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【一時間SS】夜空に響く、涼の…

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「その、女装アイドルって呼ぶのはカンベンして…。悲しくなるから。」
「いいじゃない。キミだけなんだよ、女装アイドルなんて。」
「うぅ…、本当は男性アイドルになりたかったんだけど…。」
「あっはっはっは、キミにはムリだよ、女の子の格好のほうが似合ってる。」
「がーん…。言われ慣れていることとはいえ、同年代の女の子に言われると傷つくなぁ。」
「でも、悪いことばかりでもないだろ? 女性アイドルをやっていれば、カワイイ女性アイドルにも近づきやすいし。」
「それは…。そうなんだけど…。男の子として見てもらえないわけだから余計につらいこともあって…。」
「男の子として見られたい、かぁ…。不思議だね、立派なオトコノコなのに。」
「いや、響ちゃんが凄いんだと思うよ…。今まで、一度も男の子だとバレたことないし。」
「へぇ〜。そうなんだ。意外なもんだなぁ。」
 響ちゃんは改めてまじまじと僕の顔をのぞき込む。そして、こんなことを言い出した。
「じゃあさ、キミ、女の子のアイドルに囲まれて、コーフンとかしないの?」
「し、し、しないよ! しないったら!」
 必死に否定してみたけど、僕の頭の中には今までに体験したキワドいシーンが走馬灯のように流れていた。愛ちゃんの無防備な胸の谷間、絵理ちゃんと同じ部屋で着替えをした時のこと、……。
「と言いながら、いろいろ思い返してるんだろ? あっはっはっは。」
 響ちゃんは豪快に笑い飛ばす。
「まぁ、でもキミがちゃんと自制心を持って女装アイドルを頑張ってるってことはわかったよ。だって、こんな夜の暗い公園でこんな可愛い女性アイドルがこんな近くにいるのに、なんにもしてこないんだから。」
「えっ、あっ、」
 僕はそう言うと顔が紅潮してきてしまった。そう、確かに響ちゃんは可愛い。ちょっと押しが強くて振り回されてるけど、ふと気がつくと、それも楽しく思えてきちゃう。こんなに気ままに振る舞っているのに、相手に嫌な気は全然させない。この子は、凄い魅力を持ってるんだなぁ。
「あっはっはっはっ、キミはオトコノコなのにほんと可愛いな! いつか対戦する時が楽しみだよ。」
「うん、僕も。そのときは、ぜひお互い頑張ろうね。」
「約束だぞっ。」

 響ちゃんは、僕がトイレで男装に着替えるのを待っていてくれた。
 そして、明るいところまで、響ちゃんを送っていくことにした。