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暴走王子と散々な影武者

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ゲオルグの帰還



「ロイー、ロイってば〜〜!」
「来るんじゃねぇ、この変態〜〜〜!!」
 久々にレイクファレナ城に帰還して、ゲオルグがまずしたことは、言葉を失うことだった。
 お前、そんなに素早さの値高かったか? と思うようなロイの逃げ足を、2周目の移動速度をはるかに超えるようなファルーシュの足が追いかける。
 まさに風のような。そんな二人が、城中を逃げ回り、追いかけまわっていた。
「一体、何があった……」
 呆然と、そんな光景を見てゲオルグはようやくそれだけ呟いた。
「あ、ゲオルグ様お帰りなさいませ。お二人のことはいつものことですから、お気になさらずに」
 ゲオルグに気がついたルセリナが、あの二人の光景を見てもそんな風に落ち着いて平然と告げて通り過ぎていく。その状態にぎょっとしてしまって、慌てて他を見渡す。しかし、ファルーシュとロイの行動をだれも怪しむことすらせずに、のんびり茶を飲んでいる者たちまでいるのだから呆れるを通り越して薄ら寒かった。
 ここしばらく帰らないうちに、自分の方がおかしくなってしまったのだろうか。ゲオルグはくらりと倒れそうになる身体を必死で支えた。
 のに。
「捕まえたーっ! もう、これからめくるめくロイとの素敵な夜を過ごそうって言うのに、なんで君はこんなにもぼくを焦らすのが得意なんだろうね、ロイ〜っ」
「焦らしてねぇ〜〜!! 誰か助けてーー!」
 ごんっと、ゲオルグは思い切りレイクファレナ城の石の壁に前頭葉を打ち付けた。
 悲鳴を上げるロイをにこやかに麻縄で縛り上げ、ファルーシュはずるずると自分の部屋へとひきずっていく。一体、ファルーシュに何があったのか。
 ついこの間までは、あんなにも儚げで、自分がこいつを守ってやらねばと思わせるような、そんな愛くるしい少年だったというのに……。
「ああっ! そこにいるのはゲオルグのおっさん!! あんたはまともだよな! 頼むからこの変態をどうにかしてくれぇっっ!!」
 王子を変態呼ばわり。普通なら、親友の息子をそんな風に言われればゲオルグはロイのほうを切り捨てたい衝動に駆られただろうに。
 むしろ今は、震える手が剣にかかるものの、何を斬り捨てればいいのか。
 だが、この状況を放っておくには余りにもロイが可愛そうだ。男なら潔く散れ。認めたくないものを思い切ってゲオルグは直視した。
「ファルーシュ、お前にこういうことは余り言いたくないが、ロイが嫌がって……」
「ゲオルグ、これから僕はロイとP〜〜〜で、P〜〜〜でP〜〜〜な夜を楽しみたいと思っているんだ。いくらゲオルグでも、僕の邪魔をするなら、容赦はしないよ?」
 すっと取り出されたるはLv16三烈神皇棍。いや、待てそれはゴドウィン城に乗り込んでからじゃないと手に入れられないはず……。しかし、よくよく見ればファルーシュのスキルが王道楽土までSSなのだから、全身の血が下がるのをゲオルグは感じた。
「いや、何でも、ない。邪魔してすまなかったな……」
 ロイの「裏切り者ーーー!!」と泣き叫ぶ声が辺りに響いたのだが、あえてゲオルグはその声を聞かなかったことにした。
 だがしかし。
「フェリドよ……。オレはお前の息子の育て方を間違えたかもしれん。すまん……っ」
 愛用の太刀を抜き、きちんと正座をして、涙ながらにゲオルグはその切っ先を己の腹にあてがった。
「ゲオルグ殿、はやまってはいけませんーーー!!!」
 直後、誰かの悲鳴がロイの悲鳴に重なって本拠地を駆け抜けたが、どくどくと流れる血の涙が、ゲオルグの周りを血の湖に変え、それは伝説となった。とかなんとか。

作品名:暴走王子と散々な影武者 作家名:日々夜