zoku勇者 ドラクエⅨ編21 我侭女王と恋したトカゲ・2
ジャミル達は騒然……。お湯の中に彼方此方に散りばめられた
女神の果実が無残に浮かんでいたからである。……やはり
間に合わなかったのだった……。
「ち、畜生……、俺ら命懸けで……、必死に此処まで来たんだぞ、
なのに……」
「ジャミル……」
「酷いわ……、こんなのってないわよ……、意地悪過ぎよ……」
「モン~……」
「えうう~、……これじゃあ~……、流された意味、ないよおお~……」
ジャミルは怒りで拳を握り震わせる……。そんなジャミルの姿を見、
……仲間達も落胆と失望、……悲しみに暮れるのだった……。
「残念だったわね、でも、お前達もこのままでは済まさなくてよ?
神聖な場に無断侵入したのですからね!まずは纏めて全員牢屋に
入って貰いましょうか!その後、それなりにあんた達に相応しい刑を
考えてあげるわ!楽しみにしていなさい!」
「……この野郎……」
「おーほっほっほっ!惨めなザマですこと!……あら?」
「きょっ、きょっ……」
お湯の中からペットのアノンが現れた。アノンはスライスした
果実の破片を口に加え、ムシャムシャと食べているのである……。
(……ジャミ公っ、駄目だよっ!あのトカゲを止めなきゃっ!!)
「……や、やめろおおーーっ!!」
「あなたっ!アノンちゃんに乱暴までする気なのっ!?このままだと、
問答無用で即絞首刑決定よっ!!」
「きょっ……」
「ジャミルっ!……抑えるんだっ!!も、もう……、間に合わないよ……」
「アルーーっ!放せよーーっ!!」
だが、もう本当に何もかも遅く……、アノンは口にした果実を
既にペロリと平らげてしまう。今にも女王に掴み掛かろうとする
ジャミルを……、アルベルトは必死に止めようとした。だが、
アルベルト本人も悔しくて悔しくて仕方がなかったのだった……。
(ウソ……、もう駄目じゃん……、こんなの酷くネ?……酷いヨ……)
「アノンちゃん、おいしかったかしら?ごめんなさいね~、嫌らしい
変な人達にびっくりしちゃったわね、さあ、もう一度身体を綺麗に
洗ってあげますからね~!」
「きょっ、きょっ……」
「アノンちゃん……?どうしたの?……あ、ああーーっ!!」
「キョーーーーーッ!!」
「ジャミルっ、何だかアノンちゃんの様子がおかしいわよ!」
「ああ、果実の所為だ……、こうなるからっ!!」
「……きゃああーーーーっ!!」
アノンの身体が光り出したかと思うと……、ふわりと空中に浮かぶ。
その後、アノンは恐ろしい変貌を遂げる……。一回りも二回りもある
巨大な大トカゲのモンスターの姿になってしまったのだった……。
モンスターへと変貌を遂げたアノンは、女王の前にそのままズシン
ズシンと迫り、女王をじっと見つめている……。
「ァ、ァァァ……、アノンちゃんが、アノンちゃんがああーーっ!
だ、誰か……、助け……、……ヒィィィィーーっ!!助けてえええ
ーーーっ!!いやああーーーっ!!」
アノンは巨大な身体であるにも係わらず、女王の身体を掴んだかと
思いきや、近くにあった井戸の中へと身を投じ、姿を消して
しまったのだった……。
「ジャミル!アノンが女王様をっ!直ぐに助けに行かなくちゃ!
……ジャミル……?」
だが、アルベルトに言われても、ジャミルはその場を暫く動く
事が出来ず……。女王を助けに行くのに気が進まなかったのである。
少しは懲りりゃいい、痛い目に遭えばいいんだと。そんな気持ちが
ふつふつと浮かび上がる。だが、その気持ちは侍女達が彼女達の本音で
代弁してくれたのだった。
「ふん、いい気味よ、大体普段から我儘放題やりたい放題の
しっぺ返しが来たんだわ、バチが当たったのよ!」
「ほ~んとっ、このままあの女王、いなくなってくれればいいのにっ!!」
「清々するわよねっ!!」
「……ジャミル、早く女王様を助けにいかないとこのままじゃ大変な
事になるわよっ!!」
「けどよ……」
「何だか……、嫌にジャミルらしくないよお~……、どうしたのさ……」
「ジャミル……、モン~……」
しかし、アイシャやダウドにそう言われても、どうしても今回は
助けに動く気持ちが起きず。そんな心境の戸惑っている中、
ジャミルに侍女達も笑いながら声を掛けた。
「心配しなくていいわよ、あなた達、女王様なんかこのまま戻って
来ない方がいいのよ、ほおっておきなさいって!うっかり戻って
来たら、ま~た酷い事されるわよ?」
(……分かってんだよ、このままじゃ……、けど……)
ジャミルの中で二つの大きな気持ちがぶつかり合っていた。早く
女王を助けに向かわなくてはならない、だがどうしても女王の
犯した事を許す事が出来ない、複雑な気持ちが絡み合って……。
「……ジャミルさん、皆さん!!」
「ジーラさん……!」
沐浴場に息を切らし急いで駆け込んで来た人物。女王に解雇を
言い渡されたばかりのジーラ、彼女だった……。他の侍女達は
現れたジーラの姿に皆怪訝そうな顔をしていた。
「ジーラさん、どうして此処に……?」
「女王様の悲鳴が聞こえたので慌てて飛んで来たのです、い、
一体何が……!?」
「それは……」
だがジャミルが言葉を続ける前に近くにいた他の侍女の一人が
得意げに話に割り込んで来た。
「バチが当たったの、女王様の大切なペットのアノンちゃあ~ん!
……が、あの果実を食べたら化物になったのよ、それで、アノンが
女王様を連れて其処の井戸に飛び込んだワケ、きっと女王様を食べる気よ、
……いい気味だわっ!」
「そんな……、アノンちゃんが……、女王様……」
「ね?ジーラ、アンタもそう思うでしょ?これで清々したんじゃなくて?」
「……あ、あなた方、最低ですっ!!」
「!?」
侍女達はケラケラ笑っていた。だが、ジーラは怒りで握った拳を
震えさせ、その場で笑っている侍女達に大声を張り上げ一喝。
いつもとは違う、強く言い放った彼女の姿にジャミル達4人も
びっくりするばかりであった。
「な、何よ……、生意気なっ!いつも碌に仕事の出来ない下っ端の癖にっ!!」
「私は何と言われても構いません、……ジャミルさん、皆さん……、
どうかお願いです、女王様をお助け下さい……」
「ジーラさん、あんた……」
ジーラは他の侍女達とは違う。どんなに冷たく罵られても、唯一女王の
孤独を知る数少ない人物であった……。アノンに女王が捕まった時、
ジャミルも少なからず、酷い目に遭って懲りろと思っていた。ジーラは
目に涙を浮かべ、切実に4人へと訴える。
「お願いです、このままでは女王様が余りにも……、ご両親の愛を
受けられず、その上信じていた大切な心の友であるアノンちゃんにまで
裏切られたなんて……、本当に女王様が今度こそ立ち直れなくなって
しまいます……」
「行こう、ジャミル!僕らも井戸の中へ!」
「このままモタモタしてられないでしょっ!……い、嫌だけど……、
行こうよお!」
「女王様を助けに行きましょ!」
「モンっ!」
(ホラホラ、モタモタしてんじゃねーってのよっ、ジャミ公っ!)
「お前ら……」
作品名:zoku勇者 ドラクエⅨ編21 我侭女王と恋したトカゲ・2 作家名:流れ者



