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 美術館を出てしまえば、しんみりした空気も消えていた。からっとした空の下、明るい光がエドの金髪をそれこそ先ほどの宗教画に一緒に描かれていた天使の金冠のように光らせる。…グレイシアの手腕に、ロイはとにかく感服した。
「大佐大佐、昼飯にしよう!」
 木々の間開けた芝生につくと、エドは早速そう提案した。勿論、ロイに否やのあろうはずもない。
 たんぽぽやシロツメクサの混じる芝生にシートを広げながら、ふたりはランチの準備をする。日は高く風は穏やか、絶好のピクニック日和だった。
「えっと、サンドイッチと、フライドチキンと、あと、…」
「随分たくさんあるね」
「うん、グレイシアさんが。きっと今日は天気が良くて気持ちがいいから、たくさん食べられるわ、って」
 自分達の経験を踏まえての事か?、とロイは内心こっそり笑う。
「大佐、はい」
「…? …!ありがとう」
 手拭用の濡れタオルを渡され、ロイは目を瞠る。随分こまやかな気配りだ、と。
「これは、君が?」
「ん?グレイシアさんが持っていきなさいって。あ、オレ作ったんだぞ!作ったのはオレだかんね!」
「…たくさん用意してくれて、ありがとう」
 ロイは目を細め、とても大事な物を見るような目でそう礼を述べた。エドはそんなロイの態度に一瞬ぼうっとした顔を浮かべたが、すぐに我に返り、うん、と嬉しそうに頷いた。
「…食べよ?」
 わずかに赤味の残る頬をして、エドはそう誘った。ロイはいただきます、と丁寧に応じて、ランチが始まった。

 サンドイッチはパンから具が自由奔放にはみ出していたり、パンの端がよく切れていなかったりもしたが、味自体は美味しかった。素直に褒めればエドはひどく嬉しそうな顔をして、ロイまで嬉しくなる。
「だってさ、大佐に負けっぱなしじゃ悔しいじゃん」
「…?何か勝負したか?」
「違うよ!卵割り!」
 この答えに、ロイは、あっと軽く目を瞠る。そういえばそんなことがあった、と。
「大佐は片手であんなに器用に割れるのにさ、…悔しいじゃんか」
 だからオレも頑張った、と。エドは胸をそらし気味にそう言うのだ。得意げに。
「なるほど。…さすが、君は努力家だ」
「まぁね!」
 ふふん、とエドは笑う。ロイは噴出しそうになったが何とか堪え、ああ、さすがだ、ともう一度繰り返す。
「これな、いっこはスクランブルエッグとベーコンで、もういっこはポテトサラダで、えーっと…あとはトマトと…」
 エドは指折り数え出す。その無心な横顔は、見ているだけでこちらも笑顔になれそうな物だった。胸が、くすぐられるように温かく満たされる。
 何でもしてやりたいと思ったし、何でも叶えてやりたいと思った。何者からも守ってやりたいと。何の打算もなく、だ。
 そんなことはロイにとって初めてのことだった。ただ見ているだけで満たされる、そんな関係は。だから自分が真実エドをどういう風に見ているのか、それは自分でもあまりわかっていない。だがそれでいいと思っているのだ。少なくとも、まだもう少しの間は。ただ見守っていられればいいと。
「…大佐?聞いてるか?」
「聞いているよ」
「…ほんとかよ…、なんかぼーっとしてるじゃん」
 エドは疑わしげにロイを覗き込んできた。
 …こんな風に、警戒の欠片もなく近づいてくる。それが嬉しい。あけすけな顔を見せてくれるのが。
「本当さ。…君こそ、お腹いっぱいになってしまったんじゃないのか?」
 口数が増えてきたエドに、からかうような声をかければ、彼女はお腹を抑え、考え込むような顔をしてみせた。
「…そうかも?」
 あどけなく小首を捻るので、ロイはとうとう噴出してしまった。
「あっ…なんだよ、感じ悪いな」
「い、いや…」
 何とか笑いを噛み殺そうとするのだが、どうしても殺しきれず肩が揺れてしまう。エドはむすっとした顔をするが、それさえ可愛く思えるのだから末期だ。
「…なんだよ、もう!」
「すまない、怒らないでくれ」
「怒ってねぇもん」
 ぷい、とエドはそっぽを向いた。
「むっとしてんだもん」
 この答えに、ロイはさらに笑いが止まらなくなったのは、言うまでもないだろう。
「…大佐の馬鹿、あと三十秒以内に笑い終わらなかったら絶交だからな!」
 そしてとうとうエドがむくれてしまったのも、また。

 どうにかこうにかエドに機嫌を直してもらって、食休みとばかり、ふたりはごろんとシートに横になった。エドはワンピースという事もあり、ロイは自分の上着を掛けてやった。シャツ一枚では寒い陽気はとっくに終わっている。
「…なー、大佐あれ作れるか?」
「あれ?」
 他愛のない話をしていたふたりだったが、不意にエドは話題を変えてきた。肘をついて顔を起こしたロイは、エドをのぞきこむようにしながら首を傾げる。
 するとエドも半身を軽く起こして、シートのまわりにも咲いているシロツメクサを指差した。
「冠」
「…ああ…、花冠か」
 そう、とエドは頷いた。
「オレ不器用だったからどうしても作れなくてさ〜、いつもウィンリィに馬鹿にされてたんだ」
 懐かしそうに目を細め、エドは言う。
「でもそれで喧嘩になると、やめなよ、ってアルが作ってくれるんだ、いっつも」
 そうすると今度は取り合いになるから、アルは結局いつも二人分作ってくれたものだった。そしてエドとウィンリィのふたりの頭にそっくり同じ冠を載せて、ふたりともお姫様みたいだね、と笑っていたのだった。
「…よく考えたらあいつ昔からよく出来た弟だよな…」
 はた、とエドは今更気づいた事を口にする。ロイはくすりと笑う。なんだかその光景が目に浮かぶようだったからだ。
「…君は弟には何か作って上げなかったのかい?」
「オレ不器用だから作ってやりたくても出来なかったの!アルは器用なんだけどなぁ…」
 エドは悔しそうに口を尖らせる。しかし、あ、と閃いた顔をし、ぷちっと一本、シロツメクサを摘み取った。
「………?」
「大佐、手出して」
「…? …これでいいか?」
「うん」
 こくりと頷くと、エドはロイの指を適当に取り、摘んだばかりのシロツメクサの茎をくるくると巻きつける。
「指環〜」
 へへ、とエドは笑う。
「冠とかは絶対作れなかったから、じゃあオレはアルに指環あげるね、ってこうやってたんだ」
「そうか…」
 嬉しそうに語るエドの頭に手を伸ばし、ロイも笑う。
「大佐にも上げるな」
 そして、エドは何でもないことのようにそう言った。
「え?」
 軽く驚きを表すロイに、エドはくすりと笑って小首を傾げる。
「…だって大佐もオレに指環くれるんだろ?」
 続く言葉に、さしものロイも言葉を失ってしまった。確かにそんなことを言った事があったが、…まさかエドが覚えていると思わなかった。
 ―――まして、それを歓迎してくれていたとは。
「オレ、大佐にいっぱい、嬉しいのもらってる。美味しいもの食べさせてくれるし、色んなもの探してくれるし、…中佐のうちに泊まらせてくれって頼んだのも大佐なんだろ?」
「…鋼の…」
 呆気に取られるロイに、花が綻ぶような顔でエドは笑った。
「オレ、嬉しかったよ。大佐。いつもありがとう」
「…そんな、…礼なんて」
作品名:POPO 作家名:スサ