zoku勇者 ドラクエⅨ編16 悲しきリブドール・3
すかさずダウドが用意していたらしきキャンディーをモンの口に
押し込むと、モンはどうにか大人しくなった。
「……久しぶりのキャンディー、美味しいモン!」
ダウドの機転でどうにかその場は何とかなったが、実は謝る気ねえだろ、
何処をどうやったらあんな風に間違えんだよとジャミルは半目。
「マキナさん、モンは僕らの大切な友達です、もし本当に気持ちが
あるなら……、ちゃんと謝ってあげて下さい、お願いします……」
「シャア~……」
「ええ、分かってるわ、謝りたかったのは本当なの、モンさん……、
信じて……」
アルベルトの言葉にマウリヤは頷く。そして、もう一度モンに向かって
小さく頭を下げた。
「許して貰えないかも知れないけど……、本当にごめんなさい……」
「モ、モン、もういいモン、分かったモン、モン、もう怒ってないモン……」
「ありがとう……、何だか不思議な気持ちだわ……」
「……」
モンは顔を赤くしながら再びダウドの頭の上、定位置に飛び乗るの
だった。マウリヤは本当にモンに心から謝りたかったのだと言う
気持ちは漸くジャミルにも伝わる。
「さて、マキナ、アイシャに何が遭ったんだ?話してくれ!」
「ええ、いきなり大きなクモの怪物さんが現れて……、あの子は連れて
行かれてしまったの、多分、この洞窟の奥に住処があるかと……」
「……ジャミルっ!!」
「大変だよお!急がないと!!」
「モンっ!」
(これはま~たタイヘンだわあ~……、今度はクモのバケモノかあ~……、
ウ~ン、どっちみち、アタシは応援してるしか出来ないんですケド……)
しかし、このままマウリヤをこれ以上巻き込む訳にはいかず……、
男性陣はマウリヤの方を見る。マウリヤは又酷く落ち込んで
いる様子……。
「私の所為なの、あの子が私を庇って……、私、どうしたら……」
「いや、アンタの所為じゃない、そんな顔しないでくれや……」
「えっ……?」
ジャミルはマウリヤに向かって言葉を続ける。マウリヤもジャミルの
方を見た。
「アイツの性分なんだよ、自分の事よりも何よりも、第一に困ってる
奴を助けたい、お節介ですぐピーピー泣くわ、本当に我儘でさ……、
アンタを庇ったのだって、決してアイツは後悔なんかしてない筈さ……」
そして、マウリヤも思い出すのである。屋敷で彼女が本気で自分に
突っかかってきた事。真剣にぶつかって来てくれた事。心を込めて
作ってくれた美味しい(破壊)料理。思い出す度、マウリヤの胸が
温かくなるのだった。
(……やっぱり変……、あの子って本当に変な子だわ……、ふふ……)
「ジャミル、マキナ……どうするモン?」
「そ、それなんだけど……、まいったな……」
「私の事なら心配しないで、……私も何かお手伝いします、
……よいしょ!」
「うわ!」
そう言うなり、マウリヤは近くにあった置き石を持ち上げて力を込め、
石壁にぶつける。……石は粉々に砕け散った……。
「私は如何?」
「……わ、分かったっ!けど、余り無理しないでくれよ!おい、お前らも
マキナのフォローの方、頼むぞ!!」
「あ、ああ……、大丈夫だよ……、何とか……、もう時間もないしね……、
急がないとアイシャが危ない!!」
「はあ、何か……、マキナさんて……、強いんだねえ……」
……鉄格子を曲げて壊したり、さっきのモンスターとのバトルを
見る限り……。
「私、昔テレビでこういうのも見たの、……ダッダーン!ぼよよん
ぼよよん!!……て、言うの……」
「……いいからっ!先行くぞっ!!」
またボケ始めたマウリヤを連れ、一行は更に洞窟の奥へと進む。
だが、例えボケたフリをしていても、マウリヤも一刻も早く
アイシャを救いたいと言う気持ちは同じだった。そして、
道中には又別のモンスターが現れ、一行の行く手を妨害して来る。
今度は祈祷師&メーダロードの大群だった。
「邪魔すんなっ!強行突破っ!!」
「ジャミル、目的まで回復魔法のMPは控えないと!!」
「……はあ~い」
ダウドが片手を上げる。今回はアイシャが捕まっている為、
攻撃魔法担当枠が離脱している状態なので、主に攻撃の中心は
ジャミルとアルベルトだけで行なわなければならない……。
前作にもこんな事があったが、恐らく今回は最後までアイシャの
戦闘復帰は望める状態でないのをジャミル達は感じていた。
「此処は任せて……、私がやってみるわ……」
「けど、向こうは魔法使うんだぞっ!流石に無理だっ!!」
「大丈夫……」
ジャミルが止めようとするが、マウリヤは聞かず正拳突きの構えを取る。
そしてそのまま祈祷師の持っていた杖にパンチをお見舞い。祈祷師の杖は
粉々に……。続いてメーダロードの目玉にも蹴りを入れた。
「……すんげええ~……」
「テレビで見た映画の真似をしてみただけ……」
「それでも凄いよおお~……」
(ね、ヘタレ解雇して、ヘンテコお嬢さんに入って貰えば?って、
ジョーダンだヨっ!ちょ、アンタそんなへんな顔しないでヨっ!!)
「ううう~……」
「マキナさんばかりに頼る訳にはいかないよ!」
「ああ、俺らもやらなくちゃな、格好つかねえよ!!」
「では、お願いっ!」
「うわわわ!あ、危ねえなあっ!!」
マウリヤはメーダロードを一体持ち上げるとジャミル達の方へと
ぶん投げる。ジャミルは慌てるが、こっちに飛んで来たメーダロードを
破邪の剣で真っ二つに切り裂くのだった。……全く、何してくるかマジで
分かんねえお嬢さんだなあと、ジャミルは汗汗。
「お見事!……です」
「はあ……」
マウリヤは剣に刺さっているメーダロードを見て拍手する。
かなり喜んでいる。やはりどっかずれてんだよなあ~……と、
ジャミ公はマウリヤに不思議な感覚を覚えるが、彼女が本当は
生き人形だと言う事も思い出し……。
(……もしも……、この先……、女神の果実が……)
女神の果実を取り戻す事、……それは即ちマウリヤの命を奪う事に繋がる。
マウリヤの身体に宿った果実が女神の果実でなければ……。アイシャを
悲しませたくない一心でジャミルはそう奇跡を願うしか無かった……。
「此処だわ、感じる……、この奥にあの子がいるわ……」
ジャミル達は漸く洞窟の最深部らしき場所まで辿り着いた。
マウリヤは立ち止まるとぎゅっと目を瞑った。あの子と言うのは
間違いなくアイシャの事。彼女がそう言ってくれるからにはまだ
アイシャは無事である事が伺え、ジャミル達も安心するが……。
「マキナ、アイシャは無事なんだな?分かるのか?」
「ええ、何となくだけど……、でも、急がないと……」
「そんな事まで感じるなんて、マキナさんて本当に凄いんだねえ……」
「ええ、おまけに凄い臭いがするわ、これはまるでガスの様な……、
危険な臭い……、何なのかしら、頭がクラクラして来たわ……」
「……」
アルベルトとダウドは揃ってジャミルとモンの方を見る。危険な臭いを
排出するのはこのコンビしかいないからである。
「……何だよっ!お前らはよっ!揃ってっ!!」
「モンっ!!」
「……どうでもいいのよ、そんな事は、さあ、早く……」
作品名:zoku勇者 ドラクエⅨ編16 悲しきリブドール・3 作家名:流れ者



