zoku勇者 ドラクエⅨ編17 悲しきリブドール・4
此処にいない、マキナはマキナ、私はお人形のマウリヤ、
マキナはもういないの、マウリヤはマキナとしては
生きられないの、……だから私は戻らなくてはいけない、
本当の私、……お人形のマウリヤに……)
マウリヤはもう一度ジャミル達と向き合う。今度こそちゃんと
伝えたい事を伝えるつもりだった。だが、強敵がいるのは分かって
いた。それでもマウリヤは……。
「……ジャミル、アルベルト、ダウド、アイシャ、モンさん、
それから黒い妖精さん、今まで本当に、これまで有り難う……」
「く、黒い妖精さんて……、何か尺に触るんだケド、ま、しょうが
ないか、今、そんな雰囲気じゃ……、ないしネ……」
「マウリヤ、何だよ、急に改まって、……まさか……」
「色んな事があったけど、本当に楽しかった、あなた達と逢えた
お陰、私、お人形に戻ってもずっと忘れないわ……」
「マウリヤ……」
元の人形に戻る事……、それは彼女の口から、彼女自身が口にした
言葉だった。彼女の決意にジャミル達は押し黙り、口を噤んだ。
だが、アイシャは……。
「い、いやっ、どうして……、何でそんな事言うのっ、だって……、
お人形に戻ったらもう……、いやっ、いやっ!私、そんなの嫌っ!!」
やはりアイシャは強敵であった。彼女は耳を押さえ、しゃがみ込んでしまい、
ガクガク震え出す……。分かっていた事とは言え、ジャミル達もアイシャの
錯乱する姿を見るのが辛く、苦痛だった……。
「アイシャ、分かって……、もう自分で決めた事よ、後悔はしてないわ、
私は本来はお人形、……やっぱりこのまま人間の世界では生きて
いけないの、それに、本当のマキナはもう此処にはいないの、
……私にはやっぱりマキナとして生きていくのは無理なの……、
それが分かったから……、このまま元のお人形に戻るの……」
「……いやあ~……、私達、折角、やっと……、お友だちに……、
ひっく、やだ、こんなの嫌だよう~……」
「っ……、マウリヤ、お前……、本当にそれでいいのか!?俺も皆に
言おうとしていた事がある、……マウリヤ、俺はお前がこのまま
この世界で生きていくのなら女神の果実を諦めようと思ってる……」
「ジャミル……?」
「モンっ!?」
「ジャミル、君は……」
「……う、うわっ!?」
泣き崩れるアイシャを見ていられず、そして此方も等々出した
ジャミルの答えに仲間達も騒然……。サンディだけは当然
ジャミルに食って掛かっていった。
「ちょっと、ジャミ公っ!な、何考えてんのっ!そんな事したら……、
せ、世界が……、天使界がこのままどうなっちゃうか……アンタ
分かって言ってんでしょーネっ!!」
「サンディ、やめるんだ……、今は……」
「アルベルトまでっ!……アタシ、もうアンタ達なんか
知らないからっ!!」
サンディは怒って発光体になり姿を消す。……重苦しくなって来た
雰囲気に、本当は彼女ももう耐えられなく、逃げてしまいたかったの
である……。
「ご、ごめんなさい、私の所為……、ふぇっ、で、でも……、
私、私……、どうしていいか分からないの……」
「アイシャ……、お願い、泣かないで……、モン~……」
「モンちゃん……」
アイシャはモンをぎゅっと抱き締めた。マウリヤはそんな
アイシャに近寄って行く。マウリヤも、そして彼女を強く
抱擁した。
「ジャミル、あなたも有り難う、あなたは本当に優しい人ね、でもね、
やっぱり私はお人形に戻ります、……決めた事なの、分かって……」
「マウリヤ……、本当に……、決めたんだな……」
「ええ……」
マウリヤは尚も泣き崩れているアイシャの頭を優しく、そっと撫でた。
「アイシャお願い、泣くのを止めて……、こっちを向いて……、
でないと、本当に絶交するわよ……、デコピンもするわよ……」
「おい……」
「やだああ~……」
アイシャは嗚咽を堪えながらマウリヤの顔を見た。マウリヤはそんな
アイシャの顔を見ながら微笑んだ。
「ねえ、知ってる?お人形でも夢を見れるのよ、私、マキナに
命を託して貰う前も、ずっとずっと夢を見ていたの、大好きな
マキナとお喋りしたい、動ける様になりたい、沢山のお友だちを
作りたいって……、ずっとずっと願っていたわ、でも、その時は
私はひとりぼっちだった、目が覚めたらマキナはすぐにいなくなって
しまって、私は取り残されてしまった……、でも、今度は大丈夫、
アイシャが、皆がお友だちになってくれたから、幸せな夢を見ながら
眠りにつけるのよ……、もうひとりぼっちじゃないの、マキナと皆が
沢山の思い出をくれた、ありがとう……」
「マウリヤ……、私も……、ありが……とう……、さよならは
言わないわ……、また……、会おうね……」
「アイシャ……」
アイシャはそう言うとマウリヤの抱擁から離れる。腫れた目を
擦って……。漸くアイシャもマウリヤが人形に戻る事を受け入れる。
笑顔で彼女を見送ろうと……、涙をぐっと堪え、何とかして泣くのを
止めようと思った。こんな時こそ笑顔にならなくては……、そう
思いながら、楽しい出来事を思い出そうとする。無理矢理笑おうとした。
……だが無理だった。アイシャは皆の処に戻る……。
「マウリヤ、ありがとな、ウチのジャジャ馬と仲良くしてくれてさ、
大変だったろ?へへ……」
「ええ、とっても、あなた達も大変なのね、ねえ、ジャミル、
お願いがあるの、マキナは遠い遠い旅に出た、いつ戻るか
分からない長い旅に出たと町の皆へ伝えて欲しいの……」
「ああ、分かったよ……」
「ありがとう……」
「……マウリヤ、僕達も忘れないよ、君の事……、有り難う……」
「……うう~、オイラ達、ずっと友達だよお~……」
「モンーーっ!モン、マウリヤの事、大好きだモン!ありがとね、
モンっ!!」
「ふ、ふん、何ヨ……、最後だから……、やっぱりアタシも
見送るわよ……、ひっく……」
「みんな、ありがとう、本当にありがとう……」
「えへへーっ、マウリヤっ!……また……ね……」
アイシャは震えながらマウリヤに向かって手を振った。最後まで
笑顔を作ろうと。……大好きな友達の為に……。必死で手を振る……。
「……本当にありがとう、皆……、アイシャ、私の大好きなお友だち……」
マウリヤの身体が光り出し、身体から女神の果実が浮かび上がる。
果実はジャミルの手の中へと……。途端に何かが地面に倒れる音が
する。……人形に戻ったマウリヤだった。……先程まで皆と共に喋り、
笑っていた彼女はもう二度と動く事は無かった……。
「……マウリ……ヤ……」
「!!」
そして、マウリヤの旅立ちを見送り、……堪えていたアイシャも
意識を失い、地面に倒れた……。
……そして、人形の少女は夢を見る。心から幸せな夢を……。
「マキナ、ごきげんよう、今日は何をして遊びましょう?そうね、
私は……、ホースでお水ぶっかけっこがいいわ、楽しいのよ、それから、
悪い人達を懲らしめる冒険に出掛けましょう、あ、ほらほら、マキナ、
またお友だちが来てくれたわ、私の大好きなお友だちが……、ねえ、
作品名:zoku勇者 ドラクエⅨ編17 悲しきリブドール・4 作家名:流れ者



