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カイトとマスターの日常小話

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今日は、クリスマス・イブです。







 今日はクリスマス・イブです。

 マスターは午前中にお仕事を。午後からは台所を占拠して、何やら作っています。…ううっ、暇です。さびしいです。かまってください。

「マスター、手伝います」

我慢できなくなって、声をかけるとマスターが僕を振り返った。その手には昨日、マスターがお肉屋さんで奮発して買ってきた高級黒毛和牛のももの塊。
「おう。んじゃ、手伝ってくれ」
「はーい」
僕もエプロンを着けてマスターの隣に並ぶ。僕のマスターは料理が得意だ。僕が作れる料理のレシピはマスターから教わったものが多い。
「カイトはサラダに入れるのじゃがいもを洗って、一口大に切って、耐熱容器に入れてレンジで…そうだな、3分くらい加熱な」
「了解」
泥を落とした大きめのメークインをふたつ。ビーラーで皮を剥いて、包丁で一口大の大きさに切る。それを耐熱容器に入れ、ゆるくラップで包んで、レンジに入れる。…そして、三分、ほくほくになったじゃがいもを取り出す。電子レンジって凄い。
 僕の隣でマスターは牛肉に粗塩と粗挽き胡椒、おろしにんにくで牛肉にしっかりと下味をつけると、それをぐるぐるとタコ糸で縛っていく。
「よし。こんなもんだろ」
それをラップで包むと、僕を振り返った。
「肉は暫く寝かせないと味が馴染まないからな。サラダの方を先にやるか。カイト、ツナ缶開けて、油切って。…と、その前にゆで卵作らないとだな」
マスターは小鍋を取り出し、それに卵を三つ入れて火に掛けた。
「ポテトサラダですか?」
「いや、ニース風サラダ…?…でも、アンチョビも黒オリーブもないからな。あるものニース風サラダ?」
「…何ですか、ソレ…」
「美味しければそれでいいだろ」
マスターは小さなボールにサラダに絡めるらしいソースを作り始める。僕はじゃがいもをボールに移して、ツナをその上に空ける。そうこうしてるうちにキッチンタイマーが鳴った。
「カイト、火止めてくれ」
「はーい」
それを流しに冷水に晒しながら、暫し、待つ。
「火傷すんなよ」
「解ってますよ。すぐ、子ども扱いする」
僕が頬を膨らませるとマスターは苦笑し、冷蔵庫からベビーリーフ、玉ねぎ、にんじんを取り出した。
「卵の殻が剥けたら、櫛形に切って除けといてくれ」
「はーい」
マスターはベビーリーフを適当な大きさに千切って、ボールのツナとじゃがいも、ソースと軽く和えていく。そして、玉ねぎとにんじんは薄くスライスしてボールに移す。
「サラダはこれで完成だな」
マスターはラップを掛けると冷蔵庫にしまった。そして、バターを取り出し、フライパンを火に掛ける。そして、寝かせていた肉を焼き始めた。
「…マスターって、料理、上手ですよね」
「そーか?お前の方が上手いと思うけど。…まあ、年端も行かない妹に料理やらせる訳にもいかなくて、仕方なくだったけどな」
マスターの両親は早くに亡くなり、マスターはバイトと学業、そして、年の離れた妹さんの面倒を見るのに昔は明け暮れていたらしい。遠い目をした。
「でも、料理好きですよね」
「好きだけど。…片づけが面倒だよな」
マスターは溜息を吐いた。
「…おお、いい匂い」
程よく焼き色の付いたそれを取り出し、フライパンを洗うと、今度はスライスした玉ねぎとにんじんを炒め、そこにまた肉を戻す。
「カイト、白ワイン、棚にあるだろ。栓空けて」
「はい」
既に開封済みのコルクを抜いて、手渡すとマスターは白ワインを牛肉に振り掛ける。それに一瞬、青い火が燃え上がって、僕は身を竦めた。
「…十分蒸して…っと」
それに蓋をして、弱火にしてマスターはタイマーをセットし、時計に目をやった。
「お前、そろそろコンビニにケーキ取りに行って来いよ」
「はッ、そうでした!アイスケーキ!!」
すっかり忘れてた。僕としたことが。今日は十二種のフレーバーを一度に楽しめる日じゃないか!
「行ってきます!!」
「おう。転ぶなよ」
マスターから預かった財布を手に、コートとマフラーを身に着け、僕は冬風吹く外に出た。寒さなんて気にならない。僕のアイスにかける情熱は寒いくらいでは冷めないのだ。

 アイスが僕を待っている!!






「…よし。出掛けたか。…多分、暫くは帰って来ないな」

カイトを見送り、俺は小さく溜息を吐く。どうやって、家から追い出そうかと思ってたが、丁度良かった。…さて、そろそろ、注文したブツが来る頃だ。…そう思っていると、チャイムが鳴った。
「宅急便でーす!」
「はーい。今、開けます」
タイムリーにやって来た宅配業者のお兄さんから荷物を受け取り、カイトに見つかる前にと自分の部屋に片付ける。
「…柄じゃねぇな」
サンタクロースを卒業したのは妹が嫁に行った二年前。…まさか、それをまたやるのは後数年先だろうと思っていた。
「…俺も対外、馬鹿だな。親馬鹿?…いや、マスター馬鹿?」
どれも同じ馬鹿か…。クリスマスカラーの包装紙に包まれたそれを見やり、苦笑する。翌日のカイトの驚く顔が楽しみだ。





 …さて、料理の続きをするか。後は、スープだな。





 食卓にはローストビーフ、(あるもの)ニース風サラダ、ベーコンとキャベツのコンソメスープ、薄く切ったフランスパンが並ぶ。テーブルの上のキャンドルの灯りがとてもきれいだ。
「いただきます」
「いただきます」
手を合わせて、食卓につく。マスターはグラスにワインを注ぐ。
「マスター」
「ん、何だよ?」
ワインを口に運ぶマスターに僕は口を開く。
「僕もそっちが飲んでみたいです」
その一言にマスターの表情が凍った。
「お前はお子様シャンメリーで我慢しとけ」
「えー、マスターばっかりズルいです!!」
「ずるくない。絶対に飲ませない!!」
マスターはそう言うと僕からボトルもグラスも届かないところに遠ざけてしまった。
「…むう」
…マスターのその態度、何かある…。…それって、一度、僕がお酒を口にしたあのときのことと関係あるのかな?…でも、全然、覚えてないんだよね。マスターに訊いても、
「知らないままのほうがいいこともある」
とか言って、頑なに教えてくれないし。自分のメモリー内のデータを探してもその部分の記憶だけ飛んでしまって見当たらない。うーん、一体、何をしたの…お酒を飲んだ僕は?…そう思いながら、僕はケーキのおまけにもらったシャンメリーを仕方なくグラスに注いだ。…うーん、こっちの方がマスターの飲んでるワインよりも甘くて美味しいかも。…酸っぱい葡萄じゃないけど、そう思うことにした。



 マスターが作った料理の全て皿が空になり、ワインのボトルが半分空く頃にはマスターはすっかりほろ酔い気分でご機嫌になっていた。僕は空になった皿を片付け終えるとお待ちかねのアイスケーキを、マスターの為にアイスじゃない方のケーキを取り出す。
「マスター、ケーキ、チーズと生クリーム、どっち食べるんですか?」
「生クリーム」
「はーい」
それを切り分けて、残りは箱に、冷蔵庫へとしまう。そして、コーヒーを入れて、マスターの前に置いた。
「ありがとう」
「どういたしまして。…では、いただきまーす」
早速、アイスケーキをひとくち。
「…おいしー…」