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【リリなの】Nameless Ghost

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《Coution. The cartridge magazin is empty》(警告。カートリッジマガジンが空となりました)

 空間に浮かび上がるその文字を認識し、アリシアは「またか」と呟いた。

 朝から始めてこれで都合4マガジン目。およそ2時間で9発のカートリッジを消費し尽くすため、アリシアは空の弾倉の交換をするため二時間おきに覚醒を余儀なくされるのだ。

(今何時だろう)

 とアリシアは術式に対して終了のシークェンスを流し込みながらそんなことを考える。先ほど弾倉を交換するために目覚めた時にはミッド標準時間で14時を示していたはずだった。
 あの時から正確に2時間経っているのなら、現在は16時そこそこのはず。
 この空間にいるとそう言った感覚が実に曖昧になる。
 認識できない自分の身体がどの程度の疲労を感じているのかさえも分からない。

(起きたら医務室、というのは勘弁だね)

 アリシアは「ふう」とため息を吐きながら、自身の意識の広がりをゆっくりと収束させ始める。
 この作業で何が最も疲れるかと聞かれれば、アリシアは間違いなくこの覚醒処理だと答えるだろう。意識を広げること。それを持続させることにはそれほど労力を必要としない。自意識とは常に拡大していくものであり、それを自力で広げるためには自意識の枠を取り外してやれば良いだけだ。後は、自己の認識を消したくないという自己防衛本能がそれの過多な拡散を防いでくれる。

 徐々に収束し、自分の形を取り戻していく意識を感じアリシアはようやく戻ってきた人間らしい感覚に安堵の息を吐き出し、未だ鈍い身体感覚を接続し身体をモゾモゾと動かした。

 意識によらず自律する領域にはこの発散は適応されていない。そのため、意識を失った身体は無意識の自律作用により身体機能を保持し続ける。何度か眠り目覚めを繰り返すたびにプレシードにモニターさせていた自身の身体的コンディションは常にグリーンを示していたため、アリシアはそれに関しては全く心配していない。

 ただし、この状態の間に大規模な魔力攻撃を受けた場合、情報収集シークェンスの破壊と共に自分の意識もそれと共に霧散してしまう可能性が高いことも示唆されているためあまり笑えない話しではあるのだ。

(ともかく、この状態をあの子達には見せられないか)

 死んだように眠る自分を見て、過保護なフェイトなら卒倒する程驚くだろうし、冷静なユーノも下手をすれば取り乱してこの術式を解除してしまうかもしれない。

 正直それは仕事の邪魔になる。ただでさえこの無限書庫は長年放置されていたため、そのセキュリティーも酷く甘いのだ。今のうちに、こちらが認めた人物以外の立ち入りを禁止するセキュリティーを構築するべきだなとアリシアは考えた。

「ふう……」

 ようやく身体に馴染んだ感覚にアリシアは一息吐き目を開いた。

「やっぱり、ここは暗いな」

 書物を保管するための適切な環境を作り出すためか、重力のない書庫には赤系統の暗い光の照明しか無く、湿度も極小、温度も体感では随分低く抑えられている。

 本来なら、気圧も下げる必要があるのだが、これだけ広大な空間の空調を制御する機構は流石に設けられないらしく、特に重要な書物以外は半ば野ざらしにされているという状態だった。

 バリアジャケットを着ていれば、寒さに震えることはない。アリシアは再度マリエルに感謝の念を送り、プレシードより空になった弾倉を引き抜き、それと入れ替えに腰のパウチから予備の弾倉を取り出した。

《Highness .take a call now》(ハイネス、通信が入りました)

 弾倉のヘッドを膝で軽く叩きながらアリシアはプレシードの報告に耳を寄せた。

「クロノ?」

《No. Form Little Girl now》(いいえ、お嬢様からです)

 お嬢様、といえばアリシアは頭に浮かぶ人物を何人か想像するが、プレシードの言うお嬢様といえば一人しかいないかと思い立ち、プレシードの通信回線を開いた。

『あ、お姉ちゃん? やっと繋がった』

 空間上にモニターとして投影された【Sound Only】という表示を少し怪訝に思いながら、アリシアはスピーカーから聞こえてくるのが妹のフェイトであると確認する。

「ゴメン、少し立て込んでて繋がらなかったみたいだ。ところで、フェイト。顔が見えないんだけど、何かあった?」

 デバイス間同士の通信なら地球にいてもモニター回線で通信が可能のはずだ。となれば、今フェイトは見られては問題のある場所から通信をしているということなのだろうかとアリシアは思うが、自分でそんなところからは掛けないだろうと思い少し疑問に思った。

『顔? あ、そうか。ゴメンね、説明不足だった。今、携帯電話から掛けてるんだ。本局で使えるかどうか試したくて』

「けいたいでんわ? ああ、地球の通信端末だね」

 そう言えば、友人達に進められて購入したと先日嬉しそうに話していたなとアリシアは思い出した。さしずめ、ようやく携帯電話の改造が終わったついでに通話テストをしたかったのだろう。
 なのはやユーノの持つ電話もそうなのだが、彼女達の携帯電話は少し特殊な改良がしてあり、管理局の通信網にアクセスして異世界間通信が出来る仕様となっているのだ。
 通信費やそのた云々は国際電話と認識されるため、少し割高になってしまうのがネックだと彼女は言っていたが、それも最近はやりの”掛け放題”の定額プランを採用したため問題は解消しているらしい。

 まあ、それはあくまで地球での問題であって、異世界間通信を構築する費用であるとかそのための通信費は実際の所ハラオウン家が負担している状態であるのはなのは達には秘密となっている。
 実質的に個人レベルで払える値段ではないということぐらいはアリシアも推測することが出来るが、まったく、ハラオウン家の資産とはいったいどうなっているのだとたまに疑問に思ってしまう。

『お姉ちゃんは、今忙しい?』

 忙しいか、と聞かれれば忙しいと答えるしかないだろう。なにぶん、アリシアが今受け持っている仕事は非常に緊急性の高いモノであり、本来ならチームを組んで数ヶ月単位で取りかかるべき事をたった一人で受け持っているのだから、時間などいくらあっても足りないのが現状だ。

 だが、休息は必要にかとアリシア思い、ちょうど良いとフェイトに答える。

「少し休憩しようと思ってた所。一緒にお茶でもしようか? なのはとユーノは?」

 確か今日は、三人でデバイスの調整ついでに訓練の予定が入っていたはずだ。デバイスの調整中はユーノは暇だろうが、何かと暇つぶしに彼なら問題はないだろう。

『うん、二人とも一緒。迎えに行った方が良い?』

「あー、こっちから行くよ。本局の食堂? ラウンジの方が眺めは良いけど」

 詳しいことは分からないが、なのはとユーノには無限書庫に立ち入る許可は出されていないだろうとアリシアは思った。フェイト一人だけならもしかしたら大丈夫かもしれないが、無限書庫までの道は何かと入り組んでいるので、フェイだけを来させるのはそこはかとない不安がある。