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【リリなの】Nameless Ghost

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「そんなことないけど……。ねぇ、レイジングハート。私ってこんなに寂しがりやだったのかなぁ。ユーノ君とたった一ヶ月会えないだけでこんなになっちゃって……。なんだかね、フェイトちゃんと再会できるよりもユーノ君が帰ってくる方が嬉しく感じちゃうんだ。私、薄情者なのかなぁ。ユーノ君とフェイトちゃんは同じ親友なのに」

《It will not say that it is the same. The master should attempt to reconsider relation with Euno once. Probably, when the answer is there, I think.》(同じというわけではないのでしょう。マスターは一度ユーノとの関係を見直してみるべきだ。おそらく、答えはそこにあると私は思います)

「私とユーノ君の関係かぁ。友達で、大親友で、魔法の師匠でパートナーで……」

《When correcting a little, it will be a fact of the the first time boy friend. That the elder brother and the father of the master were doing eyes in the black and white is dear.》(少し訂正しますと、初めての男友達という事ですね。マスターの兄君と父君が目を白黒していたのが懐かしいです)

 レイジングハートはメモリーに残されたその時の様子を軽くロードしていた。
 あの事件が終わった後、ユーノが人間の姿で地球の日本に住むことになったと聞いたとき、なのはは本当に嬉しかった。

『これからはずっと一緒にいられるんだね?』

 というある意味愛の告白のような言葉でユーノに抱きつき、彼女は無意識のうちに涙を流してしまっていた。それほどその喜びは深いものだった。
 しかし、その後、ユーノが高町家を出て一人暮らしをすると知ったなのはは、そこから180度態度を反転させ、ユーノの家出(?)を断固反対したものだった。

 なのはの部屋に結界を張り、朝から晩まで口げんかのような議論を交わし、ようやくユーノがなのはを説得出来たのはユーノの結界がひび割れるほどの砲撃が飛び交った後だったとレイジングハートは記録している。
 なのはもその時のことを思い出し、頭に血が上るあまり実力行使に出てしまった当時の自分を恥ずかしく思った。
 今から考えると自分は随分ユーノに失礼なことをしていたのだなとなのはは思う。
 ユーノはフェレットの姿でなのはの前に現れた。
 当初なのはがユーノをペット扱いしていたのはユーノの説明不足ということで決着がつく。しかし、それから暫くしてユーノが人間だと分かった後でも、なのははやむなくフェレットの姿をしていたユーノをやはりペットとして扱ってしまっていた。
 ユーノは、フェレットの姿はエネルギー効率がいいからかえって楽だと笑っていたが、それを自分に当てはめてみると笑い事ではないということがよく分かる。

 なのはは、いくらエネルギー効率がいいからと言ってフェレットの姿で何日も何週間もペットとして扱われるのなんて無理だとようやく気がつくことが出来た。
 その後なのははユーノに必死に謝っていたが、ユーノは笑って許してくれた。

 兎も角、今のなのははユーノをフェレットだと認識しておらず、ユーノにフェレットの姿になることを請うこともしない。いや、確かにフェレット・ユーノの抱き心地やら撫で心地など、あの金色に近い滑らかな毛並みの感触を思い出すとつい身体の芯がゾクゾクしてしまうが、思い出しさえしなければ我慢することが出来た。

「はぁ……」

 やっぱり勿体なかったかなぁとなのははため息をつき、「会いたいなぁ」と空を見上げた。
 そして、しばらくの後レイジングハートの「訓練を開始しましょう」という言葉に頷き表情を引き締めた。

「それじゃあ、いつものシューティング・コントロールやるね」

《OK , My Master》

 レイジングハートの威勢のいい答えになのはは気分を良くし、先ほど飲み干したココアの空き缶を取り上げ目を閉じた。

「リリカル・マジカル」

 その言葉と共に想像するのは聖なる光、創造するのは意識ある光。それを想像の中で練り上げ形作り、球体として形成したそれを指先へと創造する。

(私の呼び声に答えよ。私の声は言葉に、私の言葉は祈りに、私の祈りは願いに、私の願いは力に。私の力は聖なる光となり、そのすべては私の意志に従う)

 瞑目し意識を深淵へと誘いながら、なのはの足下に桃色の円陣が光となって出現しその願いを刻み込みながら回転する。
 魔法学の第一原則。魔法は力であり、力は願いによって導かれる。願いは祈りによって成就し、祈りは言葉によって形を得る。言葉は声によって発生し、すべての原則は請い願う呼び声にある。

「福音たる輝きこの手に来たれ。導きのもと鳴り響け。」

 その言葉と共に掲げられた彼女の左腕の手の平に福音たる輝き、桃色に輝く光の球体が出現した。

《Monitoring start. Count is Zero》(モニタリング・スタート。カウント・ゼロ)

 レイジングハートの準備も整い、いよいよなのははその呪文を解き放つ。

「ディバイン・シューター、シュート!」

 その言葉と共に放り上げられた空き缶に向かい、なのはの最も得意とする制御弾頭魔法【Divine Shooter(神聖なる射手)】の一撃が放たれた。

「Control start. Self homing set. Mode shilt to ASS(Accelerate Snipe Shooting)」

 なのはのその言葉と共に【Divine Shooter】の弾頭は直線射撃より高加速度精密手動誘導方式にシフトし、彼女が思い描く目標軌道に対して僅かな誤差もなく追従する。
 弾速は速い。そして、それが空中の空き缶を地上に落とすことなく着弾し、そして刹那の時を置いて反転。まるで空き缶を上へ上へと持ち上げていくように弾頭は舞い上がる。

《………Sixty、Sixty One、Sixy Two………》

 それに呼応し、レイジングハートが読み上げる数字も加速度的に向上していく。

「………くっ………」

 目を閉じ、左腕を空を舞う目標に合わせながらなのはは苦悶の吐息をついた。季節は冬。本来なら雪が降り出してもおかしくない寒気の中、なのはの額にはじっとりとした汗が浮かび上がっていた。
 ユーノによって提案されたデバイスを用いない魔法訓練はこれで既に3ヶ月以上続けていることだった。ユーノの言葉を借りるなら、なのはは莫大な魔力量と高性能なデバイスを持つが故にその魔法の術式構成がとても荒いのだというらしい。
 それまでの戦いは殆どがむしゃらに食らいつくように戦ってきたため、そのあたりを矯正する機会が得られなかった。ユーノはなのはの魔法教習の基礎過程の終了の折りに次の段階の鍛錬としてデバイスを用いない魔法訓練を提案した。