クリスマスの齟齬
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ネツァワルピリは、されるがままになっていた。
お仕置き宣言をされた直後、ガウェインに口付けられたのだ。驚きもしたが、彼の舌の動きに応えようとして、思いきり頬をつねられた。
「勝手に動くなと言ったはずだ」
「す、すまぬ…」
…なるほど。
動くな、言うことを聞け、とはそういうことか。
容赦なく引っ張られた頬をすりすりとさすって、求められたものの意味を理解する。
つまり好き勝手させろということだ。
彼の心に与えてしまった傷や痛みを思えば、こんなものよりもっと物理的に制裁を与えて然るべきなのに。
優しくないふりをする愛しい男に、敵わないなと小さく笑みを溢す。
「今にその余裕、引っ剥がしてやるからな」
挑むようにそう宣言されるなり、ガウェインにコートはもちろん、上着やシャツをすべて奪われ、ベルトまで外された。
随分性急だと思いつつ行動を見守っていると、椅子に座らされて、そのベルトが手首に巻きつけられていって、さすがにぎくりとする。
「ガ、ガウェイン殿…、これは、ちょっと…」
「黙れ。こうでもしないと調子の良い貴様のことだ、絶対途中で主導権を握ろうとするだろう」
何度も巻きなおして、少しの遊びもないほどの締め付け具合を再現すると金具をしっかり通していくガウェイン。
既にベルトは皮膚に食い込んでいて、そこそこ痛い。試しに少し動かしてみるが、左右の肘を僅かに広げることすら難しい。
この徹底ぶりから、どれだけ信用がないかが窺い知れるというものだ。
なんだか不安しかないが、そんな中ガウェインも上着を脱ぎ落とし、上半身を晒していく。
白い肌に、均等に薄くついた綺麗な筋肉。薄く色づいた胸の飾りについ目が吸い寄せられるが、それよりも。
「…お主、少し……痩せたか?」
「……。…気のせいだろ」
無表情にガウェインはそう言うが、気のせいなどではない。
しかし彼が否定をするということは、おそらく今回の件で食事に支障をきたすほどのダメージを負っていたということなのだろう。
…本当に、己の浅慮にはらわたが煮え繰り返る。
「…余計なことを考えるな。」
黒い怒りがぶり返しかけたとき、彼の手が頭に伸ばされて髪に指先が埋まり、くしゃりと軽く握られた。
こつん、と額に額がぶつかってきて、至近距離で勝気な眼差しが挑戦的に微笑む。
「今日は、俺が貴様を滅茶苦茶にしてやる」
「っ、」
改めて唇が重ねられ、ガウェインの舌が入り込んできた。
こちらの舌に絡めて、口腔内を物色するように犯してくる。慣れない動きは辿々しくて、いっそ絡め取って引き摺り込み、思いきり扱いてやりたくなってくるが、ぐっと堪える。
舌の周囲をうろうろしているので、何がしたいのかと様子を見ていたが、どうやら吸いたいらしいことを察して。
少しだけ舌を突き出してやると、ガウェインははっとしたように、ちう、と吸い付いてきた。
「……」
まずい。
ネツァワルピリは、一気に血液が下半身に集中していく感覚に焦った。
ちうちうと弱く吸い続けてくるガウェインが可愛くて仕方ない。なんだろうこの子猫のような愛しい生き物は。
もっと深く唇を合わせなおして、その小さな口を暴き倒してしまいたい。粘膜を擦り上げて唾液でいっぱいにして、戸惑う舌をぐずぐずに吸い上げて呼吸も奪って。控えめな甘く苦しそうな声を、聞かせてほしい。
邪な欲を脳内に巡らせていると、ぷは、とガウェインが口を離した。
息が上がって、薄くひらいた口からは今まで頑張っていた赤い舌が僅かに覗き、濡れた唇と相まっていやらしい。
「ガウェイン殿、」
吸い寄せられるように口付けようとするが、当然のように額を手のひらが押さえ込んできて。
「待て、だ」
「ぐ、ぬ…」
これは…
想像以上に拷問かもしれない。
物理的制裁などより余程堪えるのではないだろうか。
ガウェインは息を整えると小さく笑って、首筋に鼻先を埋めてきた。
肩にかけてすりすりと頬擦りしていたかと思うと、唐突に首に噛み付かれてびくりと身体が跳ねる。
甘噛みどころではない。歯型が残るのではというくらいの、それなりの強さだ。
続いて労るように唇がその箇所をなぞり、舌で舐め上げてくる。
ぞくぞくと鳥肌が走る中、ガウェインが手探りでスラックスを脱がしにかかってきた。
座っているため前を寛がせるだけにとどまるが、怒られるかと思いつつも腰を軽く上げると、下着ごとするりと脱ぎ落とされた。その程度の補助は認められるらしい。
こうした触れ合いは随分と久しぶりだ。
贈り物を秘密裏に用意するために自ら禁欲を強いていたわけだが、我ながら恥ずかしいことに、触れられてもいないのに息子は十分すぎるほど元気だ。
ちらりとガウェインもこちらの下腹部に視線を落として、吐息混じりに笑った。
首から胸へと舌を下降させつつ、白い指先を竿に這わせてゆるゆると擦ってくる。
形容しがたい弱い刺激に、ネツァワルピリは無意識に歯噛みした。身体に降ってくるキスといい、もどかしいことこの上ない。



