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【リリなの】Nameless Ghost

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序章 第五話 愚者達の結末



 アースラより強制転移を行ったアリシアは、そこにいた魔導師の誰よりも先行して戦場へと降り立った。
 まるで、床から生えてくるかのように生命体ではない兵士が既にその城門を囲みきっており、冗談ではないが今のアリシアではとうていそれを超えることは出来ないと悟った。

(だからどうした!!)

 無駄な体力を使用できないのなら、ただひたすらに真っ直ぐ最短距離を付き進むまで。アリシアはそう決意し、傀儡兵の群れの一等密度の高い場所へと足を運んでいった。
 走ることさえも出来ない、攻撃されれば回避する暇もなく身体を両断されるだろう。しかし、アリシアの眼には恐怖はみじんも浮かんでいない、そして、アリシアはその兵団を何の障害もなく歩いて抜けることが出来た。

(敵と思われていない? というよりは、ターゲットに設定されていないだけか)

 ある意味それは当然とも言える。この身は間違いがなければ、この城の城主、プレシア・テスタロッサが自らの生涯を掛けて呼び戻そうとしたもの。ならば、その城を守る兵隊が、アリシアを攻撃するなど本末転倒だ。

「所詮は融通の利かない人形兵だ。これなら、あの塊の方がよっぽどましだな。まだ分別があるし、何より見目麗しい」

 もう少し成熟していれば、とアリシアは思うが、すぐに思考を切り替え、この間に自分自身を理解しておく必要があることに気がついた。

「魔術神経は、基部構造は既にできあがっている。殆ど生まれたてでこれなら、以前(ベルディナ)の身体よりよっぽど資質があるな。だが、リンカーコアがあまりに小さい。これは、ミッド式の魔法は諦めるしか無いか。何より、この身体は身体能力が低すぎる。成長に期待するしかないか」

 一長一短。この状況では短所ばかりが目立ちそうだが、将来性はまだ捨てる必要はなさそうだと結論づけると、アリシアは更に神経に魔力を通し、この身体で運用できるギリギリの身体能力を模索しつつ先を急いだ。
 外傷は皆無。飛び散った破片で付いた傷は出血すらしていない。
 ひとまず致命的な損傷さえ被らなければ何とか生きて戻れると結論づけ、アリシアは何とか安堵の息を飲み込んだ。
 アリシアの記憶か、魔術神経が勝手に拾い集めた情報が原因か、アリシアはこの城の構造の細部まで把握しており、既にプレシアが何処に居るのかをも見当が付いていた。
 そして、プレシアはおそらく彼女をモニターしているはずだ。取り戻したこの身を遮ることは無く、むしろ全ての障害を無くしてでもアリシアを自分の所へと誘おうとするだろう。

(交渉か、決別か、殺し合いか。ともかく、会うしかないな)

 背後に群がり、まるで自分を守るかのように密集する傀儡兵を尻目に、先程からその遙か後方ではじけ飛ぶ魔力の鱗片を感じ取りながら、アリシアは走り続けた。

****

「クソ! 何であの子を行かせたんだ!!」

 高性能誘導弾【Stinger Snipe】を駆使し、傀儡兵の一団をなぎ払う黒き魔導師、クロノは乱暴に舌打ちすると自らのデバイス、S2Uを振り上げ更に群がる敵勢力をその最小の労力でなぎ倒していく。
 ジュエルシードの発動が検出され、即座に彼らの投入が決定され今はクロノの背後に白い魔導師なのはと翡翠の結界師ユーノを従え、彼は猛進を続ける。

「止められなかったんだよ。あの子普通じゃないって、こう、「行かせろ、さもないと殺す」みたいな眼で睨むんだよ」

 アリシアの転送要請を殆ど無意識のうちに行ってしまったクロノの補佐官、エイミィ・リミエッタは今にも泣きそうな表情でクロノにわめき散らす。

「エイミィ。戦闘中だ、無駄な会話は慎め」

「何よぉ、クロノ君が聞いてきたんでしょう?」

「無駄口は慎めと言っているんだ! リミエッタ執務官補佐」

「了解、クロノ執務官」

 そんな二人の痴話げんかとも取れる会話を眺めるなのはとユーノは、じゃれ合いつつも効果的に敵を排除するクロノの手腕に感嘆しながらも自分に出来ることを模索する。

「あの、クロノ君、私が砲撃で一掃しようか?」

 おずおずと、遠慮深そうな声を念話に載せてなのはは提案するが、クロノの温存しろの一言でそれを引っ込める。

「さすがに執務官は違うな、威張るだけのことはある」

 クロノとは基本的にウマの合わないユーノだったが、彼の戦闘力を見せつけられてはそう評価せざるを得なかった。

「ねえ、ユーノ君。アリシアちゃんは、本当に中にいるのかな?」

 この規模の戦団を非力な少女が超えていったとはとうてい思えないという感情がなのはの中には渦巻いている。

「十中八九中だと思う。ここの傀儡兵はプレシアを守るためのモノだから、当然アリシアも護衛対象に入っているはずだよ。それも、かなり高い優先順位でね」

「うん、そうだね」

 そして、なのはは少しうつむき、左手に持つ金の錫杖、レイジングハートを握りしめ呟いた。

「フェイトちゃん。大丈夫かな……」

 瞳の光を失い、まるで糸の切れた人形のように崩れ去った少女。なのはが固執し、ようやくその人柄の一端をつかみかけたとたん彼女は動かなくなった。
 本当は、自分はこんな所にいるよりフェイトの側にいた方がよかったのではないか。そんな感情が渦巻き、脚が上手く前に進んでくれない。

《There is only believing now.》(今は信じるしかありません)

「レイジングハート……」

「レイジングハートの言うとおりだよ。なのはは良くやってくれてる、後はフェイト自身が答えを見つけなくちゃいけないんだ。それに、アルフも側にいるはずだ。今はフェイトを信じよう」

「うん、そうだねユーノ君。ありがとう、いつも背中を押してくれて。なんだかね、ユーノ君が居るって思うと、背中が暖かいんだ、だから私は戦える。飛び続けることが出来る」

「嬉しいよ、なのは」

「側にいてね、ユーノ君。私たちなら絶対何とかなるって信じてるから!」

 城門を突破したクロノが二人を手招きし、なのはは桃色の翼を羽ばたかせ大空を疾空する。

「僕も信じてるよなのは!」

 ユーノもその背中に寄り添うように飛び続ける。二人に恐れるものは何もなかった。

*********

 間断なく振動が続き、時折震度の高い爆発音が城内を駆け抜ける。
 時折、足を取られ転びそうになる歩調をゆるめることなくアリシアは疾走を続ける。

(あいつ等には悪いが、傀儡兵がなるべく時間を稼いでくれるといいんだが)

 アリシアには時間が必要だった。アースラを抜ける際に入手した情報によれば、プレシアはすぐにでも次元震を引き起こせる状態にあるらしい。しかし、と考える。はたしてあれは、この身体を置いて一人で自滅するのだろうか?
 答えは否だ。それにあれは自滅する気など最初から持ち合わせていないだろうとも考えられる。
 徐々に整理が付いてきた記憶を参照すると、プレシアは次元震を引き起こすことで失われた都アルハザード向かう予定らしい。
 アルハザード、そんなところで何をしようというのか。アリシアは嘲笑を漏らした。