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POPO

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 まず朝。普段の服を身につけようとしたエドを止めたのはグレイシアだった。デートなんだから可愛い格好をしなさい、と。この単語にヒューズは機嫌を降下させ(エリシアの将来に置き換えたか、エドの事も娘の枠に入れているのか、さてどちらだったのだろうか)、アルは困ったように笑った。「可愛い服」など持ち合わせがない事を知っていたのと、デートねえ…、と思ったからである。
「エリシアが大きくなったら着せようと思っていたのだけど」
 当然のように「そんな服ないよ」と答えたエドに、グレイシアは問題ないと笑い、そんなことを言った。
「…?グレイシアさん?」
「私が結婚前に着ていた服でね、とても気に入っていたの」
「…もしかしてあのグリーンのワンピース?」
 エドの頭を飛び越えて、ヒューズが驚きの声を上げる。
「あら、覚えててくれたの?」
 そんな夫に、彼女は目を細め首を傾げて問うた。
「そりゃ君の着てた服なら」
 ヒューズは大真面目に答える。
「そう、あのワンピース。可愛かったから捨てられなくて…さすがに今は着られないけど、少し直してエリシアに着せようと思ってたの」
 グレイシアは笑って、エドの顔を覗き込んだ。
「今のエドくんに、きっとちょうどいいと思うの。着てくれないかしら?」
「えっ? …だ、だって…、それ、大事な服でしょ?」
 エドは赤くなって、しどろもどろに辞退する。今のやり取りからすると、それはヒューズ夫妻にとっても思い出のある服に違いない。加えて、エリシアに着せようと思っていたなら…、それこそ先にエドが着てしまうわけにもいかないだろう。だが、グレイシアは首を振った。
「大事な服だから、エドくんに着て欲しいの」
「え…?」
 そこでグレイシアは腰を屈め、エドの耳に囁いた。男達には聞こえないように、そっと。
「―――だって初デートでしょう?」

 エドが服を着せられ髪を手入れされている間(グレイシアは楽しそうだったし、並んで髪を結われているエリシアも楽しそうだった)に、約束の時間が近づいてくる。そして五分前、ヒューズの家の呼び鈴が鳴った。手が放せない女性陣に代わり、―――というよりむしろ自発的に、ヒューズが出る。
「この番号は現在使われておりません」
 …訂正。出ていなかった。
「…私は呼び鈴を鳴らしたのであって電話をしたわけではないんだがな…」
 ドアの向こう、ロイがぽつりと呟く。
「当家には妙齢の女性がいるためふしだらな男性を入れるわけにはいきません」
 しかしヒューズは攻撃の手を休めない。新たな返答に、ロイは溜息をついた。もはや言い返す気も起きない。
「…ふしだらって…おまえな…」
 ドアを挟んで繰り広げられるのは、娘を持つ父と娘の恋人の会話、…に近い。少なくとも親友同士のそれではない。そのうちヒューズが激昂して「とっとと帰れ」と言い出さないか心配である。…ご近所の評判が…。
「ヒューズ。…色々教えてやってくれと頼みはしたが、邪魔してくれとまで頼んだ覚えはないぞ」
「お生憎様、これは俺の純然たる好意でやってることだ」
「純然たる好意ねぇ…」
「おまえみたいな男にほいほい娘ついていかせる親なんか世の中に絶対いねぇぞ、はっきり言って」
「…はっきり言いすぎだ。…まさか鋼のにそんなことしやしない」
「そんな事?そりゃどんな事だ?え?」
「…おまえ、…揚げ足を取るなよ」
 ハァ、とロイは溜息。
「門限には返すさ、…『お父さん』」
「うえぇっ、気持ちわりい!お父さん?!お父さんだと?!」
 とうとうヒューズはドアを開けた。そして、がっしとロイの胸倉を掴む。
「おまえが父親風を吹かすからだろう?」
 しかしロイは動じることなく、落ち着いてそう返す。今度は、溜息をついたのはヒューズだった。
「…門限は守れよ」
「門限? …善処する。しかし何時だ?」
「五時」
「…待て。夕方五時?」
 そうだ、とヒューズは重々しく頷いた。ロイは眉間に皺を寄せる。
「そんな時間が門限では夕飯も食べられないじゃないか!」
「当たり前だ。エドはまだ十五にもならねぇんだから、夕飯は家族で食うもんだ」
 きっぱりとヒューズは言い切った。
「…おまえ、…十年後も頑張れよ…」
 確実にエリシアが思春期になった時勃発するであろうヒューズ家内紛の様子を想像しながら、ロイは力なくそう答えた。


 ―――かきっとしたVネック、ウエストよりもほんの少し上についた切替しからはボックスプリーツのスカートが繋がっている。落ち着いたモスグリーンのワンピースの下、襟に覗くのはふんわりとしたレースのキャミソール。スカートのプリーツも少し変わっていて、プリーツの底の部分、開くと見える下のあたりにレースが使われていた。袖はなかったが、上に羽織った白のカーディガンで機械鎧はほとんど隠れていた。カーディガンはといえば、裾がひらひらとしたレース調で、動くときれいなシェイプを作る。足はタイツを穿いていつものブーツだ。時間があったら編み上げブーツを履かせたかったわ、とはグレイシアの言である。
 可愛かったが、思ったよりも落ち着いた色とデザインでエドは内心ほっとした。あまりに可愛すぎる服だったらきっと照れてしまったと思うのだ。
 まあ、グレイシアが結婚前に着ていたと言うなら、そこまで奇抜なデザインでもなかろうが…。
「エドくんは色が白いから、こういう濃い色がすごく映えるのね」
 急ごしらえでスカートの裾を上げながら、グレイシアは楽しげに言った。
「エリシア?お姉さん、かわいいね」
「…エドおにいちゃんはおねえちゃん?おにいちゃんでおねえちゃんなの?」
「そうね、おにいちゃんでおねえちゃんなのよ」
 エリシアは転びそうなくらい大きく首を傾げた後、ぱあっと顔を輝かせた。
「エリシア、エドおにいちゃんもおねえちゃんもすき!」
 そしててらいなく言うと、きゅっとエドの足に抱きつく。
「え、エリシア…」
 エドは驚くが、ふふふ、と笑ってエリシアは離れようとしない。
「エドおにいちゃんは、おねえちゃんで、エリシアはおにいちゃんもおねえちゃんもいるんだね!すごいね!」
 にこっと笑って、エリシアにそう言われてしまえば、それ以上離れろともいえないエドだった。


 すったもんだで大騒ぎした挙句、約束の時間を十分ほども回った所でようやくエドが出てきた。その頃になると、最初こそ下らない攻防を繰り返していた親友同士もそのやり取りに疲れていて、世間話を始めていた。どこそこの誰それがどうのこうの、というような話を。
 …要するに仲がいいのだ。
「お、…おまたせ…?」
 別に照れることじゃないだろ、とエドは自分に言い聞かせながらブーツを履いて外に出る。ヒューズ家では室内履きを借りていた。
「お」
 現れたエドを、男達が振り返る。手持ち無沙汰になっていたアルもその時にはそこに出てきていた。
「懐かしいな〜、そのワンピース。でもちょっと丈詰めたな」
「…何が言いたいんだよ」
「グレイシアも似合ったけどエドも似合うって言ったんだよ」
 ヒューズは笑って、口を尖らせたエドを頭から引き寄せた。
「気をつけてな、エド。ロイにも言ったが、門限は五時だぞ」
「はっ…?五時…?なんで?」
作品名:POPO 作家名:スサ