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初恋をつらぬくということ

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「あちーよな」
隣を歩いている者が銀時の気持ちを代弁するように言った。
銀時と同い年にして悪友の吉田英太である。
英太は体格が良くて武芸を得意としているが、頭も良い。それも、とびきり良い。松陽の塾で四天王と呼ばれている者のひとりだ。
しかし。
「あー、日陰、日陰」
土手の樹がその下に作り出した影へと走っていく姿に、四天王などという尊称はしっくりとはこない。
悪ガキが少し大きくなっただけに見える。
銀時はそのあとについていく。
木陰に足を踏み入れた。
英太はすでに腰をおろしている。
「なー、銀時」
呼びかけてきた。
「なんだ」
「今、太陽があの位置にあるだろ?」
英太は空を指す。
それから、今度は影を作っている樹を指した。
「それで樹の高さがこれで」
次に影を指す。
「その影の長さがこれってことはだな」
「算術っぽい話だったら、俺ァ、興味がぜんぜんねーぞ」
銀時は英太の話をさえぎり、土手にあぐらをかいた。
やはり日陰は日向よりは涼しいが、これまで身体を動かしていたのを止めたことで、汗がいっそうふきだしてくるのを感じる。
英太はむっとした表情になった。
「なんでだ、おもしろいのに」
「おもしろいかどーかは、ひとそれぞれだろ。つーか、俺がオメーの頭についていけるかよ」
「いやいや、おまえはやればできるのにやってないだけだ」
英太は銀時の肩をつかんでくる。
「仮にそーだとしても、やる気はねーよ」
銀時は英太の手を軽く振り落とした。
すると。
「……だれも俺の話を聞いてくれねー」
英太はがっくりと肩をおとした。
いじけている。
その姿を、銀時あきれた眼差しで見る。
英太は算術に強い興味を持っているらしく、その話をしたがるのだが、話しているうちにどんどん高度になり、だれもついていけなくなるのだ。
そのため、最近では、英太が算術の話をし始めると、皆、逃げるようになった。
だが、英太とともに四天王と呼ばれている三人なら、実は英太の話についていけるのかもしれない。
銀時の頭に、高杉晋助、久坂義人、入江左一の姿が浮かんだ。
高杉と久坂は四天王の中でも特に優秀なので、双璧、と呼ばれている。
双璧のふたりなら、しっかり耳を傾ければ、英太の高度すぎる話にもついていけるのではないか。
もっとも、あのふたりにはその気はないだろうが。
作品名:初恋をつらぬくということ 作家名:hujio