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①五条悟が苦悩しながらも青春を謳歌し大団円を迎える話:黎明前

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●11

「お願いします!」
 正座で頭を下げる、礼儀正しい青年。呪術高専の一年生、灰原雄と名乗った。
 何度も何度も足を運び、自分の刀を作ってほしいと頼んでくるその姿勢に、最初は軽くあしらっていたが、前回ふと見送りに出たとき──彼はなんと極太の丸太を三本も背負って、この険しい山道を登ってきていたのだ。そしてまた静かにそれを背負って、帰っていった。
 本気という言葉が失礼に思えるほどの執念を見せつけられて、ついに今回は玄関の戸を開けてしまった。
「そう言われてもね……うちの工房で呪術師用の刀を作っていたのは、もうずいぶん昔の話で。今はもう作っていないんだよ」
 確かに、祖父が若い頃までは、ここで特別な刀を打っていた。呪術師のための刀、穢れを祓う刀──なんでも力が強すぎて、持ち主を選ぶほどだったらしい。使いこなせなければ、力に呑まれるような、そんな危うさを持っていたと聞いている。
 蔵を探せば、当時の文献や記録が残っているかもしれない。しかし、私自身、あの蔵にはほとんど足を踏み入れたことがないのだ。
「うちじゃなくても……まだ呪術師向けの刀を打っている人を紹介するよ」
「いいえ、ここで作られる刀でなければ意味がないんです」
「意味?」
 年相応の若者らしさを残した青年の真剣な表情。まなざしの奥に宿るのは、まるで燃える炎のような──。
「ここで作られた刀には太陽の、陽光の力が宿るんです。そして陽光の力が宿る刀には、人の想いをのせることが出来る」

 私がまだ小さな子どもの頃、どこかからかかってきた電話に祖父が何度も謝っていた。祖父が以前作った刀がまた暴走して、呪術師が一人亡くなったらしい。
 私は祖父の作った刀が好きだった。
 美しく、強く惹きつける魅力があった。

「君は──使いこなせるのか? ここで作られた刀は、人から妖刀と呼ばれるほどだ。君からは強い意志を感じるが──」
「……お客さんかい?」
 奥から声がかかる。声の主は年老いた祖父だった。目を細めて青年を見つめたあと、ふと何かに気付いたように、瞳を見開いた。
「あんたは、もしかして──」
「灰原です!」
「そうか……苗字を変えたのか」
 その言葉に、私も思わず祖父の顔を見た。
「そりゃそうだな。うちの刀を使えなくなったら、その苗字にするって、あの子が言ってたからな──」
 祖父の言葉を聞いて、私は困惑した表情を浮かべる。
「彼の家は、炎の剣技を扱う一族だった。しかし、ある時期からぱったりと炎の剣技を扱えなくなった。呪術師界ではよくある話だ。普通ならそこで、呪術師からも足を洗うもんだが──お前さんはどうして?」
 彼は微笑んだ。
「もう二度と失わないためです!
──良ければ僕の剣技を、一度だけでも見てもらえませんか?」

 祖父を連れて、外で彼の剣技を見ることになった。
 刀を構える彼の呼吸音が静かに聞こえる。

「……嘘だろ」
 彼の振るう刀に炎が見えた。
 後から知ったのだが、彼が持っていた刀は、以前ここで作られたもので、高専に残っていた最後の一振りだった。
 彼と共に何度も任務に赴いたのだろう、その刀は刀としての限界を迎えつつある。

「──まさかまた刀を打つことになるなんてな」
 年老いた祖父が、再び背筋を伸ばし立ち上がった。


●12

 メイド服姿の女性、黒井さんが私たちに紅茶を用意してくれていた。
「黒井のいれた紅茶はめちゃ美味いのじゃ」
「わーい! 楽しみー」
 せいらと星漿体のやり取りを微笑ましく見守っている。
「お、お前ら! 俺を倒していい気になるなよ!
ここにはQの最高戦力、バイエルさんが来てるんだからな!」
 私の呼び出した呪霊にまとわりつかれ、身動きのとれないQの構成員が悲鳴を上げていた。
 メールの着信音がして、携帯画面を見る。
「バイエルって、もしかしてこの人?」
 携帯画面をQの構成員に向けると、
「……その人、ですね」
 Qの構成員をボコボコにした姿を自撮りで送ってきた悟。画面の端に写っているそよかは呆れ顔だった。
「呪詛師もやめる! もちろんQもだ! 田舎に帰って米を作るからー!」
「──呪術師に農家が務まるかよ」
「すぐるー。紅茶おいしいよー」
「お、お嬢ちゃん! 可愛いね! 天使のような愛らしさだ! 君からもこいつになんか言ってくれ! 頼む!」
 私が聞く耳を持たないからと、せいらにまで声をかけはじめた。せいらはきょとんとした顔で紅茶をテーブルに置くと、
「じゃあ、このこたちあなたとチューしたいって言ってるから──」
 頭だけの呪霊のはずが、相手を求めるような腕がにゅるりと生える。
「してあげてください」
 せいらはにっこりと微笑んで言った。この子というのは、Qの構成員を拘束している呪霊のことだ。
「ひ、ひぃ……」
 微笑みながらせいらが別個体の呪霊を手にして、じりじり近付いていく。

【暗転】

「なんでこんなことになってんのか──」
 悟が空を仰ぐ。
 星漿体、天内理子の強い要望で彼女の学校での生活を見守ることになった。
「命が狙われてるって自覚が、足りねぇんじゃねぇの?」
「まぁ、そう言うなよ悟。『天内理子の要望にはすべて答えよ、との天元様のご命令だ』と先生も言っていたじゃないか」
 黒井さんも申し訳なさそうに頭を下げる。彼女から星漿体の生い立ちを聞いた。
「せいらとよそかも一緒だし、私たちは少し離れたところから見守っていよう」
 せいらとそよかはこの学校への編入を考えている女子生徒として、星漿体と行動を共にしている。
「楽しそうだ」
「ちやほやされていい気になってやがるな」
 せいらが周囲に笑顔を振り撒くのはいつものことだが、そよかも普段とは違い柔らかな微笑みを浮かべている姿が遠目でも確認できた。
「あんな風にも笑えるのか……俺といる時は、滅多に笑わないのに──」
 ぽつりとそんなことを言う悟に、
「悟は、そよかにもっと笑顔でいてほしいのか?」
「!? なしなし! そんなこと思ってもいねーよ!」
 私の言葉に「はっ」とした表情をした悟だったが、直ぐに撤回してしまう。
「傑、見張りの呪霊は?」
 やれやれと肩をすくめると、見張らせていた呪霊が二体祓われたことに気付いた。
「悟は急いで礼拝堂に向かってくれ、呪霊が二体祓われた。黒井さんはひとまず私と一緒に──」
「わかりました!」


「……はにゃん!?」
 せいらがびくりと身体を震わせた。耳元にはせいらが、みみんと名前をつけて可愛いがっている傑の呪霊がニタニタと笑っている。
 異変を察知したそよかが、せいらに声をかけた。
「せいら?」
 むぅと唇を尖らせるせいら。気を取り直して聖歌を歌唱中の理子の袖を引き声をかけた。
「侵入者だって。りこちゃん」
「なんじゃと?」
「表で悟も待機しているみたい。ここを出ましょう」
 そよかに促されて理子が窓の方を見ると、五条悟の姿が確認できる。
「──そうじゃな。わかった」
 これがきっと、学校の友人たちとの最後の思い出になるのだろう。そう思ったのか、理子はどこか寂しそうな表情を浮かべた。せいらとそよかも、理子の気持ちは痛いほど理解できたから──そっと寄り添うように見守っていた。