加減、出来ます。
「んじゃ、もう一回気持ち良くなってくれよ。」
自分の腿の上に足を乗せるように誘導すると、等々力は何か言いたそうにしつつも応じてくれた。
相手の膝の裏に手をかけて押し上げる。ローションに濡れた後腔が物欲しげにひくついていて、あまりの卑猥さに眩暈を起こしそうだ。
精神統一のため、大きく息を吸って、しっかり吐き出す。
落ち着け。止まるときはちゃんと止まる。無理はさせない。
自分自身を戒めて、先端をぴとりと当てがう。
「…挿れるぞ」
静かに告げて、待ち侘びているかのような窄まりに雄を挿れていく。柔軟に形に合わせて広がっていく様子がまた扇情的で、エロいの一言に尽きた。
「う…っぁ、」
「っ…」
顰めた顔を横に逸らし、等々力がきつく目を瞑る。
その表情を目に焼き付けながら、鳥飼はじわじわと腰を前へと進めていった。
浅いところでは迎え入れるようにうねっていた内壁だったが、進んでいくにつれて異物を押し出そうと抵抗してくる。
この締め付けがこいつのものだと思うだけで、高揚感が膨れ上がった。
熱くて、力強い。
まるで颯自身のようだ。
颯は来るものは拒まない。しかし、ある程度のところまでは誰でも受け入れるが、明確に一線が引かれているのだ。深い部分には容易に踏み込ませることはない。
表も裏もなく豪快で頼りになる大将ではあるが、その柔らかいところに隠された弱さは、本当に心を許す相手にしか見せないのだ。
「平気か…?」
鳥飼が半分ほど逸物を収めた頃相手にそっと訊ねると、等々力はこくこくと小刻みに頷いてくれた。
が、捉えようによっては声を出す余裕すらないほどつらいということもあり得るわけで。
苦しげなその顔に手を伸ばして、頬を優しく手のひらで撫でてみる。指の腹で目元をなぞると、固く閉じていた瞼が押し上げられて青灰色の揺れる瞳がこちらを見つめてきた。
耐え忍ぶような色が濃く滲む双眸を見つめ返す。
「…痛むなら、やめる」
「……、」
「無理に進めたりしないって言っただろ?」
口では気遣う姿勢を見せながらも、潰されんばかりの圧力に呼吸をしているわけでもない息子は窒息しかけている。
それを表に出さないように全力で取り繕い、相手の身体をひたすら案じてそう言うと、等々力は口元を覆っていた手をこちらの手に重ねてきた。
しんどそうに軽く伏せた眼差しと触れてきた手の熱さに、心臓が一際強く脈打つ。
「…苦しいが、問題ない。気持ち良く……してくれるんだろう…?」
浅い呼吸をしながら小さな笑みを見せてくれる等々力に、鳥飼はぐっと言葉を詰めた。
「全部、挿れてくれ…。痛くてもいい」
「……、……」
項垂れて、はあぁぁ、と大きな溜め息を落とす。
こいつはまったく、人の気も知らないで…
身体の中の息をすべて吐ききって数秒間固まってから、鳥飼はゆらりと顔を上げた。
様子が変わったこちらを、等々力が不思議そうに見上げてくる。
その顔がまた可愛くて、ぐちゃぐちゃにしてやりたい欲が急激に鎌首をもたげた。
「…大丈夫。全部挿れるだけだ……落ち着け俺」
「羽李…?すまん、よく…聞こえなかった」
「なんでもねえよ。…挿れるぞ」
「あ、ああ…」
相手の膝の下に改めて手を差し入れて、持ち上げるなり一気に腰を突き入れる。
後腔からぐぷ、と泡が潰れるような音が立つと同時に、等々力の身体が挿入の衝撃にベッド上方へ僅かにずり上がった。
目が見開かれ、掠れた呼気が薄い唇から溢れ落ちる。
「ッ……は、」
「少し、動くからな…っ」
やばい。気持ち良い。
挿れる前にイっておけばよかった。
みっちりと絡みついてくる粘膜に包み込まれ、頭が痺れるような快感を覚える。
がっついて腰を振ってしまわないよう、なけなしの理性を総動員して慎重に抽挿を開始した。
「ぐ…っ、ぅ…」
「こら、ちゃんと息しろっ…」
痛みのせいか苦しさのせいか、息まで止めて全身に力を入れていた等々力は、促されるままにどうにか酸素を取り入れたかと思うと徐に自らの下腹部をさすった。
「……すごいぞ、羽李…」
「…何が?」
「…こ、ここ、まで…入ってる…」
臍の下あたりを撫でながら、冷や汗を浮かべた顔をふわりと緩ませて笑いかけてくる等々力に対し、腹の底から支配欲が沸き立ってくる。
意思に反して、腰が勝手に動きそうになってしまう。
「っ……お前な、そういうこと言うなよ…、加減が…っ」
唸るように低く呟き、鳥飼が衝動をやり過ごそうと奥歯を噛み締めたとき。
等々力がこちらに両手を伸ばして、頭を優しく抱き寄せてきた。
「…我慢しなくて良い。…っ、好きなだけ、動いてくれ…」
「……煽りすぎ。まじで勘弁して」
「いや…、俺が、見たいんだ」
「見たい?…何を?」
後頭部に手を添えられた状態で相手の顔を下から覗き込むと、長い睫毛の奥でどことなく雄の炎をちらつかせた瞳と思いの外至近距離で視線が交錯して、不覚にもどきっとしてしまう。
「…羽李の、感じてる顔を」
「……それ、俺の台詞だろ。」
行為の立ち位置から考えてもその発言はどうかと思うが、等々力の目に劣情が揺らめいていることを認めて、鳥飼は観念した。
「ったく…せっかく人が抑えてんのに…」
「俺の中も、随分馴染んだ…。遠慮は無用だ」
「…止まれねぇぞ」
「なら、すべて受け止めよう」
くすりと笑って、等々力の顔が近づいてくる。
下から唇を重ねられると、それを皮切りに鳥飼は強く腰を打ちつけた。



