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五条悟が苦悩しながらも青春を謳歌し大団円を迎える話:黎明前編

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●7

 高専の倉庫として使われている部屋で、
「よっ! ほっ! あと、あと少し──」
 せいらがぐらぐらと揺れる足場に乗って、手足を伸ばして高所にある段ボールを取ろうとしていた。
「危ない!」
 その様子を見かけて、つい声に出た一言が、彼女を驚かせてしまう。足場が崩れる瞬間、咄嗟に呪霊でせいらを包み込む。
「わー! なにこれー!」
「怪我はないかい?」
 呪霊を解除して収納する。
「すぐる! ありがとう。さっきのこもありがとうね」
 ──ん? 呪霊にもお礼を言うんだ。変わった子だな。
「さっきのこのお名前は? なんかふわふわしてて気持ち良かったな。けまるちゃんとか?」
「いや、私にとって呪霊は道具だ。ひとつひとつに名前なんてつけないよ」
 ──そう。呪霊は道具。名前を付ければ情が生まれる。そうなったら使い捨てがし辛くなる。
「え?」
 どうして彼女は、そんな驚いた顔をするんだろう。
「そうなんだね」
 せいらは少し寂しそうな表情になり、困ったように微笑んだ。
「……君は何を取ろうとしていたんだい?」
「あ、清掃用の予備のモップの先がここにあるって聞いて、取りに来たんだけど……思ったよりも上にあったから、そよかはさとるを呼びに行ってて──」
「それなら悟が来るまで待っていれば良かったのに」
「ぎりぎり取れると思ったんだもん!」
「はいはい。じゃあ私が支えるから段ボールごとじゃなくて、中のものだけを取り出すといいんじゃないかな」
 せいらの脇腹を両手で掴んで持ち上げる。華奢で軽いなと感心した。
「やったー! とれたよー!」
 ふわふわとした金色の髪から甘い香りがする。シャンプーの香りかな? いい香りだなんて思ったらいけない気がして、つい呼吸を止めてしまう。
「みてみてー!」
 身体の向きを変えて見せようとしてくれるのは嬉しいが、彼女の脇腹を持つ手に力が入る。
「良かった」
「……はやくおろして」
 急にせいらは絞り出すような声を出してきた。
「どうした?」
「なんかくすぐったいし……恥ずかしくなっちゃった」
 頬を赤らめるせいら──そんな表情するんだ。つられそうになって視線を外す。


 体育館、バスケットボールをもて遊びながら悟は言った。
「しっかしさー、帳ってそんなに必要? パンピーからは見えないんだし──」
 悟の視界にそよかが入ると、
「帳は必要だな! 原因不明の事件とか起こすべきじゃねぇわ!」
 後で頭の毛をむしられるとでも思ったのか、発言をあっさり撤回した。
「そうだな。呪霊を生み出させないためには人々の心の平穏を守らなければ」
 ゆっくりとドリブルをして近付きゴールを決める。
「呪術は非呪術師を守るためにある」
「──それだけじゃないよー」
 バスケットボールをせいらが手にする。低い位置でのドリブルは手が出しづらい。
「呪術は呪術師も守るためにあるんだよ」
 スピード、柔軟性、彼女は前衛として戦えるアタッカーだ。ボールで遊ぶ猫のような素早さでゴールの近くに優しくボールを誘導した。
「──ッ」
 それはそうだ。私たちはただ犠牲になっているわけではない。
「世界を守るヒーローだって? でもさー俺、そういう自己犠牲嫌いなんだよね」
「悟、ならあなたの力はなんのためにあると思うの?」
 硝子と並んで体育館の壁の前にいたそよかが声を上げる。
「俺の力は俺のためにあるんだよ。呪術に理由とか責任を乗っけんのはさ、それこそ弱者がやることだろ」
「そう。なら、近い内にあなたと私たちはさよならね」
「なんでだよ!」
「この世界には様々な呪霊がいるわ。ある日、私やせいらが危機に瀕してもあなたは助けてくれないでしょう?」
「お前たちは俺の──いや、助けないなんて──」
「そういう積み重ねなのよ。それに、得意なこと不得意なことは人によって違うわ。私たちは呪霊を祓うことが出来るから呪霊を祓う。その他の出来ないことを助けてもらっているのだから──」
 悟はそよかに言い返せず、もやもやした様子だ。硝子がせいらとそよかを手招きして、何かを話すと一緒に体育館から出ていく。出て行く直前に硝子はちらりと私に目配せをした。
「悟、あの二人は君のなんだ?」
「なんだってなんだよ。別になんでもねーよ」
「友人にしては距離が近いんじゃないか?」
「仕方ねーだろ、片方だけ相手してっともう片方が寂しがるんだから──羨ましいのかぁ? 傑ちゃん」
 聞き慣れない呼び方に悟のイライラが透けて見える。
「少し外で話そうか?」
「お前も寂しんぼかよ。一人で行けよ」
 私と悟のピリピリとした空気を、体育館の扉を夜蛾先生が勢いよく開けて終わらせてくれた。


●8

 あの人の声が好きだった。時に優しく、時に厳しく俺に物事を教えてくれた。
 あの人の手が好きだった。ふわりと頭を撫でられる時も、手を繋いだ時のあたたかさも。
 あの人の香りが好きだった。どこか懐かしさを感じた香り、抱きしめられた時はとても嬉しかった。

 ──その人はもういない。

 別れ際に誰かを探す旅の途中で、たまたま俺と出会ったんだと教えてくれた。
『あなたはもう大丈夫』
 そう言ってくれたけど、納得なんて出来るわけがない。
『嫌だ。
 ──行くなよ! ずっと俺のそばにいろ!』
 その人は困った様子で微笑む。
『……なら俺が一緒に行く! それなら文句ないだろ!』
『だからそれは、何度も説明したでしょ?』
『この世界の意味なんて──』

 俺はあの時、なんて言ったんだっけ。その人との記憶は突然途切れ、今はその人がどんな姿をしていたのかも、好きだったはずの声も思い出せない。

「悟、人の後頭部に穴を開けるつもりなの? 凝視するにもほどがあるわ」
 前を歩くそよかがそう言って振り返った。
「なになにー? 虫さんでもとまってる?」
 せいらが俺の視線を追いかけようと、俺とそよかを交互に見る。
「なんもいねーよ。たまたまだよ。いちいち気にすんな」
 そよかせいらと一緒にいると、どうもその忘れかけた記憶を刺激するようで妙にイライラする。ただそよかの物言いが気に入らないだけだと、思うようにしているが──。
「共同任務楽しみだね!」
 せいらは俺たちを見回して楽しそうに言う。星漿体の護衛と抹消。それが俺たちに託された任務だ。
「小学生の遠足じゃねぇんだぞ!」
「悟、どうした?」
「なんでもねぇよ」
「早く行こう! 素性がばれてるって、不安だと思うし!」
 俺と傑の腕を引いて、せいらが先を急ぐ。
「──君は優しいな」
「ならお前たちは先に行けよ。俺たちは周囲を警戒しておいてやるから」
「そうだな、そうしよう。行こうかせいら」
「うん!」
 傑とせいらの二人は走って星漿体と合流する予定のホテルの一室へと向かった。
「何を勝手に決めているの?」
 後ろからそよかの圧を感じる。
「何か文句あるのか?」
「別に、悟にしては良い判断だったと思うわ。きなさい」
 そよかが俺の手を引いて歩き出す。向かった先はベンチだ。
「座って待つつもりか」
「バカね。それだけじゃないわ」
 先にそよかがベンチに座った。
「ほら、早く」
 自分の腿のあたりを両手でぽんぽんしている。
「……なんだよ」