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甲斐性と雨宿りしたら・続

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猗窩座とこれまで何度も肌を重ねてきたが、彼のものを触ったことはない。いや、撫でたりつついたりする程度ならあっただろうが、しっかり触れたことがないという意味だ。
避けていたというより、猗窩座のほうがそれとなく拒んでいたのだ。
特に理由を訊ねたことはなかったが、胸中ではこちらも相手を気持ち良くしたいと思っていた。

煉獄が猗窩座の逸物を指の腹で軽く持ち、前後に小さく扱きだすと慌てた声が飛んでくる。


「っ…お前がそんなことをする必要はない!俺がまとめてするから…、手を、離せ…!」

「俺も君に良くなってほしい。…俺の手で」


羞恥のせいで、熱が顔に集まっていく。
許しを請うように再びちらりと相手を窺うと、猗窩座はぐっと言葉を詰まらせつつ赤面してのろのろと視線を横に逃した。


「そ、……そうは言うが…、嫌ではないのか…?」

「嫌ならこのようなことはしない。上手くできるか分からないが、気持ち良くなかったら教えてくれ」

「…しかし……、」

「俺がしたいんだ」

「……わかった」


根負けした猗窩座は、覚悟を決めたように嘆息をひとつ落とした。


+++


「っ……ああ、気持ちいい、杏寿郎…上手いぞ」


艶めいた猗窩座の声。
煉獄の手淫によって逸物は更に成長し、凶暴な血管を浮き立たせたそれは凶器の様相を呈していた。
その甘い吐息とは別に、もうひとつの耐え忍ぶ息遣いが重なる。

猗窩座の手は煉獄の背後にまわっており、指先は尻の奥である後腔に埋められていて。
煉獄は猗窩座の逸物を必死に追い上げつつも相手の肩に凭れかかり、胎内を擦られる感覚に下腹部をひくつかせていた。


「く……、んっ」


筋肉質な猗窩座の肩に額を擦り付け、内から与えられる快感に引きずられながら煉獄が鈴口の割れ目に指先を捩じ込もうとしたとき。


「杏寿郎。俺はもう、これ以上ないほど準備できている…。お前ももっとほぐしてやろう…」


唐突に胎内の弱い部分をぐりっと指で押し込まれ、思わず背が反り返って声が上がった。


「ぅ、んっ、ああ!」

「…お前は、お前の身体に集中しろ」

「あ、待…っ、そこ…!」


そう言うと猗窩座は指の数を増やし、鳴きどころを強く擦り上げてくる。身体の芯から脳天に愉悦が突き抜け、意思に反してびくびくと腹が戦慄いた。
急激に迫り上がってくる危うい官能の波に、射精感がぐっと高まっていく。

猗窩座に背を支えられて傾きかけた上体をどうにか保持したが、腰から力が抜けてしまい咄嗟に相手の肩と上腕にしがみつくように掴まる。


「どうだ杏寿郎、気持ち良いか?お前はここが好きだからなぁ」

「は、ぅ…っ、だ、駄目だっ…」

「こんなに締め付けておいて、駄目なことはないだろう」


更にがくがくと擦られ、強烈な快感に己のものとは思えない媚びた声が溢れた。


「あぁぅっ!違っ……いき、そ…だから…ッ、」


猗窩座にしなだれかかる身体をどうにか起こし、尻に埋まっている相手の手をどかそうと右腕を後ろにまわす。
しかし、手首を掴まれた猗窩座は、煉獄の言葉に嬉しそうに笑った。


「これはすまん。そういうことなら一度出したほうが良い」

「ッ駄目だと言っている!」


そのまま指を更に深く潜らせようとする相手の手首を、煉獄は鋭い一喝と共に握り潰した。
堪らず猗窩座の動きが止まる。


「な…なんという握力だ。そんな不安定な態勢で…色っぽく息を乱し、今にも果てる直前だというのに…!」

「君と…っ、一緒にと……言っただろう…」

「杏寿郎お前…」


手首を破壊された痛みのせいか、若干しょんぼりと頭を垂らした猗窩座の逸物だったが、すぐにぐっと持ち直した。なんとも忙しい魔羅だ。

これ以上の無体は強いないだろうと手首を解放してやると、中に入っていた指はそっと出ていった。そうかと思うと、今度は腰を両手でがっしと固定される。


「…挿れるぞ、いいか?」

「ッ…」


柔らかくなった後腔に、相手の忙しい魔羅の先端があてがわれる。性急にも感じられたが、これ以上焦らされては堪らない。
小刻みに頷くと、小さく笑みを溢した猗窩座が不意に顔を上げて、軽く唇を重ねてきた。
触れ合うだけのその感触に名残惜しさを覚えたと同時に、ぐっと腰を下に引き下ろされて窄まりを固いものに押し広げられていく。

さすがに息が詰まる。
いくら解されても、何度睦もうとも、この瞬間ばかりはいつも苦しい。

無意識に眉間に力が入るこちらに、猗窩座の控えめな声がかかった。


「…大丈夫か?」

「問題……っ、ない…、」

本音を言えば大丈夫ではない。しかしこの甲斐性の権化とも言える男は、俺が苦しむことや本気で嫌がることは決してしない。ましてや痛みが伴うことは尚更、徹底しているようだった。

鬼らしく欲望のままに力づくで抱けば良いのに、そうされたことは一度もない。
傷つけたくない、と。彼はそう言うのだ。

理性と本能に苛まれつつも大切にしようとしてくれるその姿が、堪らなく愛おしく感じる。
その誠意に、こちらも応えるべきだ。
…否、そんな責任感によるものではない。俺は単純に、応えたいのだろう。

そう自覚すると共に、胸が苦しくなるほどいっぱいになる。
腹が疼く。彼で満たされたい。

顎の下にある猗窩座の短い髪に口付けを落とし、鼻先を擦り付けて低く呟いた。

「もっと…全部、挿れてくれ…」


作品名:甲斐性と雨宿りしたら・続 作家名:緋鴉