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My lover is selfish

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「何を誤解したかはしらないが、全く見当違いだからな」

彼を用意された客室に連れ込み施錠した後に言った。
ロマーノはとても怒っているらしく、顔を赤くしてすごい目でにらみ「何も勘違いしてねーよ!」と怒鳴った。
「じゃぁ一体何を怒ってるんだ」
「別におこってねー!!!」
「それが怒ってない態度か?」
「これが普通だ!このヤロー!」
まさか、そんなわけがない。
女性に対するのとは違って(俺に限らず)男にはツンケンしている彼だが、さすがにこれはない。
頭から湯気を出しそうにしているロマーノに、とりあえず座るようにと言うと彼はベッドのふちに座ってまた俺をにらみつけた。
俺は、ヴェーヴェー鳴く男と、プープー拗ねる男の扱いには割と慣れているのだが・・・ロマーノの機嫌をとるのは苦手だ。
なだめようとして逆にもっと怒らせてしまうことも多い・・・。
彼はとても気難しいのだ。
俺は備え付けの冷蔵庫からミネラルウォーターのボトルを一本とって彼に渡し、その隣に腰掛ける。
彼がひと口水を飲んだのを見届けて、
「落ち着いたか」
と聞くと、またキツク睨まれてしまった。
「頼むから機嫌を直してくれ、ロマーノ」
「別に・・・」
「だったら何故、黙って帰ろうとしたんだ?」
互いに忙しく会えたのは久しぶりだった。
せっかく今日はゆっくりお前と過ごせると思っていたのに・・・と、恨みごとのように言うと、彼は顎を引き目を泳がせた。
「お・・・俺だって・・・」
後半はとても小さくて聞き取りにくかったが、同じ気持ちであったということは確認できた。

ここで先程の女性の事を話に出すこともできるのだが・・・これはあまりいい判断ではないように思う。
彼の性格からして、不用意にこちらからその話をしても逆上を誘うだけの公算が高い。
彼はとても気位が高いのだから。
それに、大体ヴェネチアーノは彼が彼女との仲を誤解したように言っていたが、それが本当であるという確証はない(最初に否定されてもいる)。
だいたい、なんだか俺がそれを口にするのは自意識が過剰すぎる気がする。
そもそも俺はロマーノと違って女性には決してもてるタイプではないのだから。

どう切り出すべきか考えていたのだが・・・
「お・・オイ、ロマーノ、一体どうしたんだ?!」
ふと視線を戻した先の彼が、涙を堪えているのに気付いて俺はぎょっとした。
「・・・な・・・なんでもねぇ・・・!」
「何でもないじゃないだろう・・・!ど・・どうしたんだ?怪我でもしていたのか?何か悪いものでも・・・・」
焦る俺の前で、彼は唇をぎゅっと噛み
「ロマーノ、一体どうしたんだ。言ってくれなきゃわからないだろう」
ポロリと涙をこぼした。
一度あふれた涙は、次から次へとあふれ彼の頬をぬらす。
「う・・・えっ・・・・」
それを見た俺はもうパニック寸前だ。
「ロマーノ・・・!落ち着け!一体なにが・・・誰が・・・ああああ、こういうときのマニュアルは・・・・!」
「う・・・ふぇっ・・・」
「・・・!頼む!泣かないでくれ!」
整えた髪をクシャッと自分で崩した時、ふと “ハグしてほしいであります!” と彼の弟の声が頭の中でよみがえり、反射的に泣いているロマーノを胸に抱き寄せた。
途端、何をやってるんだ!俺は!!!!と、離れようとしたのだが・・・ロマーノがしがみついてくるのをみると、どうやら・・・・抱きしめるという判断は正しかったらしい。(・・・ヴェネチアーノには今度なにか礼をしなければ)

・・・彼はヴェネチアーノよりもわずかに体格がよく、男として平均よりもしっかりとしている。
だが、俺の方が一回り大きく、彼の体はすっぽりと俺の腕の中に収まってしまう。そしてまた、ヴェネチアーノのように顔を擦り付けるようにしてグジグジと泣く様はとても幼く見えて、俺は少し落ち着きを取り戻すことができた。
彼を落ち着かせるように背中を軽く叩いてやりながら「悪かった」と謝れば、胸をどんと叩かれ「何が悪かったかも分からない癖に謝るな!」と怒られ、もう一度謝罪した。
「おま・・・マジ・・・ムカつく・・・・!」
「それは・・・すまなかった」
「俺のことほっときやがって・・・!」
「それは・・・」
といいかけると、ドンっと胸をまた叩かれたのでまた謝罪の言葉を口にした。
「しかし・・・一応、お前のことは視界の隅には入れるようにしていたんだ」
「嘘だ!俺がいなくなったの気付かなかった癖に・・・!」
どうせ弟にいわれて慌てて追いかけたんだろうといわれてウッと詰まる。
「・・・し・・・しかい・・・急にいなくなって焦った。どうして一言もなく出ていったんだ・・・」
「それは・・・お前が・・・・・・・」
後半はゴニョゴニョといっていてよく聞き取れない。
また謝るべきだろうか・・・と考えていると、
「あの女は誰だ・・・」
低くロマーノが言った。
・・・やはり、それか。
俺はため息をつき、考えを整理してから口を開いた。
「あれは・・・フランスから起業家の娘さんだ。父の代理できたらしい。」
「で・・・?」
「いろいろと父に代わって交流をしようと気おってきたらしいのだが・・・雰囲気に飲まれて動けずにいたそうだ。そこで、ふと目に入った俺がとても顔が広そうなのを見て、俺を地位の高い人間だと主ったらしい」
それで・・・つまり俺に仲介を頼んでいたのだ。俺に有力な人を誰か紹介してくれないだろうかと。
いや、直接彼女がそう言ったわけではないが、話の展開として俺はそう理解した。
「嘘だ」
「嘘じゃない」
「じゃぁなんでお前、あんなにニコニコしてたんだよ!いつもムッツリしてるくせに!」
「・・・無茶をいうな・・・。」
ただでさえいかついと言われ、女子供には怖がられるというのに・・・。
「だいたい、女性に対してはにこやかに、優しく・・・はお前のもっとうじゃなかったのか?」
「俺はいいんだよ!だけど、お前はだめだ!」
なんだその身勝手な理屈は・・・。
「お前は、女に笑顔をむけるんじゃねぇ!しゃべりかけてもいけねぇ!話しかけられても無視しろ!あと、おどってもダメだし、夕食とかも論外だからな!あ、もちろん、男もだめだからな!」
「・・・・」
無茶な・・・。
国という立場からそんなことができるワケがない。
「おい!」
だが、それを口にすれば・・・長くこじれそうだ・・・。
「お前はいいのか?」
「そう!俺はいいんだ!だけど、お前はダメだ!」
「お前の面倒だけみてろって?」
「そう・・・・ッ!・・・て・・・あ・・・ちが・・・・て、あの・・・・お・・・お前のアホ兄と、俺のバカ弟の面倒くらいは・・・みさせてやってもいい・・・」
そんな許可はあまり嬉しくないが・・・
「わかった」
素直に受け入れてやる。
「それと・・・」
「まだあるのか?」
「お前は俺専用なんだから、俺から目を離すな!」
「・・・了解した」
「わかったら!これからお前の家に行く!」
最高級のもてなしをするように!と言われ、俺は少しだけ笑った。
彼の申し出は・・・こちらからも望むところだった。
どうやら・・・ようやく機嫌はなおったらしい・・・。
だが、すぐに動くことはしない。
作品名:My lover is selfish 作家名:あみれもん