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【リリなの】Nameless Ghost

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 ヴィータは一騎打ちを望んでいる、そう感じるユーノはヴィータの表情を伺うが、果たしてそこに浮かんでいたのはユーノが予想した通りのものだった。

「あたしは、そいつと戦うって言ったんだ。関係ねぇ奴は引っ込んでろ!」

「関係なくない! だって、私は、ユーノ君のパートナーだから! それに、私もヴィータちゃんとは関係、あるよ。私はいきなりヴィータちゃんに襲われた。私は、ヴィータちゃんの話が聞きたい。それじゃ駄目?」

 それに、ユーノとヴィータではどう考えても対等ではない。確かにヴィータの鉄槌を防ぐことが出来るのはこの中ではユーノだけだろう事はなのはも予想が出来る。しかし、ユーノはまともな攻撃魔法が使えないのだ。守っているだけではいずれヴィータに軍配が上がるのは歴前。だったら、自分がユーノの火力を受け持たなければならない。
 今まで、そうやってきた。ユーノとしてきた練習も、本来よりそれが前提としてくみ上げられているのだ。

「……いいよ、だったら二人まとめてかかって来なよ。じゃあ、行くよ」

 ヴィータは自身の敵を見定め、グラーフ・アイゼンを振りかぶりカートリッジをロードした。

「アイゼン! ラケーテン・フォーム!」

《Ja! Raketenform》

 グラーフ・アイゼンはヴィータの命令を受け入れ、その姿を変貌させる。
 鋭利に研ぎ澄まされた角錐の尖頭と、後方に備えられた魔導推進器。その威力の恐ろしさを思い出したなのはは足が震えそうになる。

『落ち着いて、なのは』

『ユーノ君?』

 突然響いたユーノの声になのはは思わず念話を送り返す。

『大丈夫。僕が守るから。なのはは落ち着いてヴィータを狙ってくれればいい』

『う、うん。そうだね』

『信じてるからね!』

 その言葉を最後に、ユーノは「はあああ!」と哮りを振りかざし、ただ一直線に空中へと踊り出し、点火されたヴィータの魔導推進器の襲い来る切っ先に手をかざし、

「ラウンド・シールド。チェーン・バインドもおまけだよ!」

 右手にシールドを、左手にバインドを。高速思考と並列処理の粋を見せつける彼に、ヴィータは「流石だな」と呟きながらただ真っ正面から大槌を振りかぶり、シールドに喰らいかかろうとする。

「そうしたいのは山々だけど……」

 しかし、そのインパクトの寸前。ヴィータはスッとグラーフ・アイゼンの尖頭を逸らし、さらに魔導推進器の推力を増幅させユーノのシールドとバインドをすり抜けるようにユーノの脇をかすめ、そのまま地上へと真っ逆さまに爆進した。
 その先にはいったい何があるのか。

「しまった! 避けて、なのは!!」

 ヴィータの目的に気がついたユーノは慌ててそう叫び、一点に目標を見定めたヴィータを追尾するように自身も下方へと飛翔する。

「えっ?」

 状況がつかめないなのは。

《Please urgently avoidance!》(緊急回避を!)

 そんな彼女に出来ることは、ただレイジングハートの警告に従い上空へと緊急回避をする事だけだった。

「!!!」

 なのはは何も考える余裕もなく、ただいつものように飛行魔法をロードしその進路を頭上へと設定するだけだった。

 なのはの足下に展開される飛行安定補助翼【Flier Fin】から進化した【Accele Fin】が二対の翼を羽ばたかせ、なのはは次の瞬間訪れた莫大な加速度に悲鳴を上げてしまった。

「ぐっ、ゲホゲホ……な、なに? 今の……」

《It is as it told that it was careful. It requires a careful control because the fine adjustment hasn't finished. If doing poorness, the speed of sound can not be sped across to that place in the atmosphere by jumping?》(お気を付けくださいと言ったとおりです。微調整がすんでいませんので慎重な制御を要求します。下手をすれば、音速を飛び越えて大気圏の向こうへ突っ切ることになりかねませんよ?)

 一瞬で高度数百メートルまで飛び立ってしまったその速度に驚愕しつつ、なのははここに来て初めて自分はなんて恐ろしいものを持っていたのだろうかと自覚するに至った。

「余裕だな、お前」

 上空で静止してしまったなのはを待たせることなく、自身もカートリッジを消費して上空へとんぼ返りしたヴィータが再度なのはに向かって槌を振るう。

 今度は、避ける暇さえもない。それに、あんな加速を再び味わうのは恐怖しか湧いてこない。
 なのははレイジングハートに防御を命じ、レイジングハートは【Protection】の魔法をロードする。
 瞬間的に展開される桃色の障壁がなのはの前方を覆い尽くし、インパクトしたグラーフ・アイゼンの尖頭を捕らえる。

「な!? か、堅てぇ!」

 推進器から魔力を吹き上げるグラーフ・アイゼンだが、なのはの展開する障壁に傷さえも付けることが出来ない。一撃で勝負を決めるため、ありったけの障壁破壊の魔法を込めておいたのにである。

 驚愕するヴィータだったが、障壁を挟んでたたずむなのはもまた苦痛の表情を浮かべていた。

「きつい……きついよ。レイジングハート。出力が、強すぎるの……」

《Draw aside the magic more. If about 15 % reduced later, there is not a problem!》(もっと魔力を引き絞ってください。後15%ほど軽減されれば問題はありません!)

「無理……だよ……。緻密な魔力制御は、苦手なの……!」

《It puts together setting once more. Escape at onece .》(一度設定を組み直します。一旦離脱してください)

 レイジングハートの要求になのはは応えられそうにもない。今ここでバリア・バーストを発動させ、シールドを爆発させては、自分に降りかかる被害も甚大になってしまうだろう。

「なのはぁ!!」

 ユーノは停滞した二人に対してチェーン・バインドのアンカーを投げつける。
 ユーノの掲げた手の平の先から直線軌道で放たれた鎖状の魔力はかなりの速度を持ってヴィータへと襲いかかる。

「ちい!」

 おそらく、そのチェーンが着弾したところでそれほどのダメージはないだろう。しかし、それが物理攻撃の特性しか持たないと考えるのはあまりにも危険だ。
 着弾後、それらがばらけ自分を束縛するかもしれない。あるいは鎖の檻のように自分の行動を阻害するかもしれない。
 そう考えれば、ヴィータに残された選択肢は離脱することしか存在しなかった。

「なのは、大丈夫?」

 ユーノは即座になのはに駆け寄り、すぐさま彼女を背に回しヴィータと対峙した。

「う、うん。だいじょう、ぶ……」

 大きく肩で息をするなのはにユーノは思わず介抱をしたくなるが、今はそんな余裕はないと断念した。