、桟橋にさしかかった。
そこで愛美は靴紐を踏んでころんだ。
「きゃ」
愛美が短い悲鳴をあげた。
幼い南山は池の上の何かを棒でつついていた。
悲鳴を聞いて、棒を捨てて、愛美の腕を掴んで助けた。
愛美は桟橋から半身が出て落ちそうだった。
「大丈夫?」
高寿が聞いた。
「うん大丈夫」
愛美は少し涙目で言う。
幼い南山はひざまずいて、愛美の靴紐を結すぶ。靴紐は縦に蝶々結びになってる。
「ごめん、うまく結べないや」
幼い南山は頭を掻いてる。
「ありがと」
愛美は笑顔で言う。
ベンチのカップルが気づいて、そばに来ていた。
「大丈夫?」
女のほうが声をかける。
ふたりの子供を覗き込むように見るカップル。
女が「あっ」と言う。口が空いてる。男も驚いているようだ。
二人は顔を見合わせ、うなずいた。そしてともにほほ笑む。
カップルは、向こうの世界から十五年ぶりに、こちらの世界に遊びに来た、共に三十五歳の福寿愛美と南山高寿だった。
福寿愛美が幼い二人に話しかける。
「ここはあぶないから、あっちで遊ぼうね」
「うん」
二人の子供が返事した。
「君たち出会ったんだね。大人になったら、私たちみたいに幸せになるよ」
福寿愛美が言った。
「いやや、おばさん変や」
幼い愛美が照れてる。
幼い南山はもっと照れてる。
おばさんと言われて福寿愛美は少しくやしそうな顔をしている。南山高寿のほうは静かに笑っている。
幼い二人は手をつないで歩き出した。
そして、振り返った
「バイバイ」と幼い二人が言う。
「バイバイ」
福寿たちも手を振った。
寄り添ってる大人のカップルは、幼い愛美には眩しかった。

幼い二人を見送りながら、向こうの世界の二人は顔を見合わせた。
「私、もうひとつの記憶がはっきり蘇った」
福寿が言った。
「僕も、ぼんやり何か忘れてたように思ってたことが、はっきりした」
「私たち、それぞれあの子たちと関わっていたんだね」
「そうだね」
福寿は幼い二人を見ながら思った。
幼い高寿、君と私、それぞれの道を歩いてゆくんだね。これが本当に最後なんだね。さようなら。
高寿が愛美の腰に手を回してそっと引き寄せた。
愛美は高寿を見つめてから、肩にもたれ掛かった。
大人の二人は寄り添ったまま、幼い二人を見送った。幼い二人はつないだ手を大きく振りながら歩いていった。