二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

【リリなの】Nameless Ghost

INDEX|102ページ/147ページ|

次のページ前のページ
 

「えっと、そうだ! レイジングハートの様子を見に行こうよ。メンテナンスもそろそろ終わってるかもしれないよ」

「うん、分かった」

「じゃあ、行こう?」

 なのはは少しホッとした様子でユーノの手を引きレイジングハートが居るメンテナンスルームへと足を向けた。
 ユーノは手を引かれるままになのはの後を追い、フェイトに念話で「なのはとメンテ室に行く」とだけ伝え足を進めた。

(なのはを守るのは僕の役目だ。僕じゃないとダメなんだ。僕が、なのはを守るんだ!)

 ユーノは軽い足取りでなのはの背を追いながら心の内に誓いを立てた。

*****

 デバイスは嘘を吐かず、人を裏切らない。その言葉を聞かされて一体何年経ったのだろうかとマリエル・アテンザは濃いめに入れたコーヒーを口にしながらふとそんなことを思い起こす。

「調子はどうですか? アテンザ主任」

 先ほど扉を開いて入ってきた少女は、そう言いながらマリエルに差し入れのクッキーを差しだしながら件の進捗状況を確認するように、マリエルの前のモニターを横目で伺う。

「あ〜、まあまあかな。ありがとう、アリシアちゃん」

「アリシアかテスタロッサでいいですよ。ちゃん付けで呼ばれるのは背中が痒くなりますから」

 アリシアはそう苦笑しながら隣の席から椅子を拝借し、懐からプレシードを取り出して彼女に渡した。

 マリエルはそれにお礼を言いながら受け取り、早速プレシードのコンディションを確かめるべく演算装置にそれを接続し、モニターを呼び起こした。

「やっぱり、調整は難航していますか」

 アリシアはレイジングハートとバルディッシュのデータシートが示されたモニターを吟味しながら、そこに示された数値が先日見たものから殆ど変化してないことを確認した。

「そうだねぇ。バルディッシュに関してはプレシードのおかげで何とかなりそうなんだけど」

「問題はレイジングハート=トライアル・アーツですか。まあ、なにぶん古い機構を使用していますからね。今の理論が通用しない部分とか、既にマイナーになったものとかも多いですし」

「それなんだよねぇ。最新のものとかは結構頻繁に確認するから手慣れたものなんだけど。ここまで古いと、それこそ一から勉強し直さないとダメって部分が多くなるからどうしても」

 マリエルは額を指で押さえながら、比較的甘みの強いクッキーを頬張りため息を吐いた。やはり、頭を酷使すると脳が糖分を要求するものなのか、上品な味わいのクッキーがことさら舌に快感をもたらす。
 こういった不規則な間食は健康を害するものだとは分かってはいるが、そうでもしないと気力を保つことが出来ない。

 人間とは完成されているように見えて完成されていないものだという事が身をもって分かる瞬間だった。

「ひとまず、レイジングハートに関するメンテは私がした方がいいですか?」

 アリシアはモニター横に置かれた紙のデータを手に取りながら現状の問題をざっと頭に思い浮かべる。

「技術者としては悔しいけど、お願いできる?」

「良いですよ。ちょうど良い気分転換にもなりますから。先ほどの戦闘訓練のデータシートの閲覧に権限は?」

「私が許可するから大丈夫だよ」

「分かりました、主任。では、取りかかります。対面の端末を使用しますね」

 アリシアはそう言うと、そこに置かれていた書類データをまとめ、ついでに先ほどの訓練の評価が書かれているであろう記録ディスクを取り上げ指定された端末に着いた。

《Thanks, Little Alicia》(お手数を掛けます、アリシア嬢)

「いいよ。やっぱり、レイジングハートは私が面倒を見たいからね」

 アリシアはそう言いながらすでに機動状態にあった端末のデバイスメンテナンスツールを起動させ、レイジングハートからの情報を取得させた。

「魔導炉の調子は?」

 情報取得を始めた端末はモニターに経過のインジケータが、その作業の経過を報告するが、それがいっぱいまで溜まるまでしばらくの時間を要しそうだ。
 アリシアはその間の時間稼ぎとして、この部屋のツールでは取得しきれない情報をレイジングハートから直接聞いておくこととした。

《All Green.》(一切問題ありません。現在は待機状態にして出力も最小の500Wにしていますが、不安定性は観測されていません)

 ここにもレイジングハートを整備する問題がある。管理局のツールではサポートしきれない諸々の装置に関しては、何らかの専門ツールを開発するか、直接そのAIに報告させるしか方法はない。故に、通常のデバイスであればメンテ中はその機能がシャットダウンされるのだが、レイジングハートに関してはメンテの作業中も逐一様子をうかがわなくてはならない。
 つまり、レイジングハートと円滑なコミュニケーションが取れないことには内部をのぞき込むことさえ出来ない。

「燃料の残量は?」

 レイジングハートの考えとしては、『信頼の置けない人間に自分の中を弄らせたくない』という見地からそれはかえって有り難いことだというだろうが、安全性信頼性の観点からは承伏できない事柄でもある。

《About Handreds μg was used from now. The Output is never uper than 25% until previous battle and trainning.The average output is about handreds kW since MAGI-Reactor opened》(今までで使用した分で、せいぜい数百μgといったところですね。先の戦闘と訓練においても出力が25%を上回ったことがありませんし。魔導炉の解放以降、平均出力はせいぜい数百kWというところです)

 実際、レイジングハートがアースラやマリエルの整備を受けているのは単にレイジングハートのマスター、なのはの言いつけによるものである。主の命令であれば、デバイスである身としては従うしか無く、実際の所レイジングハートはまだマリエルとそこまでの信頼関係を構築し切れていない事もあり、今回無理を言ってアリシアに来させたという事情もある。

「ということは、燃料はまだ2kg以上残ってるって事かな」

 とにかく他のデバイスに比べ気位の高いデバイスだとアースラの技術班は口をそろえる。故に、レイジングハートを扱ったアースラの技術チームはこれを扱う際には『注文の多い客』のように扱うようにしているのだ。

《Right. Correctly, it is 2.4999986 kg. Competely I will work about two handred year without replenishing. It help me that The anti-proton have liftime the year of 10 33rd power》(はい。正確には2.4999986kg。将来的に使用する魔力量が増えると予測されても、計算上後200年は補給無しで稼働可能です。反陽子の寿命(およそ10の33乗年)が長い事も助けになりますからね)