五条悟が苦悩しながらも青春を謳歌し大団円を迎える話:黎明前編
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出来たてのクレープを受け取って、せいらは嬉しそうにくるくるとまわっていた。
「わーい。さとるのおごりー」
クレープのキッチンカーを発見したからと連行される俺。そしてストロベリーカスタードを買わされる。
「なんでお前らいつも俺にたかるわけ?」
「悟は私たちのお財布だもの、食料を購入して与えるのはあなたの義務よ。クレープ屋のおじさん、私はチョコバナナを」
メニュー表を真剣に見ていたそよかが言う。
「へーへー。おっさん、俺にもチョコバ──」
「待ちなさい悟!」
「なんだよ?」
「一人で食べるには量が多いわ。半分食べなさい」
なんで俺は女子高生の食べかけのクレープを食べないといけないんだよ! どんなご褒美だ!
「おっさん。悪い。注文キャンセルで」
「いいねぇ、青春してるねぇ」
職人顔のおやじが、俺の本音を見透かしてにやりと笑う。
「カロリー押し付けられてるだけなんで」
近くにあったベンチに座りクレープを食べる二人に挟まれる。なんで俺がセンターなんだというツッコミはもう飽きるほどしたし、もう慣れた。
「えへへ、おいひぃね」
せいらがクレープで口の中をいっぱいにしながらニコニコと俺に話しかけてくる。ちょうど別の高校の男子生徒たちと下校時間が被っていた。
「こんな甘ったるいもん、食ってられるか」
他校の男子生徒を意識して悪びれる。
「悟、嘘は良くないわ。どうしてそんなくだらないことで嘘をつくの。甘いものは三度の食事より好きだと常々言っていたじゃない」
「そこまで好きとは言ったこともねーよ!」
口のまわりをクリームまみれにしながらも、無邪気な笑顔で食べ進めるせいら。髪を耳にかけながら慎重に食べ進めるそよか。他校の男子生徒たちが、そわそわと二人に視線をチラチラ向けてくる。術師でもなんでもねぇ。盛りのついたガキ共が。俺はふんっと鼻で笑って、ベンチの両端の二人の肩に手をポンと置き、
「お前ら、離れすぎ。他の人が座れるようにもっとくっつけよ」
グッと抱き寄せる。
「わわっ! クリームついちゃうよ!」
「……虫除けのつもり? 黙ってやればいいのに」
慌てるせいら、冷静なそよか。
「あーぁ、ガキの相手は疲れるぜ」
俺はサングラスを直す。ま、悪くねぇか。
「ほら、悟。食べなさい」
急に口に突っ込もうとするな! ぐいぐいとそよかにクレープを押し付けられる。
「……」
チョコバナナクレープ……甘ぇな。
俺の携帯が着信を告げた。
通話にして携帯を耳にあて──
「──歌姫と冥さんが?」
「なになにー? どうしたのー?」
「せいら、通話中は静かに」
そよかはせいらの口の周りを拭いている。
「悪ぃな、二人共、急用だ。先に帰ってくれ」
「えー?」
「せいら、私たちにも任務が入ったわ」
せいらにそよかは携帯のメール画面を見せる。
「ふむふむ」
見せられた画面を真剣に見つめるせいら。
「なんだ。じゃあちょうど良かったな。
──二人共つまんねぇ死に方すんなよ」
「それは面白い死に方をしてこいって言ってる?」
「ばっか、ちげぇよ」
「ならもっと違う言い方になるじゃない」
「ぜったいに死ぬなよー! 必ず帰ってこいよー! だよね」
「そうね。流石はせいらだわ。根がひねくれた悟とは大違い」
「おぃぃぃぃ!!!」
「それじゃあ、いってくるね! さとるも気をつけて!」
二人は俺に笑顔を残して背を向けて歩き出す。
「──死ぬなよ、二人共」
無意識に口から出たらしくもない言葉に驚いて頭をかく。
「さて、俺も行きますかねぇ」
作品名:五条悟が苦悩しながらも青春を謳歌し大団円を迎える話:黎明前編 作家名:ますだ



