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閉じ篭った心の行方

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闇に向かう懺悔




 ねえ、どうして?
 どうしてきみはここにいないの?


 暮れ行く緋色の太陽が、墓地の白い墓石を茜色に染めてゆく。
 まるで、この土の下で眠る兵士ひとりひとりの血が墓石から噴き出すかのように。
 この墓石に刻まれた名は、皆先日のあの戦いで死んでいったものたちだった。
 今までで、最も犠牲が大きかった戦い。
 この城を守るために、多くの人を失った戦い。
 自分の、間違った選択のせいで!
 そのせいで、彼は消えてしまった。
 自分の代わりに、何十もの矢をその身に受けて……。
 自分があんな選択さえしなければ。
 自分があんなわがままを言わなければ!
 過去なんて必要なかった。
 あの時は何よりも大事だと、守らなければいけないと思っていた、みんなとの思い出?
 そんなもの、彼がいないことに比べれば、どうだって良かったのに!

「ぼくのせいだ……」

 白い墓石の前に、細く長い影が落ちる。
 影に隠された名は、「ロイ」
 すべてを犠牲にして、すべてを救った英雄。
 以前は王子の偽者として山賊行為を働き、セーブルを荒らしまわっていた。
 ついこの前までは、この城で時々王子のふりをしてみんなをおちょくって笑っていた。
 そんな姿も、もはやこの城の中を、いや、この世界すべてを探しても、どこにも見つけることはできない。
 あるのは、この城を救った英雄として、その墓に名を刻まれているだけ。

「こんなもの、いらないのに……。きみさえ、いてくれたなら……」

 そんな彼らしくもない名を覆い隠すように、ファルーシュは冷たい墓石にすがりつく。
 あの戦いの前日、部屋に戻ったファルーシュを彼が待っていたあのときのように。
 でも、あのときとはまるで違う。あのとき温かかった彼の腕の中は、もう永遠に戻ってこない。
 あのときの口付けの意味も、何も語られないまま。

「ひどいよ……」

 何も、何も伝えてはくれなかった。
 優しさの意味も、みんな彼が持っていってしまった。

 いや、ひどいのは自分。
 彼にあんな選択をさせてしまった自分。
 自分だって、何も伝えなかった。
 彼に何も与えなかったのは、すべて、自分のせいではないか。

「ごめ……っ……」

 とめどなく流れ落ちる涙は、無機質な墓石の上を、ただ伝い落ちていくだけ。
 受け止められることも、拭い去ってくれることもなく、冷たい地面に吸い込まれ、消えていく。

「ごめん、ロイ……っ」

 薄闇が、辺りを包みこむ。
 最後の光も、大地の向こうへ消えていく。
 静かな、冷たい闇だけが、ファルーシュの背後に忍び寄り、ひそかにその心の奥底を蝕んでいくのだった。
作品名:閉じ篭った心の行方 作家名:日々夜