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甲斐性と雨宿りしたら・続

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二つの握り飯を平らげ、水をすべて飲んでから満足そうな息を吐き、煉獄が両手を合わせる。


「ご馳走様でした!」

「相変わらず良い食べっぷりだ。見ていて惚れ惚れする」


自分が食べたわけでもないのに同じく満足そうに微笑むと、猗窩座は盆を部屋の隅に寄せて立ち上がった。
まるで己の部屋かのように押し入れを開けて布団を引っ張り出し、手際よく敷いていく。


「さあ杏寿郎、腹拵えも済んだところで、こっちへ来い。俺はもう限界だ」


障子を閉めると薄闇の中上着を脱ぎ、猗窩座は布団の上に腰を下ろした。
右手をこちらに差し伸べてくる相手ににっと笑い、煉獄も膝立ちになり畳を擦るようにして布団に寄っていく。


「臨むところだ。俺もこれ以上は待てそうにない」

「なら、話は早いな」


左手首を猗窩座に掴まれ、ぐいと強く引き寄せられる。特に抵抗もなく慣性に従って身体を傾けると、迎え入れるように後頭部に反対の手がまわされて。
そのまま互いの唇を食むように重ね合わせた。

捩じ込まれた舌と自身の舌が擦れてぬるりと絡まり合うと、ぞわりと鳥肌が立って肩が震える。
次いで思わず縮こまってしまったこちらの舌の側面を撫でるように擦られ、擽ったさに吐息が漏れた。途端、頭を抑えている猗窩座の手に力が入ったのがわかる。

角度を変えて更に深く舌が侵入し、尖らせた先端で上顎を擦られる。己の口の中で最も弱い部位への刺激に顔を逃がそうとするが、頭部を手だけでなく腕全体で抱き込まれてしまい、却って身動きが取れなくなってしまった。


「あ……っふ、」


粘膜を舐めまわされた生理的な反射で、唾液がじわじわと滲み出てくる。飲み込む暇などなくて垂れ流しとなり、顎を伝っていく感覚にすら感じてしまう。

大胆に動きまわる相手の舌にどうにかついていこうとするが、徐々に力が抜けて受け入れるばかりになってきた頃。
不意に舌を強く吸われた。


「んん…っ」


舌の裏筋が引っ張られ、痛みと驚きに思わず顔を顰める。
抗議しようと猗窩座の肩を押しやると、今度は逆に口腔内を相手の舌が忙しなく出入りを繰り返してきて。
かと思えばぐっと奥まで押し入られ、再び上顎を弄られる等、完全に翻弄されていた。


「はあっ……ぅ…」


散々口の中を好き勝手に蹂躙され、身体の力が抜ける。
態勢を立てなおそうとするが、膝が相手の足に当たってしまいうまく距離を調整することができない。猗窩座の肩に置いた手は、そのまま中途半端な前傾を保持するためにしがみつく形になってしまった。

漸く口付けから解放された頃には、はしたなく唾液に塗れた口周りを気にする余裕もないほど頭がぼんやりとしていて。


「…杏寿郎、お前はなんていやらしいんだ。その顔も、その格好も、どれだけ俺を煽っているかわかっているのか?」

頭から腕が離れていき、二の腕を支えられながら上から下まで視姦される。
少し息を乱しつつ苦しげな表情でこちらを見つめてくる彼こそ色気が尋常ではないと思うのだが、向こうは向こうで主張があるらしい。

呆けた情けない顔をしている自覚はある。服は…よくわからない。
酸素が行き渡っていない脳は思考回路が正常に機能していないようで、気の利いた言葉が出てこなかった。

「色事の際に拝めるのは詰襟から覗く首筋だけかと思っていたが……なるほど腕もそうだったのか。捲るだけで素晴らしい破壊力だ。眼福のひと言に尽きる。最早人の目に触れさせて良いものではない…!」

「……」


興奮気味に早口で捲し立てる猗窩座が、何を口走っているのかよくわからない。
はしたないだのいやらしいだの、もうどうでも良い。
今はとにかく、燻っていた欲についた火をどうにかしたかった。

取り合わずに煉獄がぞんざいな手つきで自らベルトを外そうとすると、「待て杏寿郎」と猗窩座が慌ててその手を制してきた。
無意識に胡乱げな視線を向けるこちらに、相手は恍惚とした表情で眉尻を下げる。


「…ああ、その苛ついた表情も堪らない。お前は本当に劣情を抑えているときは野生的になるな」

「…前口上は良い。なんだ」

「せっかちな奴め。杏寿郎の隊服を乱すのは俺の役目だ。俺が外す」


そう言って藍色の指先が煉獄のベルトを外し、ズボンを寛げる。膝のあたりまで下げると褌を緩めにかかるのを見兼ねて、自分で足からズボンを抜こうとするがまたもや制止された。


「駄目だ。そのまましたい。上も脱ぐなよ?」

「……、意味不明だ。動きにくいだけだろう」

「わからないか?隊服というのがそそるんだ」


全くもって理解できないが、猗窩座は構わずに嬉々として緩めた褌から煉獄の雄を取り出した。
執拗な口付けにより既に固くなったそれは、刺激を求めて立ち上がっている。
相手は躊躇いなく手のひらに包み込み、上下にゆるゆると扱きはじめた。

昨夜の血鬼術は抜けているとはいえ、与えられたものといえば乳首への愛撫と口淫のみ。一度射精はしたものの、決定的なものはなくもどかしさを抱えたまま今を迎えている。
そんな身だからか、少し触れられただけですべてを快感として拾い上げてしまう。

軽く擦られているだけで、腰がぴくりと引けた。


「っ…」

「素晴らしいぞ杏寿郎…、お前の先からもっと触れろと溢れてくる」


ろくに弄られてもいないのに、鈴口から滲み出る先走りは留まることを知らずに陰茎と相手の手を汚していて。
猗窩座と向かい合う形となっているせいで、その様が嫌でも目に入った。

続きはしないのか、と物欲しげにしていたのは彼も同じ。
自分だけが施されている状況もどうかと思い、煉獄は猗窩座の腰紐に指を引っ掛けた。


「ん?どうした杏寿郎」


くちゅくちゅと水音を立てながら手の動きを止めず、どこか優しげな口調で訊ねてくる猗窩座の金の瞳に、そっと視線を絡ませて呟く。


「…君も、一緒に」

「え、」

一音を発してぴたりと動きを止め、目に見えて動揺する相手の腰紐を解いていく。
服越しでもそそり立っているのがわかる逸物を煉獄が取り出すと、外気に触れただけでまた角度がついた。

「ま、待て、ちょ…」


作品名:甲斐性と雨宿りしたら・続 作家名:緋鴉