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【リリなの】Nameless Ghost

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 ギィンという鉄のこすれる不愉快な音が部屋に響き、一瞬背筋が氷るような感覚に面々は息を潜め勝負の決着をその目で確かめた。

 アリシアが振り抜いたナイフの先、ユーノが刺し通したフォークの先、それにはそれぞれ半分に引き裂かれたミートボールが突き刺さっていた。

「えっと……ドロー?」

 その結果に思考が付いていかないフェイトは小首を傾げながら呟くが、チッチッチと舌を鳴らしつつエイミィは指を降り固まる面々の視線を集めた。

「ドローは親の総取りだよ。つまり、私の一人勝ちってことだね」

 誇らしく宣言するエイミィにアリシアとユーノ以外の面々は共に言葉を無くしてしまった。

「なるほど、上澄みをかすめ取るというのはそう言うことだね」

 というアリシアの朗らかな笑みがとても印象的だとクロノはぼんやりと感じていた。

******

 決着の興奮も冷めないままアリシアとユーノは食後の祈りを聖王へと捧げ、なのはにレイジングハートの説明を行った。
 途中、ハラオウンの面々から「ナイフを使うのは違反じゃないか?」という異議申し立てがあったが、そもそもルールなど定めていなかったことを理由にアリシアはエイミィと共にその異議を棄却した。

 レイジングハートの説明を聞いたなのはは端的に言えば驚いていた。

 それもそうだとアリシアは思う。
 何せ、今まで自分が使用していたデバイスが現在のデバイスの源流を生み出した最古のデバイスだと聞かされたのだ。

 そして、驚愕はさらに続く。
 個人装備のアクティブ・レーダーによる高精度索敵機能。イルミネーターによる自動弾頭誘導。今までと違い、魔法弾頭をいちいち自前で誘導しなくても、さらに高性能な誘導装置がレイジングハートに備わり自分はただ狙いを付けて撃つだけになった。
 その方式のヒントになったのが、自分の住む国の兵器だと聞かされてさらに驚愕。

 しかし、最も驚愕したものは新たに限定を解除された人工魔導炉の存在だった。
 最大400MWの出力を持つ魔導炉は確かに瞬間的なエネルギー供給としてはカートリッジに遙かに劣る。しかし、時間割合に対する供給量はカートリッジなど問題にならないほど膨大なものとなるのだ。
 400MWと聞いてピンと来ないなのはだったが、アリシアが「なのはの国で言う中規模の原子炉一発分に匹敵する出力だよ(※参考:美浜原発2号機=500MW)」と言ったところ彼女の表情は引きつった。
 流石に小学生であっても原子力の凄まじさを学校の授業で勉強済みの彼女には効果はてきめんだったようだ。

 さらに、その魔導炉のエネルギー源となっているものが魔導炉内部の対消滅エンジンであるとアリシアが説明したとき、今度はミッドチルダの面々の表情が凍り付くこととなった。

 僅か0.7グラムの対消滅物質でこの国に投下された”小さな少年”の核爆弾(15ktクラス)に相当するエネルギーを持つと聞かされては流石のなのはも思わずレイジングハートを手から落としてしまう程だった。

「うわぁ!」

 と叫ぶ面々に、「ギリギリセーフ!!!」とスライディングでレイジングハートを受け止めるエイミィにアリシアは肩をすくめ。

「いや、ジェットコースターの何倍も安全だと思うよ? 計算上は安全率100を超えてるからね」

 冷や汗を流す面々を笑い飛ばしアリシアはひとまずの説明を終えた。

「まったく、心臓に悪いな! なのは、後でレイジングハートを預けてくれ。念入りに調査する」

 バリケードのつもりだったのか、ソファの裏側から顔を出したクロノはフゥと息を吐き、ソファに腰を下ろしバリアジャケットを解除した。

「一応、管理局の規定には触れないように調整はしてあるから問題は見つからないだろうけどね」

 アリシアもそれに習って床に臥せるユーノやフェイトを踏んづけながらソファに腰を下ろした。

 アリシアが軽いせいか、それほどのダメージを受けなかった二人もおそるおそる面を上げ、どうにもなっていない身体を見つけホッと一息吐いて同じくソファの席に着いた。

 アリシアの言葉に「それでもだ!」と答えながらクロノは再び部屋の照明を落とし、モニターを起動させた。

「さて、話しを戻しましょうか」

 リンディはそう言いながらお茶(フルシュガー)をテーブルに置き居住まいを正した。先ほどの騒ぎでも振る舞いを乱さなかった彼女だが、湯飲みを置く手が僅かに震えていたことから冷静ではいられなかった様子だった。
 アリシアはそれを追求せず、口を噤みモニターに傾注した。

「彼らに関して結論から言おう」

 クロノはそう言って一度深呼吸を付いた。
 彼らに関しては流石のクロノであっても冷静であれない。それでも執務官として、現場を掌握しなければならない立場として冷静を貫いた。

「彼らは人間でも使い魔でもない。闇の書に併せて魔法技術で作り出された疑似人格。本来なら彼らは人間らしい感情も持たないはずなんだ」

 フェイトは隣に座るアリシアの手をキュッと握りしめる。

「疑似人格というと……私みたいな?」

 フェイトの漏らした言葉にクロノとリンディは過剰とも言えるほどの反応を示した。

「フェイトさん、それは違うわ!」

 リンディの言葉にフェイトはビクッと肩を震わせた。

「フェイト、君は生まれが少し特殊なだけで人間と何も変わらない。検査でもそう出ただろう?」

 クロノは静かに憤りを示し、少しばかり厳しい目でフェイトを睨んだ。
 アリシアは、自分が特に何も言わなくてもきっとこの二人が諫めてくれるだろうと思い特に何も言わなかったが、クロノとリンディの厳しい視線が『テメェも何か言いやがれ』と言っているように思えて「仕方がない」と瞑目し、一生懸命腕を伸ばし両手の平でフェイトの両頬を包み込んで自分の方を向かせた。

「ねえ、フェイト。気付いてる? 貴女の言葉はクロノやリンディ提督を侮辱したんだよ? 二人は貴女を一度でも普通じゃない存在として扱ったことがあった? もしもそうだったら言って。私がこの二人を殴るから」

 フェイトは驚き目を見開き、必死になって首を横に振って否定した。

「だったらなのはが? それともユーノかな? アースラの人? プレシア母さんだったらゴメン。母さんにそうさせたのは私だから。謝っても謝りきれないけど、フェイトが望むのなら私はフェイトに殴られてもいい。殺したいと思うのならそうして欲しい」

「ち、違う……そんなんじゃない」

 アリシアの問答無用とも言える物言いにフェイトは涙を浮かべる。なのははそんなフェイトの様子に「やめてあげて」と言いそうになるが、それはリンディの手によって防がれた。

『フェイトさんにとっては重要な事よ。今は、アリシアさんに任せましょう』

 リンディからもたらされた念話を前にすれば、姉妹の間にはいることの出来ないなのはは口を噤むしかなかった。

『なのは。大丈夫だよ、アリシアなら大丈夫』

 ユーノの声。

『アリシアなら何とかなるだろう。悪魔みたいに口も頭も回る奴だからな』