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【リリなの】Nameless Ghost

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「だったら、人の姿でこの世界にいられた方がいいってことか」

「そうしたいのは山々だけど、無理だから」

「なるほどな」

 クロノから、ユーノはなのはの世界で生きたいと聞いていた。しかし、アリシアはそれを直接ユーノの口から聞かない限り、それを行わないと考えていた。
 そして、今、ユーノは確かにそう答えた。
 人としてなのはの側にいたい。
 ならば、と、アリシアはユーノに脇に抱えていた書類一式を投げ渡した。

「なにこれ?」

 それは、ミッドチルダの共用語で書かれたものではなかった。ユーノにとっては異国の、最近になって身近になった言葉、日本語で書かれた書類一式だった。

「それが、私から。正確には私とリンディ提督、クロノ執務官からのプレゼントだ」

 そして、それを読んだユーノは驚愕に言葉を失った。

「日本生まれ、日本育ちのギリシャ人。両親を失って現在一人で生活し、最近になって海鳴に引っ越してきた。国籍は日本。住所は海鳴市。住民票から何からすべて正式のものだ」

 随分面倒な手続きだったし、リンディとクロノにはでかい借りを作ってしまったとアリシアは愚痴るように呟いた。そして、アリシアは最後の仕上げとして、懐から一枚のカードを取り出しユーノに手渡した。

「そして、これがベルディナからの最後の選別だ。一〇〇万ミッドガルド相当の口座カードになる。これからこの国で生活するためのものだ。十数年間、お前が成人するまでの生活費、教育費、交際費、その他込みと考えてあるから大切に使え」

 それは、日本の主要都市銀行のキャッシュカードだった。ベルディナの選別と言ったのは、かつてベルディナが所有していた個人資産の一部から供出されたものであり、それは文字通りベルディナからユーノへの最後の贈り物であった。

「こ、これって……アリシア!」

「お前は、ずっとそうだった。スクライアに居たとき、お前は常に周りを気にするあまり自分のことを度外視する傾向があった」

「そ、それは……」

「だから、お前があの少女の元にいたいと願ったとき、私は嬉しかったよ。どんな形であれ、お前が初めて自分の我が儘を通そうとしたんだ。それを後押しするのは家族としての義務だ」

「……アリシア……」

「結局ベルディナはお前の父親の代わりにもなれなかった。だから、これが、奴がお前にしてやれる最後の、父親らしい事だ。受け取ってくれるな?」

「ありがとう、アリシア。僕は、僕は、ベルディナのことを本当にお父さんだって思ってた」

「それを聞けば、ベルディナも喜ぶだろう」

「アリシア……」

「幸せになれユーノ。それがベルディナが望んでやまなかったことだ。彼の代わりに私、アリシアがそれを伝えよう」

《Ms.Alicia, you are ……》(アリシア嬢、貴方は……)

「お前も、今のマスターと共に健やかにあれ。お前達の行く末の幸をベルディナは望むだろう」

《I boast that Mr.Belldina was my previous owner and I was in together 40 years with him.》(私は、ベルディナが所有者であったこと、その彼と40年間共にあったことを誇りに思います)

「いきな、二人とも。お前達の幸せが待っている」

「うん、アリシアも元気で」

《See you ……again , Ms.Alicia》(また、お会いしましょう)

「その機会があればな」

 巣立ちを見守るのは親の努め。そうして、アリシアは愛するものの元へと旅立っていく子供達を眺めながら、ベルディナとして残っていた最後の願いが朝の霧と共に消え去っていく事を、じっくりとかみしめていた。

「それにしても、地球とはなかなか良さそうなところだな。次はプライベートで遊びに来たいもんだ」

 澄み切った蒼穹に彼女の朗らかな声が歌となって響き渡った。