zoku勇者 ドラクエⅨ編16 悲しきリブドール・3
振り返る。ダウドも久しぶりのモンも、いきなり何だとキツネに
包まれた様な顔をしていたが……。
「……そうか、あの子はマキナさんじゃなかったんだね、どうりで……」
「ほ、本人は、も、もうとっくにいなくて……、死んだマキナさんの
意思を次いだ人形があーっ、あ、ああーーっ、う、動いてるって……、
それ、本当……?あう~……」
「モン……」
話を聞き、一番複雑そうな表情をしていたのは、今回、いつもは
アホアホのモンだった。モンはマキナを嫌っていたのだから。
ジャミルから話を聞いたモンは暫くの間、ずっと押し黙っていた……。
「あの時、マキナ……、マウリヤが俺を見て怒り出したのも、
マキナがいなくなった時の事を思い出したんだろうな、
……俺がマキナを連れて行っちまうんじゃねえかと錯覚して
怯えたんだ……」
「モン……」
ジャミルもモンの頭をぐじゃぐじゃ撫でながら複雑そうな顔をする。
「でも、事実上マキナお嬢さんはまだジョーブツしてない筈だよネ!?
たま~に、……クラ~い顔していきなり後ろにぬっと立って出て来た
コトあったし」
「……ひえええーーっ!?」
「ダウド……、一番肝心な処だけど……、マウリヤの身体に命が
宿った原因が、……女神の果実だとしたら、それは……」
「……」
アルベルトは其処まで行って押し黙る。ジャミルもダウドも……。
「だ、だってしょーがないっしょ!アタシ達は元々その為に
旅してるんだからサ!」
サンディも言ってバツが悪そうな顔をすると、一旦ジャミルの中に
引っ込む。もしも、女神の果実がマウリヤの中から消えたら、その時
マウリヤは……。ジャミルも悩み出す。……あんなにマキナと友達に
なりたいと屋敷まで押し掛け頑張っていたアイシャにどうやって
真実を伝えたらいいのか……。
「……ジャミル……、モン……」
「あ、だ、大丈夫さ……、今はとにかく2人の救出が先だ、動かなくちゃな、
たく、アイシャの野郎、無事連れ帰ったら又デコピンの刑だっ!!」
暗い思考を振り切る様にジャミルが走り出し、アルベルト達もその後を
追った。例え結末がどうなろうとも……。今はアイシャ達を早く助けたい、
ジャミルはその事だけを只管頭に叩き込んだ……。
そして、アイシャとマウリヤ側。
「マキナさん、落ち着いた……?」
「ええ、落ち着いたから……、そろそろ放して、……暑い……」
「あ、ご免なさい!」
アイシャは慌ててマウリヤから離れる。しかし、マウリヤの顔は……、
真っ赤だった。
(やっぱり変、いえ、今日は私が変……、でも、やっぱり変なのは
あの子……、いい匂い、優しい匂い、甘くてふわふわの……、昔、
マキナがベッドで私に見せてくれた……、シャボン玉の香り……)
「ねえ、私……、謝らなくちゃ……」
「えっ?」
「あなたのお友だち……、変な顔って言っちゃった、でも、私、
今まで誰かにごめんなさいを言おうなんて……、思った事なかった……、
初めてなの、こんな気持ち……、もう許して貰えないわよね……」
「マキナさん、有り難う……」
「え、ええ……?」
アイシャは膝に顔を埋めたマウリヤを再び抱擁。側に引き寄せる。
マウリヤをまた優しいシャボンの香りが包んだ。
「大丈夫、モンちゃんは優しい子よ、きっとマキナさんの気持ちも
分かってくれる筈よ、ね?」
「……やっぱりあなたって変よ、変な子だわ……」
「だから変でいいですっ!さ、今度こそ戻りましょう!」
アイシャがマウリヤに手を差し出す。マウリヤは戸惑いながらも
その差し出された手を握ろうとした、その時……。
……ゥゥ、……ズォォォォォーーー!!
「……な、何……、今の声……」
「……」
アイシャはリレミトを唱えようとしたが……、突如洞窟内に
響いて来た謎の大声に手が止る。そして、直後洞窟内が
揺れ出すのだった……。
「……地震?嫌だわ、こんな処でっ!!」
「……お相撲さんか誰かが外から此処を揺らしているのかしら……」
「もうっ!違いますっ!と、とにかく外へっ!あ、ああーーっ!!」
だが、其処に震源の主らしき怪物が姿を現す……。顔にドクロが付いた
巨大な怪物蜘蛛……。妖毒虫ズオー……、本来のこの洞窟の主、……。
普段は洞窟の奥に潜んでいる筈が……。アイシャ達の前に自ら動いて
姿を現したのだった……。
「まあ、……大きなクモさん……、おいで……」
「マキナさんっ!……近寄ったら駄目っ!!」
ボケのマウリヤは恐れる事無く、ズオーに近寄ろうとする。
アイシャはマウリヤを急いで庇うとズオーに向け、ヒャドを
放出するのだが……。
「ズオオオオオーー!!」
「あ、あんまり効いてない……、補助魔法も兼用しないと、
これじゃ……、でも、どうしたらいいの……、両方使ってたら……」
「ねえ、早く逃げなさいよ、危ないわよ……?私の事なんか
もうほおっておいて……」
「……バカっ!!」
「バ、バカ……?」
アイシャはマウリヤに向け怒鳴る。しかし、その瞳にはまた涙が滲んでいた。
「バカバカバカっ!どうしてそんな事言うのっ!私は何があっても
マキナさんを守るって、絶対……、そう決めたんだから!あなたに
友達って認められなくても……、私はマキナさんの事、大切な
お友達だって思ってるのっ!!」
「……あ、ああ……」
アイシャは目の前の敵に向かってスカラと交互にありったけの
攻撃魔法を放出。だが、ズオーには全く歯が立たず、あっという間に
等々MPも尽きてしまうのだった。
「どうしよう、どうしたらいいの……、やっぱり私だけじゃ……、
皆がいてくれないと……」
「……ああ、危ないっ!!」
気弱になってしまったアイシャに……、更に追い打ちを掛ける様に
ズオーが口から蜘蛛糸を放出。……アイシャは拘束され身動きが
取れなくなってしまう……。
「く、うう……、マキナさん、……にげ……て……」
「ズゥオオオオオーーー!!」
ズオーは恐ろしい大声を上げ、アイシャを捕まえたままその場から
逃走する。捕まえたアイシャを餌にする為、洞窟の最深部の住処へと
姿を消したのである。
「バカなのはあなたじゃない……、だから言ったのよ、……私なんかの
為に……、早く逃げていれば……」
アイシャと又引き離されてしまい、残されたマウリヤは……、どうする事も
出来ず、只独りその場に崩れ落ちた……。
「……は、はっ!マキナはっ!?」
「……」
抱き合ったまま気絶していた性悪盗賊コンビ。漸く我に返る。そして、
マキナが破壊した無残に壊された鉄格子の残骸も唖然として眺めていた。
「アニキ、これからどうします?アイツ、バケモンでしたぜ……」
「これ以上関わるのは危険だな……、親もいねえのも分かったし……」
賊共は頷き合う。このままマキナを人質に取った処で、身代金を
請求出来る身内はいない。……と、くればもうマキナは捨てて、
次のターゲットを探すしか無かった。だが。
「……?アニキ、入り口の方が何やら騒がしいです……」
「何だ、……もしかしてサツかっ!?」
「いえ、もっと若え……ガキ共の様ですが……、ちょっと見て来やす!」
作品名:zoku勇者 ドラクエⅨ編16 悲しきリブドール・3 作家名:流れ者



