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【リリなの】Nameless Ghost

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 こんな時にでも皮肉が口から出るのはクロノなりの信頼の証なのだろうかとなのはは思う。そう言えば、アースラに逗留していたころはユーノに対しても何かと彼は皮肉っていたなとなのはは思い出しながら事の推移を見守った。

「違うっていうなら、貴女はいったい何者? ねえ、フェイト。貴女は いったい 何者 なの?」

 アリシアの強い口調にフェイトはギュッと瞼を瞑り、スゥと息を吸い込んだ。

「私は、フェイト・テスタロッサ。私はアリシア・テスタロッサの妹で。人間、人間だよ! お姉ちゃん!」

 アリシアはフェイトの宣言ににっこりと笑い、彼女の頬から手を離し、一生懸命背を伸ばして腕を伸ばしフェイトの頭を優しくゆっくりと撫で付けた。

「よく言えたね、フェイト。それが真実だよ」

 結局、他人がどれだけフェイトが人間だと言っても本人がそれを認識しなければ意味がない。だからこそ、アリシアは無理矢理に近い手段を講じてフェイトからその言葉を言わせた。

 これで安心だな、とクロノは頷き、やはりフェイトにはアリシアがいなければ駄目だと思い知った。いくらその関係が歪であっても血の繋がりとはやはりそれだけ重いのだ。
 リンディは半年前の一時期、アリシアを手放して他の権威ある家へ養子にやることも考えていた。しかし、今のこの状況を鑑みてやはりフェイト共々アリシアも守りきろうと決めたことは正しかったと考えていた。

 もしも、今この場にアリシアがいなければ。かつて計じた案をそのまま実行してしまっていたら、フェイトはどうなっていたか。考えたくもない事だった。

「あの、ごめんなさいみんな。変なこと言っちゃって」

 フェイトはまだ鼻をグスグスいわせていたが、その顔に浮かべられた表情からはなんの陰りも感じられない。

「良いのよ、フェイトさん。じゃあ、話を続けましょう。エイミィ」

 リンディは、この件はあっさりと終わらせた方が得策だと判断し、エイミィに事の説明を求めた。

「了解しました。あの騎士達は本来、人間らしい感情を持つことは無いはずなんだよ。少なくとも過去の情報からそれが確認された記録はない。だけど、今回の騎士達はどう考えても人としての感情を持っているね。このあたりはもう少し調べないといけないんだけど……」

 エイミィはモニターを操作しながら、撤退する騎士達の一人が持っていたものを拡大させ、横目でチラッとクロノの表情を伺った。

「問題は、彼らが持つもの。あれは、闇の書と呼ばれる大規模災害級ロストロギアだ」

 クロノは苦々しい表情を隠すことなく立ち上がり、モニターの前に立ちそれを見上げた。
 騎士の一人。妙齢の女性が胸に抱く書物のようなもの。大人の女性であっても一抱えほどの大きさとその表紙には剣を十字架にアレンジしたような紋章が埋め込まれている。

「魔導師、魔法生物の持つリンカーコアの魔力を蒐集することによりページを埋め。それが666ページになれば発動する古代のデバイス。それが発動した際、その場にあるすべてを破壊し尽くすまで止まらない。きわめて危険なロストロギアだ」

 クロノの独白のような説明にアリシアは耳を傾け、

「666ページか。意味深な数字だね」

 と呟いた。

「うん? アリシア、意味深とはどういう事だ?」

 アリシアの声は非常に小さなものだったが、クロノの説明の間隙を縫って撃たれた言葉に、その場の全員がアリシアに視線を向けた。

「別に、たいした事ではないんだけど。666といえば、確か地球ではデビルナンバーっていわれてたよね?」

 アリシアはそういいながら確認のためになのはに目を向けた。

「え? そうなの?」

 しかし、なのははそう言ったこと、特に国民の大半が無神論者であるこの国出身のためか、アリシアにそれを聞かれても答えようがなかった。

「確か、この世界の一神教では6という数字が不吉っていわれてるね。特に666は悪魔の数字っていわれていたと思うよ」

 なのはの代わりにユーノが答え、アリシアは頷きを返した。

『凄いね、ユーノ君』

 自分より地球のことをよく知っているのではないかと思うなのははそっとユーノに念話を送った。

『色々調べたからね。地球にも興味深い事がたくさんあるよ』

 それはスクライアの性(さが)なのか。とにかく何かしらの情報があればそれを収集して自らの血肉としたくなるのは自分の持病みたいなものだとユーノは笑う。

『私も勉強しないとなぁ。本当だったら、ユーノ君に地球のことを色々教えてあげないといけないのに』

 なのははそう伝えながら、よく考えればユーノは自分から地球の事、特にその歴史や文化とまでは行かず、土着のルールやこの国の人々の価値観などを教えるまでもなく、実に自然にとけ込んでいたことを思い出した。
 それが、次元世界を旅する部族の環境適応能力なのかと思い知り、そう言えばいつの間にかユーノとは翻訳魔法を使用せずに会話をしていた事も思い出す。つまり、ユーノは出会った半年足らずでこの国の言語をネイティブ並に理解してしまったということなのだ。

(遺伝子は意地悪だ)

 国語や社会の成績が悪い自分に比べればなんと高性能な頭なのだろうかとなのはは少し自分の至らなさを情け無く思ってしまう。しかも最近では得意分野であるはずの算数や理科などの成績もユーノに僅差で負けがちになってしまっている。実際、ユーノは既にミッドチルダの学問所を卒業しており、スクライアでさらに高度な学を修めているため、本来なら普通の小学生であるなのはでは学問の面では何を持っても太刀打ちできないはずなのだが。
 算術や理学に関してはなのはもそれなりに他者より優れるものを持つということだ。

 閑話休題。

 アリシアはユーノの情報を得て、再び話しを始める。

「地球ではそうなんだね。だけど、ここで少し面白い話しがあるんだ」

 アリシアはピッと人差し指を指し示した。全員の視線が否応なくその指先に集まり、アリシアはわざとそれを回転させ、それに釣られてくるくると面々の首や眼球を回させた。

「宗教的なことになってしまうけど、ベルカ領、聖王教会では6というのは縁起の良い数字とされているんだよ」

 クロノは「なるほど、それは興味深いな」と呟きながらアリシアに先を促した。

「そもそも聖王教会では3という数字が安定の意味合いを持つ神聖な数字とされているんだよね」

 アリシアはそう言いながら、説明のため机の上に指を二本立てた。

「この状態では系は左右に揺すぶられ不安定になる。だけど、もしもここに三本目の概念を持ち込めば……」

 そして、アリシアは指をもう一本追加し、その三本で支えられた手、つまり系は初めて安定することを示した。