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ミアキスの野望

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 真っ先に、エレベーターから降りてきたラハルを見つけたのは、彼の幼馴染であるミアキスだった。その姿を見つけたとたん、嬉々として駆け寄っていく。
「ちょうどよかったわぁ、ラハルちゃん〜。ラハルちゃんにぃ、ぜひとも例のスキルを披露してもらいたい人がいるのぉ」
 例のスキル、と聞いて、他の3人は顔を見合わせた。スキルと言えばアレだろう。
 しかし、ラハルが持っていたスキルと言えば、他の皆も知ってのとおり、基本スキルに加え、伝承スキルがいくつか。それ以外の固有スキルがあるという話は聞いたこともない。
 しかし、カイルだけがなにやら悟ったのか
「こりゃ、王子も大変だなぁ……」
と、ぽつりとつぶやいた。
「何のことだ?」
 ロイは未だにわからず、リオンに尋ねる。しかし、リオンも知るはずもなく、首をかしげるばかり。
 それもそのはず。ロイはゴルディアスに行くことになったとき、ダハーカの上で王子の身代わりを務めていたわけだし、リオンに至ってはケガで寝込んでいた上に、女の子であるからゴルディアスに入れるわけもない。二人とも、例のイベントを見ていないわけで。
「まあ、実際に見てみればわかることさ」

 と、年長のカイルは苦笑しながら首をかしげる二人をミアキスとラハルの方へ誘った。
 近くに寄ると、改めてミアキスとラハルの会話が聞こえてくる。
「あのねぇ。王子と姫様ってとってもよく似てらっしゃるじゃない? だから、王子に亜麻色のかつらを被ってもらってぇ、女の子のカッコしてもらえばぁ、姫様そっくりになるんじゃないかしら〜って思ったんだけどぉ、いくら王子におススメしても、やってくれないのぉ。どうしたらいいかしら、ラハルちゃん、何か名案なぁい?」
 楽しげながらも思い通りにならず、やきもきしているミアキスの口調だ。それを聞いて、ラハルはくすくすと笑う。さすが幼馴染。慣れているのか、突飛なミアキスの言葉にも動じない。
 むしろ、
「そうですねぇ……」
と、解決案を探るように周りを見渡し。ふと、その視線がカイルに誘われて近づいてくる二人の一方に止まった。
 にっこりと、ラハルの顔に浮かぶ怪しげな笑み。その笑みをまさしく向けられた彼は、ぞっと、直感的に全身の毛を逆立てた。
「ミアキス。この際だから、別に王子ご本人にお願いしなくても、いいんじゃないかい?」
 え? とその言葉にミアキスも振り返る。そして、ああ、と納得したようにうなずき、ラハルと同じ、いやそれ以上に怪しく真っ黒な笑みを満面に浮かべたのだった。
 コレには、彼の両脇にいた二人もぞっと鳥肌を立たせ、思わず彼からさすが女王騎士といわんばかりのスピードで二歩ばかり後退った。
「そういえば、なんで今まで気がつかなかったんでしょう〜」
 ふふふ、と妖しげな笑みをますます濃くさせて、ミアキスは一人真っ青になって立ち尽くすロイに歩み寄る。
 ロイはといえば、その笑みによってまるで石にでもさせられてしまったように、一歩も動けなかった。
「ロイ君……」
「ご愁傷様……」
 両脇の二人から、憐憫の眼差しが送られた。
「そぉですよねぇ〜ロイ君なら、王子とそ〜〜っくりなんだからぁ、姫様ともきっとそ〜〜っくりになりますよねぇ」
 にっこりとしたミアキスの笑みがすぐ目の前。その顔は、暗に嫌とは言わせないと言っている。
 ひぃっと声にならない悲鳴がこぼれた。
 なんで王子はこの顔に迫られて逃げることができたんだと、ロイは思わずにいられなかった。
 一歩でも動けば、ばっさり後ろからヤられてしまいそうな。
「まあまあ、ロイ君そう固くならずに」
 不意にラハルの手が優しくロイの肩に置かれた。しかし、ロイにとってはそれはもはや後ろへの逃げ場も奪われてしまったと同然。
 ますます青くなるものの、ラハルはそんなことに気づいていないのか、それとも気づいていても楽しんでいるのか、相変わらず穏やかにロイに話しかける。
「これは、たぶん、ロイ君にとってもいいことだと思うよ」
「な、んで……」
 下手をすれば悲鳴しか出てこないのに、それでも必死にロイは声を絞り出した。
「確かこないだ、言っていたね。 誰かのことを演じるのは面白い、この戦いが終わったら、役者を目指すのもいいかもしれない、なんて」
「そ、それは、言ってたけど……。そ、それとこれと何の関係が……!」
 誰か助けてくれと思わずロイは、いたはずのリオンとカイルの姿を探したが、二人はもはや我関せずといった風。
「そ、それでねリオンちゃん、昨日の王子ったらね〜」
「え、ええ、王子もたまには息抜きしないと……」
 わざと、別の話題で盛り上がろうとしているのが見え見えだった。
「裏切り者っ!!」
 思わず叫ぶも、二人とも申し訳なさそうな後姿しか見せない。
 代わりのように、ラハルのもう一方の手もロイの肩に添えられる。振り返りたくないのに、振り返らずにはいられない。ロイは振り返った先で、心底楽しんでいる表情の、ラハルを見た。
「知っているかい? ロイ君。演劇界の有名な話なんだけれど。演劇の世界には、我ら竜馬騎士団と同様、女性は入ることができないという掟があるんだよ」
「そうなんですよ〜。私も以前役者を目指そうと思ったこともあったのにー……。やっぱり断られちゃったんですよねぇ〜」
 ミアキスも、本気で残念そうな顔で、うなずく。
 それがあまりにも真に迫っていたので、思わずロイは問い返していた。
「そ、そうなのか……? じゃ、じゃあ、女の役は……?」
 その瞬間、ミアキスもラハルも満面の笑み。
 問いを投げたことを、すぐさま後悔したロイだった。
「それはもちろん、女役が似合いそうな男の役者が、ですねぇ」
「だから、ロイ君、もし役者を目指すなら、今のうちから覚悟しておかないと」
 ずずいと、更に迫ってくる笑み二つ。
 それ以上問わなければいいと頭ではわかっているも、この笑みを前に、それ以上話を進めなければ、逆に怖いことになるという感覚が本能で感じ取れた。
「な、なんで……」
「だって、ねぇ?」
「ねぇ?」
「ロイ君ならぁ、きっと舞台の花形役者になれますよぉ」
「想像してご覧。 満員の観客席! 自分に向けられるスポットライト! 芝居の最後には満場のスタンディングオペレーション!」
「ロイ君だったらぁ、夢じゃないですよぉ! リオンちゃんもそう思わないぃ?」
 不意に、リオンに向けられたミアキスの眼差し。
 え、っとリオンが一瞬と惑うも、そうですね、とややぎこちない笑みだが、同調する。
 それが、ロイには効果テキメンだった。
 ぎこちなさなどはすっかり目には入らず、リオンが笑みを浮かべてうなずいた。それだけで、ぱっとロイの背後に花が沸いたよう。
「え、そ、そうか? えへ、へへ、そおかなぁ……」
 でれでれと、気分良く笑うロイの影で、ミアキスとラハルがしてやったり、と黒い笑みを浮かべたことは疑いようがないと言うのに。
「でも、安心するのはまだ早いよ、ロイ君。演劇の世界は浮き沈みが激しいんだ」
「だ、か、らぁ、今のうちから、練習、しなきゃですよぉ〜」
「お、おう、そ、そうだな……」
作品名:ミアキスの野望 作家名:日々夜