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②五条悟が苦悩しながらも青春を謳歌し大団円を迎える話:黎明後

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●19

 俺は焦っていた。焦っていたから見誤った。
 そんな焦りすら、あの男の思惑通りになった。

「──ようやく、術式頼りの守りに入ったな」

 無下限呪術を纏った俺に、男の刃は届かないはずだ。
 ──しかし、現実は違った。
 男の振るった刃はことごとく、俺の身体を切り裂きさいていく。スローモーションのようにゆっくりと。
 焼けるような痛み、飛び散る鮮血。

 ──何もかもが赤く染まっていった。


 ……真っ暗になった視界に光が差した。
 死ぬ間際で会得した反転術式。
 周囲には先ほどの男も、呪霊もいなかった。
 思ったより時間がかかってしまったようだ。

 何もかもが見え、理解出来てしまう。
 それがまるでひどく面白いことのように感じて、笑いが込み上げてくる。

 そして俺は、あの男を見つけ出し戦いを挑んだ。
 今は何よりあの男を見つけ出して決着をつけないといけないと思ったから。

 とても気分が良かった。
 晴れやかな気持ち。
 清々しくて戦っていることすら、どうでもいいと感じるほどの全能感。

 男は知っていた。五条家の人間がどんな術式を使うのか。だから対策が出来ていた。それならば──

 順転と反転を衝突させ生じるのは、五条家でも限られた者しか知らない術式。

 虚式 『茈』

 男の身体の一部を吹き飛ばした。

 明らかな致命傷、反転術式でも治せない。それでもこの男が立っているのは、それだけの実力者ということだろう。
「最後に何か言い残したいことある?」
 男に声をかける。
「──これで終わりか。ここまでやられるとは思っていなかったぜ……このまま見殺しにするつもりか?」
 男は誰にともなくそう言った。
「何を言って──」
「悟!」
 そよか、せいら、傑まで。慌てた様子で走ってくる。
「あなたを一人にしてしまってごめんなさい」
 今にも泣き出しそうな表情でそよかは言った。
「無事だったんだな」
 ホッと息をつく。急に現実に引き戻されたような……。
「そよか! おじさんがたいへん!」
 せいらが慌てている。
「お願い」
 そよかが腕を上げると、白猫の姿をした呪霊が腕に据えた。呪霊? 本当に呪霊か? 俺の六眼はその白猫に途方もないエネルギーを感じてぞくりと震える。
「力を貸して──」
 そよかが白猫と額同士を合わせると、白猫の姿がそよかの中に消えた。

 莫大な呪力がそよかを中心に渦巻き始める。
『其は長き旅の果ての到達者、其は厳しくも温かい運命導き手、開門せよ──癒しの力を、私に!』
 まばゆい光が視界を埋め尽くす。