zoku勇者 ドラクエⅨ編29 スクールカルテット・3
「行っちゃったのね、学院長……」
「ああ……」
「モォ~ン……」
ぽつりと言葉を溢したアイシャの側にモンが飛んで行く。
アイシャはモンをそっと、優しく抱き締めるのだった。
「たく、それなら最初から言えよ、……全く、お節介な
爺さんだな……」
「磨けば光る宝石か……、でも、俺達の事、そんな風に
見ていてくれたなんて……、俺、これからは真面目に
勉強しようかな……」
「本当ね、私ももっと頑張らないと……、でも、その前に、
お、お風呂入らなくちゃ!」
モザイオを除く、捕まっていた生徒達は、4人に何度も何度も
礼を言い、帰って行った。そして、残ったモザイオは……。
「よう、本当にサンキューな、何かてれくせーな、こう言うのさ、
でも、悪くねえ気分だな、お前らは本当に俺達の命の恩人だ、
感謝するよ……」
「あたりめーだろ、俺ら、ダチなんだから……」
「……ジャミル、ああ!」
モザイオへ、言ってて照れくさいのか、慌てて鼻を擦って誤魔化す
ジャミ公。そんな2人のやり取りを笑顔で見つめている仲間達。
モザイオが差し出した手を皆で握り返すのだった。……今回の
騒動もこれにて無事一件落着する。だが、いつまでも一つ処に
いられない4人組の宿命。この学院とも別れの時が近づく……。
……あれから。地下墓地での死闘から数日が過ぎた。学院は
すっかり落ち着きを取り戻し、生徒達もいつもの日常を
取り戻していた。初代学院長エルシオン卿の眠る墓前には、
いつも沢山の花が添えられている。エルシオン学院に平穏な
日々が戻って来たのである。そして、今日も……。
「はあ、モザイオの奴、本当にスゲーよなあ~……」
「……うん、追試とは言え、90点を取っちゃうなんて……、
凄すぎるよ……、それに、女の子にもモテモテだしね……」
お昼休み。学院の屋上の守護天使象の側で購買パンの昼食を取る
青髪とパッツンデブ。彼らも又、平凡な日常に戻りつつあった。
「……もう俺らとは違うLVの世界に行っちまうのかな、モザイオ……」
「そう……だね……、寂しいけど……」
???:な~に言ってんだよっ、お前らはよっ!よくも俺を置いて
行ったな!このっ!
「……いてっ!」
「あいた!」
後ろから購買パンで青髪とパッツンデブの頭部を軽くぴしゃりと
誰かが叩く。モザイオだった。
「たくっ、これぐらい努力すりゃ簡単なんだよ!お前らももっと
勉強しろよ!」
「……へへ、ごもっともで……」
「あはは……」
モザイオは持って来たコッペパンを振り回しながら2人の側に腰を
下ろす。しかし、数週間前の彼からは考えられない台詞だった。
モザイオも確実に成長し、変りつつあったのである。でも。
「なあ、モザイオ、お前、来年の生徒会長候補に推薦されてんだろ?
スゲーじゃん、もう、俺らとは手の届かない世界に行っちまうんだなあ~
……、って……、思ったらさ……」
「うん……、何だか雲の上の人みたいで……」
「……バカだな、お前ら……、まだ先の事なんか分かんねえよ、
でも、いつだって、俺らはダチなんだよ、この先もな、学院を
卒業してもさ……、お前らが嫌だって言わねえ限りさ……」
「モザイオ……」
モザイオはコッペパンを一口囓ると青髪とパッツンデブ、2人の
方を向いて笑う。2人も笑顔になった。
「……ああ、モザイオ!ずっとダチだな、俺達さ!」
「えへへっ!」
「さあ、昼飯食っちまおうぜ、それにしても、幾ら勉強したって
根本からダメな奴もいるんだな、困ったモンだぜ……、あれ程
ひでーのは俺もびっくりだ……」
「……ジャミ公か?」
「……」
3人は顔を見合わせる。そしてプーッと吹き出す。
「……未だにこの間の物理の追試試験、頑固に合格してないの、
彼……、だけみたいだよ、せ、先生達も相当困ってるみたいだね……、
しぶとくて……、ぷぷ……、凄いね、ジャミル君……」
「そういや、アイツこの間もアルベルトにスリッパで頭……、
引っぱたかれてたな……」
「……ああ、6点から8点取ったの間違い無しだって、く、
糞威張りしてたしな……、それで、また……、結局……、答案に
名前書き忘れ……、う、プ……」
其処まで言って、モザイオは食べていたパンを等々吹き出し……。
「「……ぎゃーーっはっはっはあーー!!」」
屋上に壮快な明るい笑い声が響き渡る。今日もいい日である……。
そして、モザイオ達がゲラゲラ笑っている頃、ジャミル達4人組も
戦いでの疲れと体力が漸く回復し、本日、学院長室へ呼ばれていた。
モンは学生寮にて食堂のおばちゃんにお世話になりながら、皆の
授業が終わるまで良い子で?待っている。
「……ひ、ひーーっくしゅっ!」
「お風邪ですか?ジャミルさん……」
「い、いや、畜生……」
「皆さん、このエルシオン学院の生徒を救って頂き、平和な日々を
取り戻して頂いた事に我々教師一同、心から本当に感謝致します……」
「へ、……へへ……」
ジャミルは仲間達の方を向き、一瞬困った様な表情になるが、
はにかんで笑顔を見せる。見守っていた仲間達も頷き、学院長に
笑顔を返した。
「それで、今後の事なのですが、……如何ですか?皆さんの
授業料等は、このまま我が学院が負担させて頂きますので、
このまま学院に残って頂けないでしょうか……、生徒達も
皆、あなた方が去ってしまうのを寂しがっております故……、
特にジャミルさん、私はあなたの将来が非常に心配でしてな、
……あんな酷い試験の成績では……」
「……げっ!い、いや、その……、んな、心配してくんなくても……、
あう……」
「はあ、全くもう、君は……、学院長、そのお言葉、僕らとしても
本当に有り難いと思っておりますし、嬉しいです、けれど……、
僕達にはまだまだやらなければいけない事も残っています、
仲良くしてくれた皆とお別れは本当に寂しいですし、お名残
惜しいですが……」
「そうですか……、ですね、皆さんもこれから沢山のお仕事が
あるのでしょうね……、残念ですが、私もこれ以上はお引き止め
出来ますまい……、ですが、此処は皆さんの大切な母校であると
言う事をずっと忘れないで下さい……、この学院で学んだ事を、
どうか、いつまでも……、又、いつでも遊びに、学びに来て下さい、
お待ちしております……」
「……学院長……」
アルベルトは静かに学院長に頭を下げる。ジャミルは無言……。
ダウドとアイシャは既に涙目であった。
「……私もずっと忘れません、学院長さん、有り難う……、とっても
楽しかったです……」
「……あうう~……、事実上の卒業式だよお~……」
(ちょ、ヘタレ、……顔きったなあーーっ!!)
「サンディ、うるさいよお~……、ぐしゅ……」
「明日には皆さん、ご出発なさるのでしたな、では、本日午後で最後の
授業と言う事になりますね、残りの時間、授業に没頭するのも良し、
生徒達と触れあうのも良し、どうぞ悔いのない様にお過ごし下さい……」
「ああ、今まで有り難うな、学院長……」
ジャミルが代表で学院長と握手を交わし、仲間達も頭を下げ、
作品名:zoku勇者 ドラクエⅨ編29 スクールカルテット・3 作家名:流れ者



