二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

天空天河 十

INDEX|6ページ/9ページ|

次のページ前のページ
 

 以前、靖王に移った『魔』を取り去る為に、長蘇の『魔』を動かした。
 長蘇は酷い苦しみようだったが、長蘇自身が止めようとはしなかった。

 今度はあの時の様に、長蘇が苦しまぬよう、飛流は、注意を払い、少しずつ少しずつ注ぎ、動かせていった。

 注がれる飛流の『魔』力は、長蘇を思いやる力で、長蘇の身体を満たす様に、優しく潤していく。
 飛流の心が伝わる波動は、長蘇の心の奥深くをそっと撫でていくのだ。

 それは長蘇を慕う気持ち、身体の弱さを気遣う気持ち、主や家族といったものを越えた情愛を持っていた。
 長蘇の心も身体も、温かで非常に心地よいものに包まれた。


 飛流は長い時間を掛けて、長蘇に『魔』力を注入した。
 その時間は二刻近くに及んだ。

 靖王府では、靖王と共に行く精鋭部隊の出立で忙しなく、書房に来る者は誰もいない。
 

 飛流が握る長蘇の指がぴくりと動く。

 それでも飛流は力を途切れさせずに、『魔』を注ぎ込む。

 やがて長蘇の眼が開き、飛流を見て柔らかに微笑んだ。

「蘇哥哥、苦しい?。」
 飛流がそう聞くと、



   平気だ


と、長蘇の声にならない口が動いた。


 それからまた暫く、飛流は自分の『魔』力を、長蘇に注いでいった。

 長蘇の手に力が入り、飛流の手を握れる様になって、飛流は『魔』力を流すのを止めた。

 長蘇は手足を動かせて、身体を慣らせていたが、寝返りを打ち、ゆっくりと起き上がった。

「ふぅ、、、。」
 大きく深呼吸をして、にっこりと飛流を見た。

 長蘇が持っていた『気色悪い魔』が消えて、昏睡していた長蘇が、自分の『魔』力で染まり、動けるようになり、飛流は嬉しくて仕方がない。
 寝台の下に跪く飛流の頭を、長蘇はぐしぐしと撫でてやった。少々力が籠もって雑だが、その力強さが長蘇にも飛流にも嬉しかった。

「さて飛流、もう少し助けてもらおうか。」
「云!。」

「前に靖王の『魔』を取り除いた時の様に、私の中にまた『魔』の容れ物を作って欲しいのだ。」
「云。」

「飛流、頼むぞ。」
「云。」

 飛流は寝台に座っている長蘇の後ろにまわり、長蘇の背中に両手を当てた。

「蘇哥哥、いい?。」
「いいとも。」

 飛流はこの前よりも、ゆっくりと長蘇の『魔』を動かしていた。
 多少の違和感はあるものの、飛流の『魔』は、長蘇に馴染みが良く、あの時の様な痛みや辛さは感じない。
 その後数日苦しんだ、目眩や船酔いの兆しの様なものも無い。

 長蘇が苦しむ事が無いように、飛流は始め、長蘇の中の『魔』を恐る恐ると動かしていたが、次第に要領を掴み、大胆に動かしていく。
 それでも長蘇が苦しむ事は無かった。
『魔』力の馴染みの良さは、元々、飛流の『魔』の力によって、今の長蘇の身体を変えられたせいだろうか。
 自然の事の様に、長蘇の身体は、飛流の『魔』力を受け入れていた。

 長蘇の身体の隅々に力が漲り、身体の芯に余力を貯めて置ける『もの』を感じるようになった。

 長蘇の身体は軽くなり、今までの病気がちの臥せった状態は、嘘のように綺麗に消えていた。

 林殊以来の健康体といって良い。

 飛流の手が、長蘇の背中から離れた。

「終わったか。」
「云。」

 飛流は長蘇の前に回り、顔をのぞき込んで、少し驚いた後に、満面の笑顔になった。
 その顔を見て、長蘇が笑う。

「飛流、嬉しいのか?。」
「云!。」

 元気に飛流が頷いた。
 そっと飛流が、長蘇の頬を撫でる。
 相変わらず肌は白いが、生気のない玉の様な無機質さは無くなっている。

──私が元気になり、飛流が喜んでいるのだ。──
 長蘇は笑って、飛流の頬を軽く抓った。
 以前は良く、飛流の頬を軽く抓っていた。つい摘んでみたくなる頬で、ふっくらと可愛らしかった。
 以前の飛流のふっくらした頬は、飛流の成長と共に、消えかけているが、飛流は飛流なのだ。
 
 飛流は笑っていた。
 飛流は長蘇に、今迄に無い、力強さを感じた。

 飛流の『魔』力により、以前よりも力が満たされている、、、といっても、か細い人間の身体には変わりはない。
 長蘇の体力にも限界はあるだろうが。

 長蘇が寝台から立ち上がろうとした。
 飛流は察して、長蘇を助けようとする。

 立ち上がる事は、以前の様な、痛みや力の入らなさ、振らつきのような『苦』は無いが、折角、飛流が助けてくれるのだ。
 長蘇は飛流に甘えようと思った。

 飛流もまた、長蘇の役立ったのが嬉しくて、機嫌が良い。

 長蘇が立ち上がれば、まだ飛流は、長蘇の身長には追いつけない。
──まだまだ子供だ。──
 身長は長蘇よりも幾らか低く、顔もあどけなさが残っている。
 その事は、長蘇には何となく、ほっとできる。


──さて、進まねば。──

 誰もいなくなった空の寝台を見た。

──、、、ぁぁ、、このままでは戦英に見つかり、景琰に報告されてしまうな。──

 ふむ、と考え、、。

 長蘇は、肩から胸に落ちている自分の髪から、一本の髪の毛を抜いた。

「???。」
 飛流が不審げに長蘇を見ていた。

「ふふふ、、。」
 長蘇はその一本の髪を布団に落とすと、何と髪の毛は、寝台に横たわる長蘇の姿になった。
「!!!!!!。」
 飛流は目を丸くして、髪の毛長蘇と、隣に立っている長蘇を代わる代わる見ていた。

 「、、、、、。」
 飛流は怖々と、真剣に寝台の上の長蘇の頬を突ついた。

「アハ、、。」
 長蘇は笑い掛けて、急いで口に手を当てる。

──おっと、、外の見張りに見つかってしまう。──

 飛流は自分の髪を抜こうとしていた。

「クスクス、飛流、ここではやるなよ。」
 飛流にそっと言った。
 途端に膨れ面になる飛流。

──さて、私はすべき事がある。
 早々にここを去ろう。──

「飛流。」
 長蘇が静かに名を呼ぶと、飛流は頷き、長蘇の腕をしっかり抱えた。

 そして掻き消えるように、二人の姿は、書房から消えた。








 ふい、と靖王府の書房から消えた長蘇と飛流は、蘇宅の書房へ現れた。

 飛流は早速、一本髪を抜き、髪の毛飛流を作り上げた。
「あははは。」
 長蘇を見る飛流が二人。
 そっくり同じで、見分けはつかない。
 笑う長蘇に、飛流は得意満面な顔を見せる。
 見ただけで、長蘇がしたのと同じ様な事が出来る、飛流の成長を感じた。

 飛流が髪の毛の飛流に、指で突(つ)ついてちょっかいを出した。
 突つかれた飛流も、飛流を突つき返し、飛流二人で突つき合いをしている。

「ぷっ、、、二人で何を、、、。」
 何だか可愛らしくて、笑ってしまう長蘇。
 突つき合いも本気になりかけ、激しくなった。

「こらこらこら飛流、、、同じ姿で喧嘩をするな。」
 長蘇に言われて、きょとんと二人、長蘇を見る。

「あははは、、。
 しかし、そんな芸が出来るようになったとは。
 髪の毛が無くならない程度にしておけよ。」

「?、無く、、、なる?。」
 飛流は、分かった様な分からない様な顔をして、自分の髪を摘んで見ていた。

「ふふふ。」


「さて飛流。
 景琰を守りに行ってくれ。」
「云。」
作品名:天空天河 十 作家名:古槍ノ標