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【リリなの】Nameless Ghost

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 何百年もの時を生き続けてきたベルディナにとってその最も重要視するものとは正に「暇つぶしになる面白いこと」なのだ。

「うん、実に面白そうだよ。特に、何百年もかけたとしても至らないかもしれないなんて聞かされちゃあクルものがあるね」

 今の自分が男であれば、股ぐらがいきり立つ思いだとアリシアは思い浮かべる。

「いや、百年もかけてもらえるほどこっちは余裕はないんだ。出来れば年の瀬の感謝祭までに何らかの答えをもらわないと」

 クロノは妙なテンションとなるアリシアを宥める用にそう言うが、アリシアは平然として笑い、

「なに、何千万もある内の一つの概念だけを探し出せばいいんでしょう? それだったら全体の数千万分の一じゃないか。全部調べるのに数千年かかったとしてもその一万分の一だから、ザッと一月もあれば十分さっ!」

 なんだ、そのとんでも論はとクロノは言いたくなるがアリシアの表情を見る限り彼女はまったく冗談で言っているわけではなさそうに思えた。

「まあ、あたしらは何にも言わないけどさ」

 リーゼロッテはそう言ってやれやれと肩を落とす。

「私たちもお父様の命令もあるから協力はするわ。基本的には補助だけ。その他は協力できないし、人を貸すことも出来ない。殆どがアリシア一人の作業になる。こういうのは何だけど、かなり精神的に辛い作業になるわ」

 リーゼアリアはアリシアに目を向け、「本当にそれでもいいのか?」と目で問いかけた。

 「孤独には慣れている」と言いそうになったアリシアはクロノやエイミィ、ここには居ないリンディに配慮してそれは口に出さず、ただ無言で肯いた。

 このことはクロノもリンディも了承済みのことでアリシアもその要請に対して既にYesと答えているからにはリーゼ達が何を言ってもそれが覆ることはないのだ。

「分かった、案内するから着いてきて。クロ助とエイミィはもういいよ」

 クロノとエイミィもこの後仕事が待っている。緊急事態には休日など存在しない。それに、放課後になればなのはとフェイト、ユーノも学校帰りに本局によって調整訓練が予約されているのだ。

 クロノとエイミィは最後にアリシアにエールを送り応接室を後にした。

「心配性なお兄ちゃんとお姉ちゃんだねぇ」

「私には弟か妹みたいに感じられるよ」


*******


 この光景を見上げれば無限という言葉も生まれてくるだろうな、とアリシアはようやく納得した。
 無限書庫。無限などというが誰がそんな大げさな表現をしたのかと笑い飛ばしてやろうと思って立ち入った書庫には、アリシアにして笑い飛ばせないような光景が広がっていた。

「まー、空間が歪んでるから。実際は見た目より何十倍も広いよ。それに、目に見える場所なんて氷山の一角にも満たなくて年々その領域も拡大しているらしい」

「これは、数千年じゃ足りないかもしれないね」

 もしも今の自分がベルディナのように寿命を保たない身体であれば、無限書庫を暇つぶしの材料してしまおうかと考えていたが、これは永遠の寿命を持っていたとしてもたどり着けるかどうか分からないとアリシアは思った。

「とにかくこんな中から検索する訳だけど、当てはあるの?」

「ひとまず古代ベルカ、それにまつわる聖遺物に聖王書記。後は、夜天の魔導書とか熾天の盾とか、翔天の剣とか。ああ、アーギスの鏡の書にグリモア666の書巻もすこし関係がありそうだなぁ。ふーん、ヴィタの福音書、シグナの福音巻、ザフィア書、シャムの黙示録とか。色々だなぁ。これに闇の書との関連が見つかれば万々歳なんだけど、先は長いよ。闇の書そのものの情報も一から洗い出す必要もありそうだね。今までの事件資料に調査書、性質や特徴に至るまで。先は長いよ。一ヶ月で終わるか心配になりそう」

 古代ベルカ、聖遺物関連、書物の姿を取るアーティファクトや、敵の名前から連想されるワードを口にしながらアリシアは懐からバルディッシュ・プレシードを取り出した。
 プレシードは武器としての機能は殆ど使えない状態だが、情報端末としては随分優秀にセッティングされている。ついでに言えば、先日マリエル・アテンザ技術主任の手によって抜本的なオーバーホールが成されていたため全体的に使い勝手は向上しているはずだ。

 アリシアは無重力空間に身体を横たえ、中空にヒラヒラと揺れるスカートをそのままにプレシードに呼びかけその機能を復活させる。
 無限書庫の実体に関しては意外と知らないことが多く、普段着で来てしまったことをアリシアは後悔する。

《Good morning , Highness . May I help you?》(………おはようございます、ハイネス。お役に立てますか?)

「うん、久しぶりとは言わないけどおはよう。よく眠れた?」

《Maybe good》(上々です)

「いい子だ。それじゃあ、いつも通り情報処理と索敵……いや、検索といった方がいいか……頼める?」

《Yes . Plese set up me》(では、私のセットアップを)

「えっと、正規起動(セットアップ)は出来ないんじゃなかった?」

《Improved as possible. It is the consideration of the Atemza chief》(可能のように改良されております。アテンザ主任の配慮です)

 そう言えばと、アリシアは思い出した。プレシードはフェイトのバルディッシュ・アサルトの改良のため、カートリッジシステムのテスト機として利用されていた。
 その際、アテンザ主任は予備で発注したカートリッジシステムのモジュールをプレシードにも組み込むと言っていた。

 どちらにせよ自分はプレシードを正規起動できないのだから搭載しても無駄だろうと高をくくっていたが、どうやら自分はアテンザ主任を甘く見ていた用だとアリシアは思い知った。

「なるほどね、アテンザ主任には感謝しなくちゃいけないな。じゃあ、プレシード、バリアジャケットは構成しないでいいから、セットアップをお願い」

《But Chief.Atemza say that you have to put on the Barrier Jacket when you set up me at first time. Because some new system was incorporated she want to get real data of these system》(ですが、アテンザ主任からは初期起動時には必ずバリアジャケットも構成するよう指示を貰っています。色々と新しいシステムラインや機構を組み込んだので、その実用データが欲しいとのことでしたが)

「それって本当に? フェイトみたいなキワドイ格好は流石に嫌だよ?」

 フェイトには悪いと思うが、アリシアとしてはあの妹にして唯一の不満がそこだった。いくら幼いと言ってもあれは羞恥心というものが不足しすぎているのではないかとアリシアは時々思う。